埼玉県三郷市のケンツスポーツがスズキRG500ガンマのフルカスタム車を製作。同店では4台目となる500ガンマのカスタムマシンで、ワークスGP500レーサー用の“本物”外装を骨格の異なる市販車に
装着しつつ、違和感を全く感じさせないフォルムと仕上がりを見せる。オーナーのガンマへの想いとケンツのカスタムセンスが結実した一台だ。
市販車に“ワークスのホンモノ雰囲気”を纏わせるセンス
このRG500ガンマカスタムに装着される外装は、1988年のスズキGP500マシン・RGV-γ(XR74)用の、なんと本物だ。長らくスズキ車でレース活動を続けてきたケンツスポーツ代表・川島賢三郎さんの秘蔵パーツである。
ケンツではこれまでにもハーベーカラーやペプシカラーなど、1980年代のスズキワークスGPマシンをレプリカした500ガンマのカスタムを手がけており、今作はその4台目。スタイルはV4エンジンのXR74を忠実に再現しながら、カラーリングに
は1983年の日本GPで水谷勝選手が駆ったスクエア4エンジンのGP500マシン・RGγ(XR45)を落とし込むという、なんともマニアックなコラボが特徴だ。
そのポイントがケンツ秘蔵のXR74外装なのは言うまでもないが、市販車であるRG500ガンマはフレーム形状がGPマシンとは似ても似つかないため、ただ外装を付けただけではXR74らしい雰囲気は再現できない。テールカウルなどは、ほんの僅かな角度違いでも80年代のレーサーらしさが失われてしまうのだという。“本物感”を醸し出すには、それこそ数mm単位の位置調整が必要とのこと。
そんな意識でもう一度、このマシンを眺めて欲しい。スズキGPマシンのマニアならニヤニヤ不可避は当然だが、そうでない目でも一切の
破綻なくまとめられた、ひたすらカッコいいGP500レプリカだと映るハズ。
異なる機種の外装をフィッティングさせ、狙いどおりの雰囲気を余さず再現する。そのバランス感覚や、使用パーツへの徹底した時代考証こそ当マシン最大のアピールポイントであり、それこそがケンツのノウハウなのだと川島さんは力説する。

右側に取り回された2本のフロントバンク用チャンバーや、それを避ける湾曲型スイングアームなど見どころ満載の右サイド。その雰囲気はまさにワークスGPマシンだが、ディメンションもフレーム形状も全く異なる、市販ガンマでこの雰囲気を醸し出せるのがケンツの真骨頂だ。

全体像はV4エンジンのRGV-γを再現しつつ、カラーリングはスクエア4のRG-γ。まさに“オーナーのための1台”を地で行くカスタムだ。V4車モチーフながらカウルの車名が「RG γ」なのはそんな理由から。外装やホイールのホワイトがわずかに青みを帯びるのは、実車を検証した上でのフィードバック。
ストリップで眺めたくなるカスタムバイク
フレームとエンジン以外、ほぼ全てが変更されている当マシンだが、パーツとしての見どころは外装の下に隠されたモノコックタイプのシートレールだろう。これもXR74をイメージしたもので「カウルを脱がせたストリップ状態で眺めていたい…」という、オーナーのこだわりにケンツが応えたものだ。
見てのとおり、燃料タンクのステーともどもアルミの板材を1枚ずつ成形し、溶接で組み立てられた、手間もコストもたっぷり掛けられたワンオフパーツで、その仕上がりもお見事。本機のキャラクターを象徴する部分だ
。ここにはやはりワンオフのアルミ製オイルタンクや、ストリートマシンらしくETC車載器も収められている。

