日本のクルマは「トヨタ一強」と言われはじめて久しい。月間の販売台数上位をトヨタ車が独占することも珍しくない。しかし、なぜここまでトヨタ一強なのだろうか。他のメーカーが付け入るスキは本当にどこにもないのだろうか?
※本稿は2026年6月のものです
文:井元康一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2026年7月26日号
「トヨタ一強」の秘密
日本の乗用車マーケットでこのところ加速度的に高まっている“トヨタ一強”ぶり。2026年5月は普通乗用車の販売台数10傑のうち9台をトヨタ車が占有。ライバルメーカーにとってはもはや付け入る隙を見出すのも難しい状況だ。
なぜトヨタがこれほどまでに強いのか。最大のバックボーンはズバリ、「バリューフォーマネー」。つまりトヨタ車を買うことが金銭的に有利だというユーザーの認識を獲得するのに成功したことだ。
トヨタのラインナップを見ると「ランドクルーザー」、「アルファード」など、売却価格が異常に高い人気モデルがある。
自動車メーカーは、人気を獲得したモデルの増産に注力して利益を拡大しようとするのが常だが、トヨタはそれをブランド全体の価値を上げることに利用した。
ユーザーの注文を全力でさばくのではなく、供給をあえて絞ってユーザーにとっての価値を維持・拡大し、トヨタ車は売却価格が高いから結局トクをするというイメージを作った。
単に供給を絞るだけなら他社にユーザーを取られてしまうのだが、トヨタにはハイブリッドをはじめとする技術力や品質の高さなど、ユーザーを信用させ、ブランドに引きつけておくだけの力があった。
トヨタ車が金銭的にトクというイメージは、今や一部車種だけでなく、ラインナップ全体に拡大している。
トヨタの壁が如実に表れているのは、売却時の残存価値の高さによって月々の支払い額に大差が生じる“残クレ”販売。
経済メリットが可視化されるこの販売方法では当然トヨタが他を圧倒し、「トヨタ=バリューフォーマネー」の神話をより強固なものにしている。
他メーカーが圧倒的なトヨタの壁を乗り越えるには大きな困難が伴う。今や大多数のユーザーは、俗にいうクルマのテイストには関心がないし、機能や性能の本当のところを知ったり比べたりもしない。少々いいクルマを作ったところで、金銭メリットの前には敗れ去るのがオチだ。
だが、勝ち目が完全に消えたわけではない。消費者の興味関心、流行は常に移ろうもの。ユーザーの価値観を変えるような商品を出せれば、それが蟻の一穴となって反転攻勢をかけることも可能となるだろう。果たしてそれをやりおおせるメーカーが出てくるか。
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