回転部や摺動部など、部品同士が接触しながら運動する部分には必ず油分を伴う潤滑が必要です。潤滑にはエンジンオイルのように液体で行うものと、グリスのようなペーストで行うものがあります。走行距離や使用期間で交換するのが当たり前のエンジンオイルに対して、グリスを定期的に交換しているライダーは少ないかもしれません。しかしグリスは一度塗ればOKというわけではありません。グリスの重要性を再確認しつつ、手が汚れるから面倒なグリスアップをスマートに行うための工具を紹介します。
バイクの寿命と性能を左右するグリスアップ
バイクのメンテナンスというと、まず最初に頭に浮かぶのがエンジンオイル交換でしょう。オイルはエンジンの血液に喩えられるとおり潤滑や冷却にとって必要不可欠で、定期的に交換することでエンジン性能を維持できます。
オイルによる潤滑と同様、機械を長く快適に使う上で見逃せないのがグリスアップです。グリスは金属同士が接触する可動部に潤滑被膜を形成し、摩擦や摩耗を低減する役割を担っています。
エンジン内部のようにオイルで潤滑される部分とは異なり、ホイールベアリングやステアリングステムベアリング、リンク式リアサスペンションのピボット部、各種レバーやワイヤーなど、「オイル溜まり」がない(できない)部分の潤滑はグリスを使用することが前提となっています。そのため、これらの部位でグリスが不足したり劣化すると、金属同士が直接接触する機会が増え、摩耗や焼き付きの原因となります。
またグリスには、潤滑性能だけでなく防錆や防水といった重要な役割もあります。ベアリング内部に充填されたグリスは、回転部分を水分や汚れから守るプロテクションとしても機能しています。特に雨天走行や洗車の機会が多い車両では、グリスの状態が部品寿命に大きく影響することもあるのです。
例えばステアリングステムベアリングのグリスが劣化すると、ハンドル操作時に引っ掛かりが生じたり、タイヤを通して伝わる衝撃を緩衝する性能が低下してレースの傷や打痕につながる場合もあります。さらに顕著なのがホイールベアリングで、グリス不足が異音やガタの発生につながり、最悪の場合はベアリング破損を招く恐れもあります。
こうしたトラブルを予防するには適切なグリスアップが重要です。定期的に清掃を行い、新しいグリスを塗布することで部品の摩耗を最小限に抑えられます。その結果、部品交換の頻度が減り、メンテナンスコストの削減にもつながります。
ただし、グリスアップ作業は手や指先、部品各部がグリスでベトベトに汚れるのが難点です。エンジンオイル交換でも手は汚れますが、塗り薬のように指先でこすりつけるグリスアップの方がはるかに広範囲に汚れが広がります。ニトリルグローブをはめて作業すれば手の汚れは軽減されるものの、グローブをはめた手であちこちに触れると油分があちこちに付着してしまいます。
手のひらに収まり狭い場所も確実に狙えるミニグリスガン
グリスアップの重要性を理解していても、実際の作業には手間がかかります。グリスは手作業では均一に塗布しにくいうえ、周囲を汚しやすいという側面もあります。そこで活躍するのが専用工具。まず紹介するのはミニグリスガンです。
レバー操作などで金属容器内からグリスを押し出すグリスガンは、一般的に大型で自動車整備工場などでの使用を前提としたものが多く、潤滑部分にグリスニップルが装備された部分で使用されています。
それに対してアストロプロダクツ製ミニグリスガンは本体容量が90mlとコンパクトで大人の手のひらにすっぽり収まります。
またレバーではなく本体上部のプッシュボタンでグリスを吐出する構造により、片手で操作できるのも、一般的なグリスガンとの違いとなります。
そして最大の特徴はノズル口径が約1mmと非常に細く、糸状に吐出することです。カップ状の容器やチューブから指先にグリスを取り出すと、どうしても余計に塗布してしまうことがありますが、糸状に吐き出すことで無駄なく適切な量を塗布できます。
またボールベアリングのボール部分など、ピンポイントにグリスを塗布したい場合も、細いノズルが狙った場所に届くため確実に届けることができます。
さらにカップやチューブから指先にグリスを取り出す際、その指が汚れていたり砂利が付着していると潤滑部分に異物が混入するリスクがありますが、ミニグリスガンを使えば塗布部部分までゴミなどが混ざることなくグリスを運ぶことができます(塗り広げる指が汚れていれば別)。
また本体が金属製なのも見逃せないポイントです。駐輪場でメンテナンスする際に自宅から工具箱を運ぶライダーは少なくありませんが、チューブ入りグリスが工具に押し潰されて中身が飛び出してしまった!! ということはないでしょうか。このグリスガンのボディは堅牢な金属製なので、そうしたトラブルとは無縁です。
リチウム系やウレア系など、グリスは使用するベースオイルによって特性が異なり、必要に応じて使い分けることで潤滑部分の機能や性能の維持に役立ちます。そうしたグリスごとにガンを使い分ければ、潤滑作業の効率がアップするのは間違いありません。