ノーマルのシートレールはメインフレームに溶接されるが、それをカットし、タンク後端部を支持する前半部、そこにボルトオンされ、オイルタンクやリヤの保安部品を支える後半部の2ピースでシートレールを再構築。プレス成形されたアルミ板材の有機的な曲線や、上面に開けられた軽め穴など、ワンオフ感が漂いまくり!
対してエンジン左右
にキャブレターを2つずつ配置する、メカメカしさの極地と言えるロータリーディスクバルブの498cc・スクエア4エンジンはノーマル。とはいえケンツの手でフルオーバーホールが施され、さらに輪切りの溶接痕が美しいエクスパンションチャンバーを装着。特にリヤ2気筒はフロント同等の管長を稼ぐためにクロスし
つつ、先述のシートレール内に絶妙なクリアランスで収められている。
フレームもシートレールがカットされた以外、補強などは入らないノーマル。しかし足回りはフルに変更されており、43mmの正立フルアジャスタブルフォークや湾曲型スイングアーム、往年のスズキGPマシンの定番・マルケジーニに近い形状の前後17インチホイールなど、XR74の再現に適したスズキ純正パーツを厳選し、加工などのひと手間を加えた上で装着されている。
外装の塗装はアルファレイズが担当。これも単純な白×青のスズキカラーではなく、白い部分はホイールも含めてXR45に基づく「少し青みがかった白」なのが特徴。こうした時代考証が車両の完成度を高めているわけだが、そのためにスズキの社内ミュージアム「スズキ歴史館」まで足を運び、実車を観察するといった手間も掛けられている。

エンジンは海外製リプロパーツも駆使したフルオーバーホールを施し、ワンオフのチャンバーと、それに合わせたキャブレターのジェッティングにより100ps以上を発生。写真はキャブを見せるためダクトを外したが、エアクリーナーボックスは装着される。

ラジエターは増層された400/500ガンマ用を装着。ちなみに、スズキ旧車は純正パーツ供給がかなり厳しいが、川島さんによればスクエア4は近年、イギリスなどを中心にリプロパーツが充実しつつあり、オーバーホールは十分に可能とのこと。

ワンオフシートレールにピッタリ収まるリヤ2気筒のチャンバーは、フロント同等の長さを確保するためシリンダー直後でクロスする。やはりワンオフのアルミ製2ストオイルタンクに這わせられた透明ホースはオイル残量の確認用。

あえて正立のフロントフォークやマルケジーニ3本スポーク風のホイールなど、足回りはXR74の雰囲気を持つスズキ純正パーツに多くの加工を施して構成。310mm径のブレーキディスクは当時のワークスマシンと同じデザインでサンスターに制作を依頼した、ケンツのオリジナルパーツだ(5万2000円/1枚。1988年型GSX-R750や1989年型のGSX-R1100にも使用できる)。武骨なニッシン製キャリパーも当時ワークスマシンが使用していたもので、川島さんが全日本で走らせていた500ガンマのTTF-1仕様車にも装着されていたのだ。

スイングアームはRGV250ガンマ(VJ22)用で、右サイドの湾曲形状がXR74に近いことから採用(その翌年型のXR75にはさらに近い)。ただし500ガンマとVJ22ではリヤサスの構成が全く異なるため、リヤショックの受けを制作し、リンクのレバー比を変更するなどかなりこだわっている。リヤホイール幅は4.5Jで、これがVJ22アームに装着可能な最大幅とのこと(ちなみにフロント幅は3.5J)。余談ながら、1990〜92年のVJ22が採用していたこのプレス成形スイングアームはカスタムマニアに人気が多く、中古は品薄&高価傾向。

500ガンマのフルフローター式リヤサスに合わせて制作されたスイングアームのリヤショック受けは、プレス成形のアルミ材をモナカ合わせした凝った構造。リヤショックは他機種用のオーリンズで、フルフローターのリンク側もオーリンズに合わせて加工するなど、VJ22アーム流用はとにかく手間の塊だ。右2本出しとされたフロント2気筒分のチャンバーはサイレンサー直前に連結ステーを持ち、振動を抑制する。

