900台が覆面パトカー! まさかのスズキ製サルーン「キザシ」の素性がぶっ飛んでる!

900台が覆面パトカー! まさかのスズキ製サルーン「キザシ」の素性がぶっ飛んでる!

 スズキのレア車といわれれば「キザシ」を外すわけにはいかない。スズキ車としては前代未聞のDセグセダンだが、6年半の販売期間で3300台あまりが売れ、そのうちなんと900台が覆面パトカーだというのだ! この珍車の生い立ちを追った!

文:山本シンヤ/写真:スズキ、ベストカーWeb編集部

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■輸入車よりも見かけるのが困難?

2009年に登場したスズキ・キザシ
2009年に登場したスズキ・キザシ

 2024年7月17日に、スズキは「10年先を見据えた技術戦略」を発表した。その内容は企業理念である「小・少・軽・短・美」をより加速させるモノであった。

 ちなみに多くの人が持つスズキのイメージは「軽自動車やコンパクトカーなど軽くて小さなクルマづくりが得意なメーカー」だと思うが、過去にそこからの脱却を模索していた時期もあった事をご存じだろうか。

 それを最も象徴するモデルが、2009年に登場した「キザシ」である。

 スズキ初のDセグメント・セダンでまさにフラッグシップと呼べるモデルだったが、デビュー直後からレア車扱いで「輸入車よりも見かけるのは困難」と言われたほど。2013年に警察の捜査車両として導入され以降は、「キザシを見たら警察車両」と言われるほどだった。

 世の中的には“黒歴史”のように思われがちだが、実は開発陣のこのクルマにかけた想いは並大抵のモノではなかった。そこで今回はキザシが生まれた経緯やコンセプトのついて振り返ってみたいと思う。

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■経営陣の猛反対を押し切って製品化

止まっているとあたりが「捜査感」に包まれるw
止まっているとあたりが「捜査感」に包まれるw

 スズキは2004年に2代目スイフト(世界戦略車第1号)、2007年にSX4(フィアットとの共同開発モデルでWRC参戦マシンのベースにもなった)、そして2008年にスプラッシュ(オペル向けにも供給)を発売。どのモデルも直球勝負のクルマづくりが高く評価され、短期間で欧州市場での知名度を上げた。

 次なる目標は「上級セグメントへの参入」だった。

 といっても、スズキにとっては未知の領域のため、2007年のフランクフルトショーで「コンセプト・キザシ(ワゴン:2Lディーゼルターボ+6MT、4WD)」、2008年の東京モーターショーで「コンセプト・キザシ2(クロスオーバーSUV:V6-3.6 L+6速AT、4WD)」、そして2008年ニューヨークショーで「コンセプト・キザシ3(セダン:V6-3.6L+6速AT、4WD)」を発表。ショーでの反響をリサーチしながら入念に企画・開発が進められた。

 しかし、世界を襲ったリーマンショックの影響で開発凍結の危機に……。経営陣からも「止めなさい!!」という厳しい声も出たが、開発陣は猛烈に反対。その理由は2007年12月に亡くなった小野浩孝専務(当時)の意志を受け継ぐためだった。

 小野氏は“攻め”の欧州戦略でスズキのイメージを大きく変えた張本人であり、当時は次期社長候補とも言われていたほど。キザシは2代目スイフトから始まった一連の欧州でガチンコ勝負ができるモデルの集大成であり、小野氏の “肝いり”のプロジェクトだったそうだ。

■PR用という名目でニュルブルクリンクへ

スズキとしては異例のニュルブルクリンクでの開発も行われた
スズキとしては異例のニュルブルクリンクでの開発も行われた

 そんな開発陣の熱意・想いに最後に経営陣も折れ、「セダンボディでエンジンは2.4Lガソリンのみ」とバリエーションを絞って開発を続行、発売までこぎつけたそうだ。発表・発売は2009年の東京モーターショーのプレスデーで、事前告知ゼロのまさに“サプライズ”デビューだった。

 プラットフォームはキザシのために新規で開発、フロント:ストラット、リア:マルチリンクのサスペンションも同様だった。企画時はFRも検討されたそうだが、開発陣はスイフト/SX4などの開発による知見やノウハウを活かせると判断し、FF横置きに落ち着いたという(4WDの設定もあり)。

 パワートレインはエスクード(3代目)にも採用された直列4気筒2.4L(J24B)だが、実は共通なのはエンジン型式だけで中身はほぼ新設計(188ps/23.5kgm)。トランスミッションはCVTのみ(海外向けには6速MTも用意)だが、駆動方式はFFと電子制御4WD(i-AWD)が選択可能だった。

 当時のメディア向け資料を見るとニュルブルクリンク北コースでのテストシーンも掲載されているが、ここにもスズキらしい面白いエピソードが残っている。

 当時、スズキではニュルでの開発テストがなかなか認められず、そこで開発陣は「PR用の撮影目的」と説得し渡欧。ただし、肝心な撮影はあっという間に終わらせ、残りの時間をすべてテスト用に使ったそうだ(笑)。

 あるエンジニアは「評価ドライバーの声を元にチューニングを煮詰めました。ニュルでのテストは開発の中でも大きな手ごたえがあった」と語っている。

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