【試乗】XMAXがマイナーチェンジ! 装備の充実で走りのクオリティもさらに高まる

【試乗】XMAXがマイナーチェンジ! 装備の充実で走りのクオリティもさらに高まる

 2023年にフルモデルチェンジをした250ccスクーター「ヤマハXMAX」が、早くもマイナーチェンジを敢行。ヤマハのスポーツスクーター「MAXシリーズ」のスタイリングイメージを踏襲しつつ、電動スクリーン、新型メーターなど快適性と利便性を高める装備を充実。細部までこだわった改良も施され、持ち前のスポーティな走りに、上質さもプラスしている。

 
文/小川浩康
 

環境性能と走りの楽しさを両立し、快適装備をさらに充実



MAXシリーズらしさを表す二眼ヘッドランプ、ブーメランをモチーフとしたサイドカバーを受け継いでいる新型XMAX。画像のグレーのほか、ブラックとマットダークグレーの全3色をラインナップする。

 2000年代前半、ビッグスクーター人気は頂点を極めたが、その後の国内販売は停滞傾向となった。そうした状況で「マジェスティ」以来およそ10年ぶりの新型ビッグスクーターとして2018年に国内発売された「XMAX」。そのXMAXに搭載された「BLUE CORE」エンジンは、「走りの楽しさと燃費・環境性能の高次元での両立」をテーマに開発された。当時の排出ガス・騒音規制に適合しつつ、スポーティな走りも楽しめるエンジン性能は高い評価を得て、大容量のシート下収納や快適なタンデム性能などコミューターとしての利便性も高く評価された。XMAXはスポーティなビッグスクーターとして幅広いライダー層に人気のモデルとなった。

 それから6年後の2023年にスタイルを一新してフルモデルチェンジ。LEDヘッドランプ、スマートフォンとの連携機能、上下2画面構成のメーターなど利便性をさらに向上する装備を充実。BLUE COREエンジンはスポーティさを損なうことなく、さらに厳格化された排出ガス規制に適合し、高い環境性能も実現している。

 そのフルモデルチェンジから約1年半後、XMAXがマイナーチェンジ。「Condensed Vitality(活力の凝縮)」を継承した「Stay Vitalized(活力の維持)」を開発テーマとし、MAXシリーズらしいスポーティな車体デザインは受け継ぎ、利便性をさらに向上する変更を受けている。その変更点を確認していこう。



「X」字に発光するヘッドランプとポジションランプ。ウインカーカバーは拡張され、スクリーンのハイポジション設定時の防風効果を高めている。



ストップランプ点灯時はテールランプと合わせて「X」字となる。急ブレーキ時には前後ウインカーが点滅するエマージェンシーストップシグナル(ESS)を搭載。



左ハンドルスイッチでスクリーンを上下できる。電動スクリーンの可動域は100mmで、無段階で調整できる。画像は一番下げた状態。



電動スクリーンを一番上げた状態。雨天時に身体に当たる雨粒を低減してくれそうな整流効果を感じた。一番下げた状態でも整流効果は高い。



マフラーは形状を変更し、旧モデルから800gの軽量化も達成している。マフラーカバーも新デザインを採用している。



上下2段式から、左側LCD・右側TFTにレイアウト変更。TFTディスプレイにはGarmin社製ナビアプリ「Garmin StreetCross」の表示が可能。この表示が鮮明で見やすく、ライディング中の利便性向上に大きく寄与している。



LED照明付きのシート下トランクは最大荷重5kgで旧モデルと変更なし。今回使用したフルフェイスヘルメット2個を収納でき、収納力と使い勝手のよさも健在だ。



シート下トランク、タンクリッドはスマートキー操作に対応。車体左側のポケットは最大荷重1kgで、USB Type-Cソケットを標準装備する。

 
 
 

XMAXの足着き性をチェック!



ライダーは身長172cm、シート高は795mm。ハンドル初期設定位置が従来より20mm手前になっているが、ポジションに窮屈さは感じなかった。



フットボードはスリム化されているが、両足を着こうとすると、つま先立ちとなる。片足を着く際は、足裏まで着くことができる。



ライダーは身長156cm。「好みのライディングポジションが決まるので、操作性は良好です」と、ハンドル位置の変更が好印象。



「車重の不安は少ないのですが、車体幅が広く、急ブレーキ時などにとっさに足を着きにくい感じはありました」。

 
 

細部までこだわった変更で、車体と走りのクオリティも向上

 2025年モデルでは、「日々の移動を楽しいものに変えるための進化」を開発テーマとして、細部のブラッシュアップが行われている。その中でも特にこだわって変更されている部分が、(1)ハンドルポジション、(2)ボルトまでこだわった作り込み、(3)目のつかない部分への工夫、(4)ケーブルへの細かい配慮、(5)熱がこもらない工夫、だという。

