また、「イージーリフト機構」とは、イグニッションをオンにしたときに、セミアクティブ・ユニットのバルブを約3分間完全に開くことによって、サスペンションの減衰力を制御するというものです。これにより、フロントおよびリアのサスペンションが柔らかくなり、車高を低下。サイドスタンドを払ってバイクを引き起こす労力を軽減する効果を生むといいます。
ちなみに、ドゥカティで同様の機能を搭載したのは、ムルティストラーダV4のラリー・バージョン「ムルティストラーダV4ラリー」の方が先です。
大容量30Lの燃料タンクや新型のフロント・スクリーンなど、より長距離ツーリングに最適な装備を持つのがV4ラリー。200mmのストローク量を持つセミアクティブ電子制御サスペンション「DSS EVOシステム」や、オフロード走行専用のパワーモードを備えた「エンデューロ・ライディングモード」などにより、悪路での高いコントロール性も追求しているモデルです。
そんなV4ラリーでは、停止時または低速走行時に、バイクの車高を自動で下げることで、シート高を870mm〜890mの範囲で可変させることができます。停車時などに足着き性が高くなり、サイドスタンドを払ってバイクを引き起こす労力も低減。幅広い体格のライダーに使い勝手の良さなどを提供します。
なお、両モデルの価格(税込み)は、ムルティストラーダV4Sが337万7000円〜、ムルティストラーダV4ラリーが360万9000円〜です。
トライアンフ・タイガー1200シリーズ
トライアンフの「タイガー1200」シリーズにも、車高調整の機能が備わっています。
独自のTプレーン・クランクを採用した1160cc・3気筒エンジンを搭載し、低回転から高回転まで、扱いやすいパワー特性を持つのがタイガー1200シリーズ。ラインアップには、オンロード指向とオフロード指向といった2つのライン、全4タイプを設定します。
フロント19インチ、リヤ18インチのアルミ製キャストホイールを装備したオンロード系には、20Lの燃料タンクを装備する「タイガー1200GTプロ」と、30L燃料タンク仕様の「タイガー1200GTエクスプローラー」を用意。
一方、フロント21インチ、リヤ18インチのチューブレス・スポークホイールを装備したオフロード系には、20Lの燃料タンクを持つ「タイガー1200ラリープロ」、30L燃料タンクを備える「タイガー1200ラリーエクスプローラー」を設定しています。
このシリーズは、2021年のモデルチェンジ時にショーワ製セミアクティブサスペンションを採用していますが、2023年8月には、それをアップデートして新機能の「アクティブ プリロード リダクション機能」を追加しました。
これは、従来からの自動電子プリロードアジャストメント機構に加え、速度が65km/h以下になるとリヤサスペンションのプリロードを自動で低減。リヤサスの硬さがさほど必要ない速度域での乗り心地などを向上する効果を生み出します。
また、停車時には、ライダーとパッセンジャーの体重、およびラゲッジの重さに合わせて、シート高を自動で最大20mm下げる機能も搭載。足着き性が改善することで、ライダーにより大きな安心感と自信を提供してくれます。
さらに、この機能は、速度65km/h以下でスイッチキューブにある「Home」ボタンを1秒間押すだけで、システムのオン/オフ切り替えも可能。好みや状況に応じた使い分けができるようになっています。
加えて、付属のシートはシート高を2段階に調整可能。GTファミリー(GTプロとGTエクスプローラー)は850mmと870mm、ラリー・ファミリー(ラリープロ、ラリーエクスプローラー)は875mmと895mmといった2種類のシート高が設定されています。
また、オプションのローシートをセットすれば、シート位置はさらに20mm低減。これらにより、最低シート高はGTファミリーで830mm、ラリー・ファミリーでは855mmとなっており、幅広い体格のライダーに対応しています。
なお、各タイプの価格(税込み)は以下の通りです。
タイガー1200GTプロ:243万5000円〜
タイガー1200GTエクスプローラー:263万5000円〜
タイガー1200ラリープロ:259万5000円〜
タイガー1200ラリーエクスプローラー:278万5000円〜
国産車ではトレーサー9GTの新機能に注目
以上が、現時点で停車時などに車高を自動で下げる機能を持つ海外製アドベンチャーバイクたちです。一方、国産では、同様の機能はまだないようですが、ヤマハのスポーツツアラー「トレーサー9GT」の2025年モデルに、ちょっと注目の機能が追加されています。
このモデルには、KYB社と共同開発による電子制御サスペンションの「KADS」を装備。IMUが検知した車体姿勢とその時の加速度、サスペンションのストロークスピード、ブレーキの液圧といった変化に応じて、減衰力を自動的に調整する機能を持っています。
そして、最新の2025年モデルでは、そのサスペンションにメインキーをオンにした際、30秒間減衰力を低下させて車両の取り回しを支援する制御を追加。自動で車高を下げる機能ではないですが、減衰力を低下させれば、サスペンションが沈み込みやすくなるのは確かです。あくまで私見ですが、おそらくドゥカティ・ムルティストラーダV4Sなどが採用するイージーリフト機構に近い効果を得られるのではないでしょうか。
ちなみに、まだ正式発表はありませんが、日本では2025年夏以降の発売を予定しているトレーサー9GTの上級モデル「トレーサー9GT+」にも、欧州仕様車には同様の機能が採用されています。その点は、おそらくスタンダード仕様と同様に、国内仕様のトレーサー9GT+にも採用されることが予想できます。

新型トレーサー9GT+(写真は欧州仕様車)
なお、新型トレーサー9GTは2025年4月15日に発売予定で、価格(税込み)は159万5000円です。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/447989/
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