KLX230シェルパ試乗! トロトロ走りからちょい攻めまで、野山を自在に走れる乗り味がバイク旅を強烈に誘う

KLX230シェルパ試乗! トロトロ走りからちょい攻めまで、野山を自在に走れる乗り味がバイク旅を強烈に誘う

 「久々に林道ツーリングへ出かけたくなった」。カワサキの新型オフロードモデル「KLX230シェルパ」に試乗してみた感想です。低回転域からトルクフルな232cc・空冷単気筒エンジンや、軽量で取り回しのしやすい車体などが生む乗り味は、まさに自然の中でトレッキングを楽しむのに最適。その魅力は、オフロードバイクから離れて約10年の筆者にとって、アウトドアのバイク旅をかなり強烈に誘ってくれるものでした。

 
文/平塚直樹
 

約17年ぶりのカワサキ製トレッキングバイク

 カワサキの「シェルパ」というネーミングを聞くと、昔からのバイク好きなどは、1997年から2007年まで販売された250ccモデル「スーパーシェルパ」を思い浮かべる人も多いでしょう。

 筆者もそのうちの1人で、このモデルは、アウトドアを気軽に走れるトレッキングバイクとして、当時、ヤマハの「セロー250」などと共に一斉を風靡したモデルです。

 筆者も、約10年ほど前までは、ホンダ「XR250」などのオフロードバイクを所有していて、林道ツーリングなどを楽しんでいましたが、スーパーシェルパもそんなアウトドア派ライダーの多くに支持を受けていたことを覚えています。

 その約17年ぶりの復刻版ともいえる新型は、各部をリファインした2025年型「KLX230」のローシート仕様「KLX230S」がベースです。シンプルで頑丈、低回転域から扱いやすい232cc・空冷単気筒エンジンやスリムで軽量な車体、845mmというシート高など、基本スペックをほほ継承しています。

 

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新型KLX230Sをベースに、トレッキングバイクに仕上げたのがKLX230シェルパ

 

 加えて、KLX230シェルパでは、ハンドルに林道などで手をプロテクトする「ハンドガード」、エンジン下には悪路の凹凸にオイルパンのヒットを防ぐ「アルミ製スキッドプレート」などを追加。「シュラウド」もスリムな専用デザインを採用するなどで、アウトドアのテイストとスタイリッシュな雰囲気をミックスさせた装備やスタイルを特徴としています。

 

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KLX230シェルパには、ハンドガードなどの専用装備を追加

 

 KLX230Sは、どちらかといえば、競技専用車のモトクロッサーKX風のスタイル。あくまで私見ですが、よりアグレッシブな雰囲気が好きなユーザー向けではないでしょうか。対するKLX230シェルパは、これも私見ですが、より街にもマッチする雰囲気もあり、幅広い年齢や嗜好のライダーに好まれるスタイルになっているような気がします。

 

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ベースとなったKLX230S

 

 
 
 

街からオフロードまで対応するポジション

 2024年11月29日にプレス向け試乗会に参加。実車へ早速またがってみると、上体がアップライトになるのはもちろん、絶妙なハンドル幅やステップ位置により、身長164cmと比較的小柄な筆者の場合、かなり余裕のポジションだと感じます。街中から高速道路、オフロードまで、幅広いシーンで自由度が高いであろうことがうかがえるのです。

 

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身長164cmと比較的小柄な筆者の場合、かなり余裕のポジション

 

 足着き性も、片足ならカカトべったり、両足だとつま先立ちでカカトがかなり急角度で浮きますが、オフロードバイクとしてはいい方ですね。

 シート高は前述の通り、KLX230Sと同じ845mm(スタンダードのKLX230は880mm)で、ロードバイクなどと比べるとやや高い方ですが、着座した際にリアサスが沈み込む量が多いため、足は着きやすくなります。

 

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身長164cm、体重62kgの筆者の場合、両足ではカカトがやや急角度で浮く

 

 また、車両重量も134kg(KLX230Sは133kg)と軽いですから、例えば、タイトなUターンなどをする際、バランスを崩して転倒しそうになっても、とっさに片足で車体を支えやすいといえます。

 そして、この足着き性のよさに加え、アクセル全閉のアイドリング時でもエンストしにくい粘り強いエンジン特性が、街乗りの渋滞路などはもちろん、アウトドアでも効力を発揮するはずです。

 

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極低回転域でも粘り強いエンジン特性

 

 例えば、大きな凹凸があるオフロードを、ジャンプなどを駆使し、ハードに走り抜ける自信のないライダーの場合。そんなケースでは、足を地面に着けながら、アクセルも全閉からちょい開けを繰り返し、トコトコと難所をクリアするシーンも多いといえます。

 そんな状況下で、転けないように足を着くのはもちろん、アクセルをあまり開けなくてもエンストしにくいのは安心。とくに、トコトコ走行でも、エンストすると転倒してしまうリスクは大きくなりますから、このバイクのエンジンのように、極低回転域も使える特性は、オフロード初心者などにとって、かなり大きな安心感につながるといえます。

