コンパクトな車体で扱いやすく、多くのライダーに愛された空冷Z「ゼファー750」

コンパクトな車体で扱いやすく、多くのライダーに愛された空冷Z「ゼファー750」

取材協力:バイク王つくば絶版車館

 ネイキッドブームの発火点となったゼファーシリーズの中で2番目に発売されたゼファー750は、前後17インチのホイールとコンパクトな車体、そして必要にして十分な性能を発揮する空冷4気筒エンジンが魅力。発売から35年が経った今でも高い人気を誇る、「空冷Z」である。

 
文/後藤秀之
 

Z650の流れを汲む738ccエンジンを搭載

 1989年に発売された400ccのゼファーは、近内の全メーカーを巻き込んだネイキッドバイクブームを巻き起こした。このネイキッドブームの中心は400ccクラスであったが、カワサキは1990年に大型クラスにゼファー750をいち早く投入した。

 カワサキの空冷4気筒750ccはZ2こと750RSから始まる。このZ2はZ1のエンジンをベースにボアとストロークを縮小し、基本的には同じ車体に搭載したモデルだった。そのフルモデルチェンジ版とて登場したZ750FXも、海外仕様のZ1000MKIIの排気量を750ccとしたものだった。このZ750FXのフルモデルチェンジ版となるZ750FXIIでは、ザッパーことZ650に搭載されていたKZ650BE型エンジンをベースに、ボア×ストロークを62×54mmから66×54mmへと変更することで738ccまで排気量アップしたKZ750EE型エンジンを搭載。車体もひとまわりコンパクトな専用のものへと変更された。

 

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ゼファー750に搭載されるZR750CE型エンジンは、「ザッパー」の愛称で知られる「Z650」のエンジンの流れを汲む。

 

 このKZ750EE型エンジンは、Z750FXIIとZ750FXIIIには67PS/9500rpm、Z750GPにはフューエルインジェクション化されて70PS/9500rpm、GPz750/Fでは再びキャブレター化されて77PS/950rpmという仕様で搭載された。しかし、水冷のGPZ750Rの登場で、空冷エンジンは国内フラッグシップエンジンとしての役割を終えようとしていた。

 その空冷エンジンを復活させたのがゼファー750であり、搭載されたエンジンはZR750CE型という名称だが、ボア×ストローク66×54mmの738ccという数値からKZ750EE型の改良版であることは明白であった。ゼファー750は当時の空冷カワサキカスタムブームの流れに乗ってヒットモデルとなり、1992年にはゼファー1100が発売されて、ゼファーシリーズのラインナップが完成した。

 

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750ccとしてはコンパクトな車体を持つゼファー750は、扱いやすくそれなりに速く走れるということで初心者からベテランにまで愛された。

 

 

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Z1系のデザインをイメージさせる丸みを帯びたボディデザインを持ち、エンジンのカムカバーも丸型とされている。

 

 
 
 

前後17インチホイールを履く、コンパクトでスポーティな車体

 ゼファー750のコンパクトな車体の中心となるフレームは、スチール製のダブルクレードルタイプで、最も旧Zシリーズに近いデザインを採用。タンクはZ1系の丸型デザインではあるものの、後ろ側に向かってラインが湾曲する勾玉のようなデザインが採用された。デビュー当時はカラーリングは単色であり、タンクには「Kawasaki」ではなく「ZEPHER」という車名のエンブレムが取り付けられていた。これはZ1やZ2の焼き直しではないという意識がそうさせたのであろうが、次第にZ1やZ2をトリビュートした仕様やカラーリングがラインナップされるようになる。1996年にはスポークホイールを履く「ゼファー750RS」が発売され、2004年のC10型からはタンクのエンブレムが「Kawasaki」へと変更されるなどした。

 

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スポークホイールを装備し、カラーリングもZ1やZ2をイメージしたものが採用された「ゼファー750RS」。

 

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ハンドルは高すぎず、上半身のポジションは軽く前傾する感じのスポーティなもの。ステップの位置はちょうど体の軸あたりにある。

 

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身長171cm、体重65kgのライダーが跨った状態。両足を着くと軽くかかとが浮く感じで、750ccとしては足着き性は非常に良い。

 

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シンプルな構成で、王道的なネイキッドデザインを生み出すフロントフェイス。今となってはカット入りのヘッドライトレンズがクラシカルだ。

 

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メーターは砲弾型の二眼タイプで、インジケーター類はメーター外に配置。タコメーター内にはアナログ式の燃料計が備わる。

 