(1)ハンドルポジションは、2017年モデルからハンドル位置の前後変更は可能となっていたが、2025年モデルではハンドル位置を工場出荷時に約20mm手前に変更している。ハンドル一本分、身体に近くすることで、小柄なライダーが扱いやすさを感じられるようになっている。
(2)ボルトは、ディスプレイへ映り込むような箇所はすべてマットブラックに塗装したものを使用している。使用したいサイズで、ヤマハのボルト規格の中でマットブラックがなかった箇所には、専用パーツとして製造したという。
(3)目のつかない部分への工夫は、フットレストのカバー裏側に施されている。フットレストのボルト取り付け部には四角い穴が開けられていて、そこにそのままフットレストカバーを載せると、経年変化で凹む可能性がある。これを防ぎ、ボルトの頭に足裏が当たらないようにするために、フットレストカバーの裏側を凸形状としている。
(4)ケーブルへの細かい配慮は旧モデルにもあったが、フロントポケットにケーブルを通せる切り込みを入れている。フロントポケットのフタを閉めてもケーブルが通るようになっていて、密閉性を高めるパーツを使用することで防水性も高め、ケーブルが振動で動きにくくダメージを受けにくい配慮がなされている。
(5)熱がこもらない工夫も旧モデルから引き継いでいるものだが、マフラーとリヤカウル下の隙間に熱を逃す穴を設けている。シート下トランクに、マフラーやエンジンの排熱が滞留するのを防ぐ効果を発揮する。

 日々のライディングでXMAXの使い勝手のよさやクオリティの高さを感じる部分は、ライダーが触れたり、見たりする部分だけではなく、知らなければ見えない部分にまで進化の手を入れることで実現している。



工場出荷時で旧モデルから20mm手前にセットされたハンドルバー。スイッチも使いやすく、メーターの視認性も良好だ。



マットブラックに塗ったボルトを使用し、メーターへの映り込みを防いでいる。実用性だけではなく、仕上げの美しさにも貢献している。



ボルトの頭と足裏が当たらないように、フットレストカバー裏側を凸形状としている。長時間のライディングでの疲労軽減にも寄与する。



フロントポケットにはケーブルを通す切り込みを入れ、ケーブルのズレや雨水の侵入を防ぐパーツを装着している。



エンジンやマフラーの排熱でシート下トランク内部の温度が上がりすぎないように、リヤカウル下の隙間に穴が設けられている。

スポーティな走りは変わらず、扱いやすさ向上を体感できる



車体の細部までクオリティが高く、高級サルーンに乗っているような、走りの上質さも感じられる。

 今回のマイナーチェンジでは、BLUE COREエンジン、フレーム、前後サスペンションの変更は行なわれていない。ハンドル位置の変更、マフラーの軽量化が行なわれたが、身長172cmの筆者にはライディングポジションの違いと800gの軽量化は体感できなかったのが正直なところだ。しかし、電動スクリーンの採用でフロントまわりは増量となっているはずだが、そうした重さやハンドリングへの影響を体感しなかったのも事実だ。

 その電動スクリーンは一番下げた状態でも高い整流効果を発揮する。ヘルメット上部に走行風が当たるのを感じたが、上半身には風圧を感じず、快適にライディングできたからだ。スクリーンの位置調整も左手だけで操作でき、作動がスムーズで無段階に調整可能なのも使いやすさとして感じられた。

 エンジン、前後サスは旧モデルから継続で、スムーズな加速力とフラットな乗り心地も健在だ。アイドリングは1500rpm程度で、およそ2500rpmでクラッチがミートして発進する。その際にトルクが粘るのが感じられ、4000rpmまで回すと太いトルクが立ち上がるのも体感できる。スロットル操作に対するレスポンスもよく、しっかりした加速力も出てくる。そうしたレスポンスのよさと車体剛性の高さもあり、5000rpmまで回せば交通の流れを余裕でリードできる加速力が発揮され、MAXシリーズらしいスポーティなライディングも充分楽しめる。

 前後サスは状態のいい舗装路ではフラットな乗り心地で、快適さを感じた。荒れた路面では細かい衝撃が身体に伝わってきたが、ストロークの奥では踏ん張るので、不快な突き上げはなかった。シートの前後長に余裕があってライディングポジションの自由度が高く、スムーズな乗り心地を実現している。XMAXのこうした乗り心地なら、タンデムでも快適なライディングを楽しめるはずだ。

 そうした実用域での扱いやすさとスポーティな走りの両立はXMAXらしさとなっていて、2025年モデルもしっかりと受け継いでいる。だが、2025年モデルで進化を感じたのはTFTディスプレイだ。スマホとの連携機能を持ち、Garmin社製ナビアプリ「Garmin StreetCross」を表示することができ、ライディング中にナビゲーション機能を利用でき、利便性が高い。さらに、そのTFTディスプレイの表示が明瞭で、視線移動が少なくても情報を目視しやすくなっている。ハンドルに電子デバイスを追加装備せずにナビゲーション機能を使用できるので、フロントまわりに軽快さが感じられ、雨天走行でもストレスを感じにくく、個人的にはかなりの高評価ポイントだ。軽快な走りを楽しめるXMAXはスポーツスクーターとしての人気が高かったが、2025年モデルではコミューターとしての快適性と利便性がしっかりと強化されていると思った。



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