「いい出来です、ご期待ください」ホンダV3電動ターボは既に走行可能なテスト車が存在! レースも視野に入れて開発中か

「いい出来です、ご期待ください」ホンダV3電動ターボは既に走行可能なテスト車が存在! レースも視野に入れて開発中か

 1月28日に行われた「ホンダ二輪事業説明会」で様々な新情報が判明。昨年コンセプト車が発表された電動過給V3は既に走行テストが行われ、ホンダ首脳が乗った印象によると軽量&パワフルで仕上がりは上々という。さらに世界シェアの状況や今後の見通し、日産との経営統合など気になる話題についてもコメントが!

 
文/沼尾宏明
 

「先々週、熊本で乗りました」とホンダの二輪トップが発言! その乗り味は?

 投資家向けの「ホンダ二輪事業説明会」に、バイク関連の実質的なトップである加藤稔氏と、電動バイクを統括する三原大樹氏が登場。主に世界の販売状況や、今後の見通しについて語られたが、ライダー最大のトピックは電動過給機付きV型3気筒エンジンに関する新情報だろう。

 

写真左から本田技研工業執行役 二輪・パワープロダクツ事業本部長 兼 二輪事業統括部長の加藤稔氏。同執行職 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業統括部長の三原大樹氏。

 

 

2024年秋のEICMA(ミラノショー)で発表された電動過給機付き水冷75度V型3気筒エンジンのコンセプトモデル。電動過給機はバイクとして世界初で、大型二輪車を想定している。ホンダの朝霞研究所にも実車を展示していた。

 

 完全新設計のV3エンジンは、電動コンプレッサーを採用したことにより、エンジン回転数に関わらず任意に過給をコントロールでき、低回転からハイレスポンスを実現できる。加えてスリムなV3エンジンと組み合わせることで、スペースが限られているバイクでもマスの集中化を狙った搭載位置の自由度も高い。また、インタークラーを必要としない設計としたことで軽量化にも貢献している。

 まさに革新的で誰も乗ったことがないバイクだけに、V3ターボには多くのライダーが注目している。まず加藤氏はV3について「このエンジンは内燃機関領域での新たなチャレンジと位置付け、モーターサイクルを操る楽しさ、所有する喜びをより一層体感いただくことを目指しております。この新しいエンジンは走りだけではなく、燃費そして排ガスにおける高い環境性能も実現しております。今後、量産化に向け引き続き開発を進めてまいりますので、ご期待ください」とコメント。市販化について明言した。

 さらに質疑応答では、なんとテスト車に加藤氏が乗ったと話す。「あんまり具体的に言うと怒られちゃうんですけど」と前置きしつつ「先々週、熊本(ホンダ工場)で乗りました」とコメント。

 続けて「具体的な排気量とかは言えないんですけど、いずれにしてもコンパクトなエンジンとコンパクトなボディ、軽量でありながら全領域で電子制御による過給ということで、とてもパワフルな仕上がりになっています。まだテスト車なんですけれども、これからの目標に向かって引き続き本気で開発してまいりますので期待してください」と発言した。

 昨年秋のEICMA発表時にはエンジンをベンチテストしている動画も公開されたが、2025年1月の時点でさらに開発が一段階進んだと言えるだろう。それにしても加藤氏のコメントから楽しさが伝わってくる。市販時期は明らかにされていないが、その乗り味に一段と注目が集まりそうだ。

 

説明会でV3ターボについて話す加藤氏。V3エンジンの市販車としては40年前のNS400R以来。エンジンは鋼管トラスフレームや片持ちスイングアームの車体に搭載されていた。

 

 

EICMAで発表された動画では、エンジンベンチの模様やテストライダーが見守る様子が。加藤氏が試乗できたということは、この段階からさらに開発が進んだ?

 

 
 
 

V3はレースも照準!? WSSPに参戦か

 なお、別の関係者からは「V3はレースも視野に入れて開発している」との情報もある。レースの詳細は明らかではないが、FIMスーパースポーツ世界選手権(WSSP)の可能性があるかもしれない。

 WSSPは4気筒600cc以下、3気筒675cc以下、2気筒750cc以下の4ストロークエンジンを搭載した公道用バイクをベースに行なわれるレース。しかし近年はベースとなるバイクの生産中止が続いたために、リストリクターなどによる性能調整を行なった上でトライアンフの765ccのストリートトリプルRSやドゥカティの955ccのパニガーレV2などが参戦中だ。

 さらに2025年からヤマハが888ccのYZF-R9で参戦することを表明している。

 ホンダ勢はCBR600RRで参戦しているが、その後継車の役割をV3ターボが担う可能性も。なお「ターボ」参戦にはレギュレーションの変更が必要だが、ノンターボでもV3は強味を発揮するかも知れない。もしくは、WSSでは新たな車種を導入するため柔軟にレギュレーションを整備しており、ターボにも対応してくれることを期待したいが果たしてどうだろうか。

 

ヤマハのYZF-R9。左がレース仕様、右は公道用のスタンダードだ。MT-09ベースの888cc3気筒を専用アルミフレーム搭載し、111PSを発生。車重も195kgと軽量だ。ホンダV3のライバルになる?

