クルマに乗っていればやってくる、車検のたびに受ける「24カ月点検」は皆さんご存じだろう。しかし、意外に知れていないのが、次の車検までにある「法定1年点検(12カ月点検)」だ。
助手席側の窓枠上に、数字の入った丸いステッカーが貼ってある。それが、法定点検の点検時期を示したものだ。
法定点検とは「法令で定められた点検」のことで、ラジオなどでも、「12カ月点検を受けないのは違反です」と注意喚起をしている。それでも、受けたことがないという人や、クルマに乗ってはいるがそのような点検が必要だと知らない人もいる。
では、「受けないと車検が取れない」や、「罰金を科せられる」ことはあるのだろうか? また、受けないことで何か問題が発生するのだろうか?
お金もかかるし、受けなくていいじゃない? という人から制度自体を知らない人にまで、なぜ受けたほうがいいのかという理由を知ってもらいたい。
文/鈴木伸一
写真/Adobe Stock、編集部
■必要な点検だけど、罰則はなし
クルマを構成しているパーツの総数は、自動車メーカーや車種によって差はあるものの2~3万個にも及ぶ。
これら各パーツ、使用期間や使用形態に応じて「劣化」が進み、徐々に性能が低下。放置しておくと突然の故障、燃費の悪化を招き、クルマの寿命さえも縮める結果となる。さらに、不慮の事故、状況によっては他人をも傷つけてしまう危険すらある。
汚れを取り除く働きをする「エアクリーナー」のように詰まりが発生するのが宿命だったり、「ブレーキパッド」のように摩耗することを前提として機能するパーツもあるからだ。このため、定期的に点検(定期点検)し、必要に応じて交換する必要がある。
とはいえ、必要な点検・整備を行うか否かの「主導権」は、あくまでユーザー(使用者)が握っている。それゆえ、ユーザーには「適正な管理」と「安全の確保」。つまり、適正で安全な状態で使用することが求められており、「道路運送車両法」によって「定期点検」を行うよう「義務付け」られているのだ。
この「定期点検」、一般ユーザーが保有する乗用車に関してはユーザー自身が目視等によってチェックする「日常点検」と、法律で定められている「法定点検」のふたつがある。
一般に「12カ月点検」と呼ばれているのは、後者の車検と車検との間に行う「法定1年点検」のことで、ほかに2回目以降の車検と同時期に行う「法定2年点検(24ケ月点検)」が定められている。
とはいえ、通常、車検と同時に行う「24カ月点検」を除いて、実施しなかった場合の罰則規定はなく、車検の合否にも影響しない。
しかも、メインテナンスフリー化が進み、耐久性が格段に向上している平成2年以降のクルマは滅多なことでは故障せず、乗りっぱなしでも車検まで普通に走り切れてしまう。
つまり、法的なペナルティはなく、走れなくなるほどの不具合も起きないわけで、「12カ月点検」を怠りがちだ。
だからといって、「12カ月点検」は不要とというわけではない。「車検」は検査時に保安基準を満たしているかどうかを確認するもので、それ以降の安全を保証するものではない。
また、国が定める「認証工場」や「指定工場」において実施された「点検・整備」の項目に該当する箇所の不具合や故障が起きた場合、ユーザーの重大な過失を除き、一定期間、保証を受けることができるが、「24カ月点検」を受けたからといって、次の車検までの2年間を保証はしてはくれないからだ。
このため、車検と車検との間に行う「12カ月点検」は、使用課程におけるブレーキパッドなどの減り具合や経年劣化、走行距離によって本来の性能が発揮できるか否といった個々のクルマの状態を客観的に判断することができる唯一のチャンスとなる。
さらに、整備工場に点検を依頼したなら、万が一にも整備不良などに起因する事故が起こったとしても、ドライバーの法的責任が軽くなる可能性がある。
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