グリスを入れてヘッドを取り付けたら、マイナスドライバーなど棒状の工具を底部の穴から突っ込んで内部の底板を押し上げる。グリスをヘッド部分に押し込んでプッシュボタンを何度か押すと、井戸水ポンプの要領でグリスが吐出する。

ホイールハブに圧入されたベアリングはオイルシール分だけ奥に入っているため、指で運んだグリスが余計な部分にまで付着してしまう。だがグリスガンなら奥まった場所でも細いノズルが届くので効率的にグリスアップできる。
テーパーローラーベアリングのグリスアップはこれで楽勝
一方、テーパーローラーベアリングの整備において高い効果を発揮するのがベアリンググリスパッカーです。ホイールハブやステアリングステムなどに使われることが多いテーパーローラーベアリングは、高い荷重を受け止められる反面、グリスによる潤滑が不可欠です。
その潤滑方法として一般的なのが、手のひらに盛ったグリスにベアリングを押し付けながら少しずつ内部へ押し込む「手詰め」。しかしこの方法は時間がかかるうえ、両手がグリスまみれになってしまいます。
その手間がDIYメンテナンスの醍醐味でもありますが、手のひらに残ったグリスをチューブに戻すのは難しく、ウエスで拭ってゴミ箱に捨ててしまうのはもったいないという一面もあります。
こうしたグリスアップ時に重宝するのが、ベアリンググリスパッカーです。画像で紹介するアストロプロダクツ製は販売終了となりましたが、他メーカーにも同様の製品はあり、入手は難しくありません。
この工具はグリスを詰めた容器に、「落とし蓋」のようなプレスボディを圧入することで、逃げ場を失ったグリスがプレスボディ中央の穴から上部に押し出される構造になっています。
この時、プレスボディの中央にテーパーローラーベアリングをセットすることで、押し出されたグリスがベアリングのテーパーローラーとリテーナーに行き渡り、作業者の手を汚すことなくグリスアップできます。
手が汚れないだけでなく、プレスボディの8個の穴からニュルニュルと均等にグリスが出ることで、手詰め作業ではどうしても起こりがちな詰めムラも回避できる利点もあります。

プレスハンドルを緩めて取り外すと、テーパーローラーとリテーナーを通り抜けたグリスが内輪側から押し出されてくる。グリスをベアリング部分に集中させるため、プレスボディとプレスハンドルは互いにテーパー形状となっている。
便利な道具で「グリスアップは面倒」という既成観念を塗り替えよう
グリスアップは地味な作業ですが、車両コンディションを左右する重要なメンテナンスです。そしてグリスアップ専用工具には、その品質と作業性を高める役割があります。ミニグリスガンとベアリンググリスパッカーは、いずれも「確実にグリスを届ける」という本質的な目的を、より簡単かつ効率的に実現してくれるアイテムです。
適切にグリスアップされた車両は操作感にも違いが現れます。レバー操作は滑らかになり、ステアリングは軽快に動き、サスペンションも本来の性能を発揮しやすくなります。チューニングパーツのような即効性はないものの、グリスアップはバイクが持つ本来のポテンシャルを引き出すための重要な作業であり、グリスガンやグリスパッカーはメンテナンスの質を高めたいDIYユーザーにとって、導入する価値の高い実用工具と言えるでしょう。
- ポイント1・回転や摺動部分のグリスアップは必須メンテナンスのひとつだが、指や手でグリスを塗ると周囲が汚れて無駄になる分も少なくない
- ポイント2・手のひらサイズで糸状に細く吐出できるミニグリスガンがあれば、指先が届かないような場所にも正確にグリスを塗布することができる
- ポイント3・テーパーローラーベアリングのグリスアップにベアリンググリスパッカーを使えば、手のひらにグリスを山盛りにする手詰め作業から卒業できる
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/540981/
潤滑不良が命取り!! 大切なバイクを守るグリスアップテクニック【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/540981/540994/









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