レブル1100では、従来、シフトペダルやクラッチレバーのないAT車のようなDCT仕様車が用意されており、現行モデルでも継続販売しています。そして、その仕様を選べば、ライダーは発進から加減速、巡航まで、すべての走行でクラッチ操作だけでなく、シフトペダルの操作も不要。そのぶん、長距離のツーリングでライダーの披露を軽減してくれるといえます。
一方、レブル250は、従来、6速MT車だけの設定だったため、ほとんどの走行シーンでシフトペダルやクラッチレバーの操作が必要でした。それが、新型に設定されたホンダE-クラッチ搭載車を選べば、発進、変速、停止などでクラッチレバーの操作は一切不要となります。もちろん、ホンダE-クラッチの場合、変速時にシフトペダルの操作は必要。でも、最新の電子制御技術より最適なクラッチコントロールを自動制御してくれますから、クラッチレバーの操作ミスも少なく、初心者などであれば6速MT車よりもスムーズに走ることが可能でしょう。また、長距離ツーリングなどでの疲労度も、今まで以上に軽減してくれるようになったといえます。
しかも、ホンダE-クラッチは、電子制御中でもライダーがクラッチレバー操作を行えば、手動によるクラッチコントロールも可能。従来の6速MT車と同じ操作を行いたいライダーのニーズにも対応しているのです。
ちなみに、レブル1100のDCT搭載車でも、左ハンドルにあるスイッチで、シフトのアップ/ダウン操作が可能。こちらは、4輪AT車のパドルシフト的な機能ですが、スポーティなMTシフト操作を行いたいライダーの要求に応える点では同様だといえます。
ともあれ、DCTとE-クラッチでは機構が違うため一概には言えませんが、シフト操作を軽減するという点では、新型のレブル250E-クラッチは、レブル1100DCTの持つメリットにかなり近づいた仕様であるといえることは確かでしょう。
燃費や航続距離では小排気量バイクも良好
このように、レブル250/E-クラッチも、機能面でレブル1100/DCTに近づいた点はあるといえます。ですが、ここまでの比較では、やはり大排気量バイクの方が勝っている点も多いようです。
では、ツーリングでは、やはり小排気量バイクよりも大排気量バイクの方が上なのでしょうか? いえいえ、実は小排気量バイクだって大排気量バイクに勝る点もあるのです。
たとえば、燃費や1回の満タンで走行できる距離。レブル250の燃料タンクは容量11Lなので、容量13Lのレブル1100より小さな燃料タンクを搭載しています。ですが、燃料消費率は、いずれもWMTCモード値で、レブル250/E-クラッチが34.9km/Lなのに対し、レブル1100/DCTは18.6km/Lです。
そのため、1回の満タンで走れる距離は、あくまでスペック上の計算ですが、レブル1100/DCTの241.8kmに対し、レブル250/E-クラッチは383.9kmと、より長く走ることができることになります。
特に、最近は、地方を旅する際に、ガソリンスタンドが少ないエリアも増えていますから、どこで給油するかタイミングも重要。そうした点では、レブル250/E-クラッチの方がレブル1100/DCTよりも安心感は高いといえます。
そして、レブル250/E-クラッチに限らず、小排気量バイクの方が、大排気量バイクと比べると、燃費性能は比較的いい傾向にあります。ツーリング時の燃費面でいえば、250ccなどの小排気量モデルの方が、1000超の大排気量バイクに勝るケースも多いといえるのです。
もちろん、燃費や航続距離は、走行時の天候や路面状況、ライダーの乗り方などで変わるため、一概にはいえません。また、モデルによって違いもあります。たとえば、レブル1100/DCTと同系のエンジンを持つホンダ「CRF1100アフリカツイン」。24Lもの大容量の燃料タンクを搭載する「アドベンチャースポーツES」なら、燃料消費率はWMTCモード値19.6km/Lなので、1回の満タンで470.4kmも走れる計算となります。
つまり、たとえ燃費性能で劣ったとしても、車体が大きな大排気量のツアラーモデルなどなら、大容量の燃料タンクを搭載することで、航続距離も長くなる傾向にあることも間違いないでしょう。
ハヤブサが250ccオフロード車に惨敗!?