フラットダートでも軽快で安定感ある走り

 今回の試乗では、キャンプ場などへ行く途中にあるような、比較的フラットなダート道も走行してみました。

 まず、感じたのが、直進安定性の高さ。シートに座ったままの状態はもちろん、ちょっとペースを上げてスタンディングで走る際も、路面の凹凸などでハンドルや車体が振られることもなく、安心して走ることができます。

 

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フラットダートでも高い直進安定性を実感

 

 これは、おそらく、フロント21インチ、リア18インチのスポークホイールや、ブロックパターンのデュアルパーパスタイヤなどが、街乗りからオフロードまで、幅広いシーンで軽快な走りを生み出してくれているためでしょう。

 また、特に、リアサスペンションは、前述の通り、着座時の沈み込み量を多めにして足着き性をよくしていますが、ダートなどの走行中は奧でしっかり踏んばる感じです。

 そのため、例えば、モトクロス場などにある大きなジャンプを飛ぶといった走りをしない限りは、サスペンションがフルボトムして底付きするといった心配も無用。ハードなオフロード競技を除く、幅広いシーンで安定感ある走りを楽しめます。

 

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リアサスペンションは、奧でしっかり踏んばる感じで、オフロード走行でも安定感が高い

 

 また、車体は、コンパクトで振り回しやすいため、オフロードでも軽快なコーナリングを味わえます。しかも、意外に、剛性感も高く、旋回中などにフラフラする感じもないから、この点でも安心感が高いといえます。

 

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スリムで軽量な車体により、オフロードでも軽快なコーナリングを味わえる

 

 さらに、スリムな形状のシュラウドは、リーンアウトでコーナリングする際に、外足側のニーグリップがしやすい形状。スタイリッシュなだけでなく、実用的にも優れたデザインだといえるでしょう。

 

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スリムな形状のシュラウドは、リーンアウトでコーナリングする際も、外足側のニーグリップがしやすい

 

 ちなみに、このモデルには、デュアルパーパスABSを採用しており、オン/オフ両方で効果を発揮。とくに、オフロードの滑りやすい路面では、ブレーキング時に安定した制動性能をアシストするといいます。

 ただし、オフロード走行では、例えば、リアブレーキのみを強くかけて後輪を滑らせてタイトにターンする、いわゆるブレーキターンといったテクニックを使うこともあります。

 

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ブレーキターンといったテクニックを使うときなどは、デュアルパーパスABSの機能キャンセルも可能

 

 そうしたケースでは、逆にデュアルパーパスABSが後輪スライドを邪魔することもあるので、機能をオフにすることも可能です。左ハンドルにある赤いスイッチを長押しするとABSをキャンセル、エンジンを一旦停めて再始動すれば機能を復活させることができます。

 

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左ハンドルにある赤いスイッチを長押しするとABSをキャンセルできる

 

オンロードでは普段の足にも最適

 一方、オンロードを走った印象。例えば、街乗りの渋滞路などでも、低速トルクがあり、車体が軽いため、疲労度は比較的少ないでしょう。そのため、自宅から郊外を往復する長距離ツーリングはもちろん、通勤・通学や買い物などの普段使いにも使いやすいといえます。

 

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オンロードも軽快で快適

 

 また、軽くてスリムな車体は、自宅や市街地の狭い駐車場などでも、取り回しがしやすく、押し歩きなどもかなり楽。日常の使い勝手もかなりいいといえますね。

 加えて、232cc・空冷単気筒エンジンは、低回転域のトルクが太いだけでなく、高回転域までストレスなく吹け上がる特性。例えば、高速道路などの合流車線を走る際なども、比較的流れに乗りやすいといえます。

 ただし、ちょっとだけ気になったのがシートの幅や厚み。今回は長距離走行をしていないので、実際にどうなのかは分かりませんが、オフロードバイクのシートは、ロングツーリングなどでは、薄くてスリム過ぎることで、お尻が痛くなる場合もあります。

 それに関して、カワサキによれば、KLX230シェルパのシートは、「ツーリング時の快適さとトレイルライディング時の操作性を考慮して幅や厚みを決定している」とのこと。

 確かに、操作性の面では、例えば、今回もオフロード走行で座ったままブレーキングする時などに、お尻が後方へずれるようなこともなく、しっかりと踏ん張れた印象です。これは、おそらく、シート表皮に滑りにくい素材を使っているのでしょう。

 

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KLX230シェルパのシート

 

 あとは、ツーリング時の快適性ですが、この点はある程度の長距離走行をしないと分からないので、現時点ではなんともいえないところ。ただし、最新のモデルだけに、昔のオフロードバイクのような、痛くて乗り続けられないといった感じにはならないことを期待したいですね。

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