 

 
 

新型のEVスクーターは排気量160cc相当で2026年初頭に出る?

 説明会で出た、V3ターボ以外のトピックについても触れたい。2024年秋のEICMAでホンダは「EV Fun Concept」と「EV Urban Concept」の電動コンセプトモデル2台を発表。説明会では改めて2025年度中に市販化することを明言した。

 EV Urban Conceptの出力は不明だったが、三原氏から「6kW相当(8.2PS)、排気量で言えば160cc相当」という新情報も。現在、多くのEVコミューターは125cc(原付2種)以下相当で1kW以下だが、EV Urban Conceptは相当な動力性能がありそうだ。さらに「できれば来年頭には出したい」ともコメントしていた。

 

EV Fun Conceptはホンダ初の電動スポーツモデル。内燃機関ミドルクラスに相当する性能を持つ。固定式バッテリーを搭載し、航続距離は100km以上。急速充電器にも対応する。

 

 

EV Urban Conceptはホンダが考える都市型電動モビリティをゼロから再構築したモデル。排気量では160cc程度で、普通二輪クラスになるようだ。

 

欧州でシェアトップを獲得も、中国メーカーの台頭は脅威

 販売台数やシェアに関する情報も聞けた。ホンダは2024年、37の国と地域で過去最高の販売台数を更新。累計生産台数は5億台突破も視野に入ってきたという。これまではアジアが利益の大半を稼いできたが、欧米でのラインナップ拡充、ブラジルでの市場成長などによって、地域ごとの収益構造も向上した。

 さらに2024年は、欧州主要5か国(イタリア、ドイツ、フランス、スペイン、イギリス)でシェア1位を獲得。加藤氏によると「10年前は欧州で稼げなかったが、(近年は)アフリカツインやDCTモデルが好調」という。また「為替の影響もあり新商品がリーズナブルに提供できたり、共通プラットフォームを活用しながらバリエーション展開してきたことで、開発効率、生産効率の向上でコスト構造もかなり良くなってきました」と話す。

 

欧州ではこれらのモデルが好調で、シェア1位に貢献。また、DCTやEクラッチの導入がユーザーに高く評価されている結果と受け止めているという。

 

 また、CF-MOTOやQJMOTORら中国メーカーを脅威だと思っている、と加藤氏。欧州への輸出も開始しており、本気でレース活動もしている。また、価格がリーズナブルなため、ホンダとしても「コスト競争力を上げていきたい」と語る。

 中国の国内市場は、 電動自転車が5000万台規模。コミューターは500万台レベルで、ともに減少傾向にある。一方で大型FUNバイクの領域では「重慶モーターサイクルショーに若者がひしめき合ってくるぐらい人気が高まっている」と加藤氏。FUN領域の市場は70万台規模だが、この先徐々に伸びていくと見ている。

 なおアメリカ市場に関しての話題は特になかったが、これは変化がほぼなかったことが理由のようだ。

 

QJMOTORは1000cc直4スーパースポーツから50ccスクーターまで展開する中国の総合バイクメーカー。スーパーバイクやモト2にも参戦中だ。QJMOTOR JAPAN((https://qjmotor.co.jp/))として今年3月の東京MCショーにも出展する。

 

インドにEVバイク専用工場を開設、2030年頃に世界6000万大規模を目指す

 世界各国で特に注視している国がインド。人口世界最大の国で、二輪需要においても2000万台規模という世界最大の二輪市場だ。EV補助金政策の後押しやニューモデル投入などでEVは100万台規模を販売。今後も成長を見込んでおり、2028年にはインドのベンガルールに電動二輪車の専用工場を稼働させる。

 グローバルでは現在の合計5000万台規模に対し、2030年前後には電動を含めて6000万台規模に成長する見通しという。

 

2028年にインドで二輪EV専用工場を開設。様々なモジュールを共用することで多彩なモデルを展開していく。

 

日産との経営統合によるバイクへの影響はないと予想

 昨年末、ホンダと日産の経営統合検討が大きな話題になったが、バイクへの影響も気になるところだ。質疑応答でこの話題が出たところ「まだ協議中ということで決まったことはないんですけれども、基本的に二輪事業には影響がないと我々は思っています」と加藤氏。

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