ほかにも、モデルや状況によっては、大排気量バイクが、小排気量バイクに負けてしまうシーンもあります。たとえば、筆者がかつて所有していたスズキの2代目「ハヤブサ(正式名称GSX1300Rハヤブサ)」。
ご存じの通り、ハヤブサは、排気量1339cc・水冷4気筒エンジンを搭載し、最高速度300km/hを誇るメガスポーツとよばれるフルカウルモデルです。世界中にファンを持つスズキのロングセラーモデルで、現行の3代目が2021年に発売されています。
2代目の装備重量は266kgで、駐車場などでの取り回しでは車体がかなり重い印象でした。でも、乗ってしまえば走りは軽快で、最高出力197PSの高いスペックを活かし、高速道路の巡航などでは余裕の走りと抜群の直線安定性を発揮。また、カウリングの防風性能も高かったため、高速道路などでライダーの体に受ける風の量も少なく、ロングツーリング時の快適性はかなり高いバイクでした。
ところが、春先など、かなり強い突風が吹くときに高速道路を走行したときは、ハヤブサの車体があおられて怖い思いをした経験もあります。とくに、関東のライダーなどにはおなじみの東京湾アクアラインは最悪。海ほたるPAと木更津を結ぶ海の上にかけられた橋(アクアブリッジ)では、風速10m/秒を超える強風が吹くときもあり、その際に海から押し寄せる横風はかなり強烈で、通行止めになることさえあります。
筆者は、一度、そんな強風時にハヤブサを走らせたところ、いきなりの台風級(と感じるほど強烈な)横風にあおられ、片側2車線の隣の車線まで飛ばされそうになったことがあります。そんな時、橫の車線にクルマが走っていたら……衝突して大事故になったかもしれません。
その後は、あまりの恐怖からスピードを50km/h程度に落とし、走行車線を超ゆっくりと走行。心理的にはもちろん、飛ばされまいとハンドルに力を入れすぎたことで肉体的にもヘトヘトで、早く高速を降りたいと半ベソになりながら走行したことを覚えています。
そんな時、追い越し車線の後方から、(モデルは忘れましたが)250cc・単気筒のオフロードバイクが接近。なにくわぬ顔(のように見えた)で、80km/h近い速度で筆者のハヤブサを抜いていったのです。筆者の愛車と比べ、絶対的なパワーで劣り、車両重量も軽いオフロードバイクに、なぜあれほどまで楽々と抜かれたのか? 通常時にはありえないことです。
あくまで私見ですが、おそらく理由は、2代目ハヤブサは全長2190mm、全高1170mmという大柄な車体と、フルカウル仕様だったことが禍(わざわい)したのではないでしょうか。 特に、ハヤブサのカウリングは、現行モデルも同様ですが、最高速度を高めるための空力特性を考慮した、文字通りのフルカバード仕様。そのため、前から吹く走行風にはめっぽう強く、前傾姿勢でヘルメットまでウインドスクリーンの中に潜れば、走行風はほとんど体に当たりません。
ところが、サイドカウルなどに風が抜ける隙間はまるでなく、大柄なバイクだけに、横風を受ける面積も大きめだといえます。一方、250ccのオフロードバイクは、橫からみたときに隙間も多く、全高はあるけれど、風を受ける面積自体は小さいといえます。そのぶん、ハヤブサの方が横風の影響を受けやすいのではないかと考えられます。
フルカウルモデルが横風に弱いという話は、1000ccスーパースポーツなどのオーナーからもたまに聞くので、筆者の推測もあながち間違いではないかもしれません。そう考えると、同じ大排気量バイクでも、ネイキッドやアメリカンなどと比べ、フルカウル仕様のスポーツバイクは橫風には弱い傾向にあることがうかがえます。
のんびりバイク旅なら小排気量バイクも楽しい
加えて、大排気量バイクは、ツーリング先の駐車場へバイクを停める際、駐車スペースに気を遣う場合もあります。これも、筆者がハヤブサに乗っていた時の話ですが、たとえば、駐車スペースの奧が下りになっている場合。そこに、不用意にフロントから車体を入れてしまうと、駐車場を出る際にかなり苦労するケースもあったのです。
とくに、奧までの下り勾配がきついと、車体の左脇に立ち、サイドスタンドを戻した後、ハンドルを引きながら駐車スペースをバックするときに、装備重量が266kgもあるため、かなり力が必要でした。「ハヤブサにもバックギアが欲しい!」と思った事も一度だけではありませんでした。
その点、車体が軽い250ccなどの小排気量バイクなら、あまり駐車する場所に気を遣うこともないでしょう。もちろん、これは、ライダーの体格などによっても違いますが、街中はもちろん、ツーリング先でも気軽に乗れるという点では、小排気量バイクの方が上ではないでしょうか。
ほかにも、よく耳にするのが、小排気量バイクは大排気量バイクと比べスピードが遅いぶん、ツーリング時に「周りの景色をのんびり楽しめる」という話。また、大排気量バイクなら、シューンと行き過ぎてしまうような隠れた絶景スポットなどを、ゆっくり走れる小排気量バイクなら発見しやすいという声もよく聞きます。








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