これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、スモールモデルでありながら上質さとデザインの自由度を追求した、スバルR2を取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/スバル
■デザインとパッケージングで新しいミニカーのカタチを提案
2003年12月、「アールツー」というシンプルで響きのいい記号的な名称を冠した軽自動車がスバルから発売された。
「R2」は、小さいながらも個性的で美しいデザイン、合理的なパッケージング、優れた燃費性能と衝突安全性能、使いやすくキビキビとした走りを特徴としていることに加え、1969年に発売された名車「R-2」の名前を再び採用したことで、脈々と受け継がれているスバルのモノづくりへの想いを込めたモデルとして注目を集めた。
当時の軽自動車は、現在のようにファミリーユースに適したスーパーハイト系がまだ主流になっておらず、車両価格が安く、維持費が抑えられることが主な購入動機とされ、小さくて取りまわしがよくて経済的な、日常のアシとして重宝されていた。
R2もエントリーモデルの価格を86万円(デビュー当時)に設定し、軽自動車らしい経済性をアピールしつつ、既存の軽自動車とは違う作りが随所になされたことで「新しいミニカーのカタチ」を提案していた。
見どころは多岐にわたるが、やはり個性的な内外装デザインはR2の特徴をクローズアップするうえではずせない。デザインを手掛けたのはかつてアルファロメオに在籍していた経歴を持つアンドレアス・ザパティナスである。
イタリア人デザイナーの美的感覚、さらに「広さの追求」から解き放たれたデザインは、軽自動車クラスのトレンドにとらわれないもので、箱型のフォルムによってスペース効率を追求したスズキ・ワゴンRやダイハツ・ムーヴといったハイトワゴンとは明らかに異なっていた。
ボディサイズは軽自動車規格の範疇だが、シンプルなワンモーションフォルムを基本に、張りのあるボディサイドやグッと張り出したフェンダーを盛り込むことでメリハリのあるスタイルとしている。フロントにはスバル車の象徴である「六連星」のエンブレムをあしらったスプレッドウィンググリルを装着。航空機メーカーを起源とするスバルらしさを表現している。
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