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シンプルなスイッチ配置で、操作性の良さを感じさせる左側のスイッチボックス。クラッチはケーブル式を採用している。

 

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ヘッドライトのオンオフスイッチが時代を感じさせる右のスイッチボックスは、スロットルホルダーを兼ねている。

 

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フューエルタンクはタンク下側の部分が湾曲しており、ゼファー750ならではのデザイン生み出している。エンブレムは本来「ZEPHER」だ。

 

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シートはタンデムも楽にできる長さを持ち、フロント側が少し下がったデザインがスポーティさを感じさせる。

 

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軽く上に向いたテールカウルはラウンドしていて、カワサキらしいテール周りのデザインを生み出している。

 

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サイドカバーには「750」のロゴが入り、その下に配置される「DOUBLE OVER HEAD CAMSHAFT」の文字はZ1を思い起こさせる

 

 搭載されるエンジンは先述した通りZR750CE型であり、最高出力68PS/9000rpm、最大トルク5.5kgm/7500rpmとGPZ750/Fに搭載されていたKZ750EE型よりも若干パワーダウンしている。デザイン的にはZ1/Z2をイメージさせる丸型のカムカバーデザインを採用し、C9型まではシルバー仕上げとなっていた。ミッションは5速でマフラーは左右2本出しのメガホン風、オイルクーラーが標準装備されている。

 

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コンパクトなZR750CE型は、最高出力68PS/9000rpm、最大トルク5.5kgm/7500rpmを発生する。

 

 

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空冷カワサキ4気筒らしいデザインを持ったエンジンは、各部をシルバー仕上げとすることでその存在感を高めている。

 

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現代において空冷エンジン車の必需品とも言えるオイルクーラーを標準装備し、安定した走行性能を発揮。

 

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キャブレターはケーヒン製のCVKタイプ。扱いやすくバランスの良い出力特性とされている。

 

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マフラーは左右に1本ずつ出る2本出しで、4気筒の750らしい落ち着いたエキゾーストノートを奏でる。

 

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金属製でゴツめのデザインを持つステップ周り。メンテナンス性をアップするセンタースタンドも装備される。

 

 サスペンションは正立フロントフォークとツインタイプのリアショックとシリーズ共通と言えるベーシックな構成であるが、ホイールサイズに関しては大きく異なっている。400はフロント17、リア18、1100はフロント18、リア17というホイールサイズであり、当時既にスポーツバイクの定番となっていた前後17インチホイールを採用していたのは750だけであった。ホイールデザインも750だけ3スポークであり、同じエンジンを搭載しつつリアにモノショックを採用した、近代的なスポーツバイク的なデザインを採用したZR-7/Sという兄弟車も1999年に発売されている。そう考えると、ゼファーファミリーの中で、750は最もスポーティな仕様であったと思われる。ちなみに400に関しては、4バルブ化されたゼファーχの1997年モデルからリアが17インチ化されている。

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ホイールは3スポークタイプの前後17インチで、フロントフォークは正立タイプが装着される。

 

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フロントブレーキはダブルディスクで、トキコ製の片押し2ポットキャリパーが装着されている。

 

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リアショックはリザーバタンク付きのツインタイプで、スイングアームはアルミ製が組み合わされる。

 

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リアブレーキも片押し2ポットキャリパーを採用。チェーンアジャスターはカワサキらしいエキセントリックタイプとなる。

 

 ゼファー750は2006年のファイナルエディションまで、16年に渡って大きく変更されることなく製造が続けられ、製造中止から約20年が経った現在においてはビンテージバイクとして価値が向上しつつある。Z1/Z2のイメージを受け継ぐZ900RSは実質的な後継モデルということができるが、やはり空冷エンジンのゼファーならではの世界があるのは間違いない。

 
 

ゼファー750主要諸元(1990)

・全長×全幅×全高:2105×770×1095mm

・ホイールベース:1450mm

・シート高:780mm

・車両重量:216kg

・エンジン:空冷4ストロークDOHC2バルブ直列4気筒738cc

・最高出力:68PS/9500rpm

・最大トルク:5.5kgm/7500rpm
・変速機:5段リターン

・燃料タンク容量:17L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=120/70-17、R=150/70-17
・価格:65万9000円(当時価格)

撮影協力:バイク王つくば絶版車館

 

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あらゆるジャンルの絶版車が揃うショールーム。カラーリング違いなども数多くストックされ、好みの1台が見つかるはずだ。

 

住所:茨城県つくばみらい市小絹120

電話:0297-21-8190

営業時間:10:00~19:00

定休日:木曜日

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/446453/

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