先日「ドゥカティ ジャパン」で新型「パニガーレ V2/V2S」のメディア発表会が行われた。そこで新型V2がなぜここまで“軽量化する必要があったのか”、その理由に迫った。
文/瀧村 和也
35psを失ってまで達成させた-17kgの軽量化
今回新たに発表された「パニガーレ V2/V2S」は、完全新作の水冷4ストロークDOHC4バルブV型2気筒890ccの90°「V2」エンジンを搭載した新世代のパニガーレ。その特徴はとにかく“軽量”ということで、前モデルから比較するとエンジンだけで-9.5kgの軽量化を達成している。そしてV2Sに関して言えば、車体全体で-17kgもの軽量化を果たし、燃料を除く車両重量はなんと177.6kg と、“史上最軽量のパニガーレ”なのだ。
ところが、極端に軽量化されたことで失ったものも小さくない。犠牲になったのはシンプルに“パワー”であり、新型V2の最高出力は120ps。全モデルのV2が155psだったことを考えると、なんと35psものパワーダウン となってしまった。しかも、ドゥカティの代名詞とも言える強制開閉機構、「デスモドロミック」も廃止し、バルブスプリング式を採用。これもひとえにエンジンを軽量&小型化するためである。
なぜここまでして“軽さ”を優先するのか。それはライダー需要の変化によるものだった。
電子制御とエルゴノミクスの発達により、もはやパワーが最優先ではない時代へ
ご存じの通り、バイクの電子制御技術やエルゴノミクスは日進月歩で進化しており、それは新型パニガーレV2も例に漏れない。目覚ましい技術の発展により、バイク自体がライダーをアシストしてくれる範囲も年々拡張してきている。もはや“速さ”=“馬力”の方程式は過去のものとなり、優秀な電子制御と設計こそが“速さ”に繋がる時代となった。
さらに、ライダーの“需要の変化”も新型パニガーレV2を語る上で見過ごせない要因のひとつ。スピードに特化したエキサイティングなレーシングマシンより、気軽に乗れる疲れないマシンを求めるライダーが増えているのだ。特に新型パニガーレV2は“軽い”こと以外にも“乗りやさ”に重点を置いており、エンジンのトルク特性は3000rpmで最大トルクの70%を発揮する仕様。そして3500rpm~11000rpmまで最大トルクの80%を切ることはなく、全域で機敏かつ乗りやすい特性を獲得した。
より多くのライダーが乗りやすい特性。そして“速さ”も兼ね備えた新たなるV2
“軽さ”とは“乗りやすさ”でもある。そして、乗りやすさは最終的に“速さ”にも影響を及ぼす。有名な話ではMoto GPライダーのマルク・マルケスがトレーニング用に新型パニガーレV2Sを愛用していることで、同じサーキットで走行した際に、全モデルとほとんどタイムが変わらなかったとか。
これはもちろん軽量であることも要因だが、その過程で副次的に肉抜きされたフレームの効果が大きい。コーナリングの際によく“しなる”ことでトラクションが向上し、結果として良いタイムを生み出すのだ。ちなみに新作のモノコックフレームはわずか4kgと超がつくほどの軽量。軽さとしなやかさの両方を実現した。
ハンドルも前モデルから60mmも上がっているため、明らかにタウンユースを含めた一般公道走行を意識した設計である。とは言え、新型V2もれっきとしたパニガーレファミリー。もちろんサーキットでもその名に違わぬ速さは健在ということだ。
このように「一般公道では気軽に」「サーキットではより楽しく」という2つを同時に叶えているのが新型パニガーレV2。身体的および心理的負担を極限まで軽減し、ライダーが感じるストレスを振り払ったのだ。これが35psを落としてでもドゥカティが提供したかった部分なのだ。
現在ドゥカティでは新型パニガーレV2Sのデビューフェアを実施中。2025年7月31日まで実施しているので、少しでも気になったライダーはドゥカティディーラーへ問い合わせてみてほしい。
パニガーレV2/V2 S主要諸元(2025)
・ホイールベース:1465mm
・シート高:837mm
・車両重量(燃料を除く):179kg/177.6kg
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブV型2気筒890cc
・最高出力:88kW(120PS)/10750rpm
・最大トルク:93.3N・m(9.5kgm)/8250rpm
・変速機:6段リターン
・燃料タンク容量:15L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=190/55-17
・価格:211万9000円/240万8000円(税込)
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/470729/
コメント
コメントの使い方