3本のチャンバー熱抜きダクトや、後端から突き出すサイレンサーエンドがレーシーなXR74テールカウル。FRP製だが、レーシングパーツだけに非常に軽い(=肉厚が薄い)。燃料タンクはVJ22用で、タンクキャップを伊TWM製に変更。一見クイックリリースに見えるがカギ付きだ。「秋」ひと文字のナンバープレートがオーナーの所有歴を物語る。

ステアリングステムもスズキ純正パーツだが、ハンドルストッパーの位置変更など多くの加工を施している。セパレートハンドルはカウルに合わせてかなり低い位置にマウントし、カウルステーをXR74カウルに合わせて制作している。
掛けられた手間や時間に宿る価値
この車両、秋田県在住のオーナーが20年以上も寝かせていたRG500ガンマをケンツに持ち込んだのがキッカケ。「定年を控えた“終の1台”として、憧れのワークスレーサーをガンマで再現したい」という依頼だったという。
「アポイントもなく突然、ガンマを載せた軽トラが店に来てね」と笑う川島さん。オーナーは以前、ケンツが制作したハーベーカラーの500ガンマを見ての来店だったそうだが、そこから完成までには約2年半、500万円ほどの制作費用が費やされている。
レース用のマグホイールやブレーキキャリパーといった高額カスタムパーツが使われているわけではないから、その金額に驚く人もいるかもしれない。しかし先述したように、XR74の雰囲気を追求するための時代考証をベースとした多くのワンオフパーツ製作や、そのための計測/仮装着といった作業が繰り返し行われ、さらに全体的なフォルムを「誰が見てもスキのない」ものにするために、その期間が2年以上に及んだと聞けば、カスタムバイクの玄人ほど「むしろ割安では?」と感じるはずだ。
XR74感を醸し出すのに必要とケンツが考えることは、まずはないパーツに対して「作れるモノは作る」。これが基本
。また、海外のリプロ品やオークションで入手できるパーツなどももちろん使用するが、そのままポン付けできることは少ない。色々なケースをオーナーと相談しつつ、加工に始まり塗装やポリッシュなどの仕上げを1点1点決めていく。
こうした作業は高価なレース用パーツを組むのと同等、場合によってはそれ以上のコストが掛かるのだ。
逆に「このガンマに最新の倒立フォークを付けたいなんてリクエストされたら、たぶん断りますね」と川島さん。XR75やRG500ガンマは川島さんが現役全日本レーサーだった時代に深く関わった車両だけに、思い入れはむしろオーナー以上。実際、完成したマシンを前にしたオーナーは言葉を失うほど感動していたという。
ちなみにケンツでは現在、外観はノーマル風ながら、前後サスやスイングアーム補強など、足回りを近代化したウォルターウルフカラーの500ガンマ(ケンツ5号車)も制作中。こうした仕様も含め、今後も400/500ガンマのカスタムは車両入手段階から相談に応じてくれるという。
もちろんそれ以外の機種もOKで、取材時の店内にはヤマハOW01や空冷2ストのRD400、6気筒のホンダCBX、スズキRG250ガンマ初期型、そしてケンツと言えばのハヤブサやGSX-R1000など、実に多種多様なマシンが並んでいた。旧車から最新モデルまでOKなこの間口の広さも、同店ならではの特徴と言っていい。

ノーマルではフロント16/リヤ17インチのホイール径を前後17インチ化&拡幅するなど、足回りの近代化を図った5号車。クレバーウルフのノーマル形状カウルに施されたウォルターウルフカラーは、当時のレース用カラーの色味を吟味し再現される。
・営業時間:10:00〜19:00(土日祝は18:00まで)
・定休日:毎週木曜/隔週水曜
・Tel.:048-949-0118
・https://www.kenz-pro.com
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/532845/
【カスタムマシン紹介】外装はなんと本物! スズキGP500マシン・RGV-γのリアルレプリカ[ケンツスポーツ・RG500ガンマ]【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/532845/533057/



















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