ホンダHRC、横綱相撲で8耐4連覇! ヤマハワークス及ばず2位、ヨシムラが3位表彰台へ

2年連続3位表彰台で、世界選手権レギュラー勢トップの成績を収めたヨシムラSERT MOTUL。写真は正ライダーに抜擢された渥美心。最終スティントは体力的に厳しく、リンフットにバイクを託した。



一昨年の世界耐久選手権王者であるYARTは2度の転倒で戦線離脱。それでもランキング2位のBMWモトラッドに1ポイント差でランキングトップをキープ。



BMWワークススペックのエンジンを搭載したM1000RRをライディングしたオートレース宇部の浦本修充。同チームは世界耐久の最終戦、ボルドール24時間参戦のため、全日本ロードレ-スを2戦欠場する。



シルバン・ギュントーリの代役を務めたBMWモトラッドのマイケル・ファン・デル・マーク。ホンダ、ヤマハに続く3メーカー目のマシンでの鈴鹿8耐参戦だった。



序盤からトップグループに食らいつき、終わってみれば7位に食い込んだチームATJ withドコモビジネス。写真の岩田の第1スティントの走りはお見事!



世界選手権レギュラーチームのうち、3番目のハイポイントを持ち帰ったカワサキWebikeトリックスター。シリーズ3戦を終えてトップまで5ポイント差のランキング3位に付けている。

 
 


ラスト2時間、セーフティカー介入で事態急変!

レースは終盤を迎え、#30 HRCのリードは揺るがず、#21 ヤマハが懸命に追う展開。レース後半になると同一周回を走るのはこの2チームだけ。それでも、5時間を経過するころには両車の差は1分30秒以上と開き、このままHRCの独走で終わるかと思われ始めた6時間過ぎ、ヘアピンで転倒した車両のダメージが大きく、車両撤去のレッカー車が入るためにコースに2台のセーフティカーが介入します。

ハチタイの歴史では、1→2位が違うセーフティカーの後方についてしまい、2台の差が開いてしまって勝負が決するケースが多かったものの、今回は1→2位が同じセーフティカーの後方に追従。その間は追い越しができないものの、すべてのマシン間隔が詰まるため、#30 HRCと#21 ヤマハの間には5~6台の車両があるだけの状態に
。1分30秒もの差が一気に3秒ほどに縮まることになりました。



1回目のセーフティカーが介入したシーン。同じセーフティカーの後方に付いた#30 HRCと#21ヤマハが同一画面に収まる。約1分30秒の差が、一気に3秒にまで縮んだ一瞬だった。



ここ一番で全日本チャンピオンのスピードを発揮できなかったヤマハレーシングの中須賀克行。チームメイトのミラー、ロカテッリから一歩下がって我慢のパートを請け負った。

セーフティカーは約17分ほどコース上に留まり
、レースはリスタート。この時のマッチアップは#30 高橋と#21 中須賀で、リスタート後のポジション争いも期待されましたが、セーフティカー介入の時点で#30 高橋はザルコから交代したばかり。つまりは体力を回復した後でタイヤもフレッシュな状態なのに対し、#21 中須賀はスティントの終盤で、まだ気温も下がり切らない17時台を30分ほど走行した状態。
タイヤも体力も消耗していたため、高橋と中須賀の差は縮まらないまま、中須賀はルーティーンのピットインを済ませます。

そして、変わったアンドレア・
ロカテッリが今レースのファステストラップを記録して懸命に高橋を追うものの、その差は1分10秒ほど。この差がなかなか縮まりません。

しかし、このセーフティカー介入から約1時間後に、再び転倒車が出て2回目のセーフティカーが介入。今度は#30 高橋と#21 ロカテッリの間にセーフティカーが入り、両車の間隔がさらに広がると思われたものの、この時、ちょうどピットタイミングだった#30 高橋がピットインし、その間に#21 ロカテッリのいるセーフティカーがピット前を通過。給油と
タイヤ交換を済ませた#30 ヨハン・ザルコは、このセーフティカー通過までコースインできないため、ロカテッリのいるセーフティカーに追従する車列の最後尾でコースイン。つまり、ヤマハ逆転です!

1分30秒ほどあった#30 HRCと#21 ヤマハの差は、逆にヤマハがHRCを約10秒リード! レース開始から7時間20分を経過、198周目にしてついにヤマハがトップに立ったのです。
HRCのザルコをリードするヤマハのロカテッリ。しかし197周目に7回目、最後のピットストップを済ませた#30号車に対し、#21号車は8回ピット策を取っていたため、202周目に8回目、最後のピットインをする必要があり、ここで再逆転! #30 HRCが203周目に再びトップを奪取し、そのまま8時間を走り切りました。

セーフティカーが介入したこともあり、ペースが落ちて好燃費をマークした#30 HRCは
、高橋の最後のスティント時になんと30周を周回! 最後の最後に、この超好燃費を達成した#30 HRCが#21 ヤマハを35秒ほど引き離して優勝を決めました。



3人ライダー制が当たり前となった現代の8耐を、驚くべきペース,で2人で走り切ったザルコと高橋。レース後の高橋はさすがに「疲れた、休みたい」を連発。

これでホンダ陣営はハチタイ4連覇で31回目の優勝を達成。ライダー選定でアクシデントが重なり、ホンダらしからぬ層の薄さを露呈してしまったものの、高橋とザルコが疲労困憊のなか、薄氷の勝利を掴んだといったところでしょうか。

#21 ヤマハは6年ぶりの参戦で2位表彰台に復帰。全日本ロードレース、MotoGP、ワールドスーパーバイクからライダーが参戦するという贅沢なチームでしたが、結果的にホンダCBRの燃費に敗れました。

3位には#73 ハルクプロとの終盤の激しいポジション争いを制した#1ヨシムラが入りました。ヨシムラは世界選手権レギュラーチームではトップでフィニッシュ。最終戦・ボルドール24時間耐久で2年連続チャンピオンを狙います。世界選手権ランキングは
①YART ②BMWモトラッド ③KWT ④ヨシムラSERT MOTUL ⑤ERCエンデュランス ⑥F.
C.C. TSRホンダフランスという順位で、
最終戦となるボルドール24時間耐久は9月20日に開催されます。



ホンダ→ヤマハ→スズキの順での表彰台。ヨシムラだけが世界選手権レギュラーのため、最終戦
での逆転チャンピオンも見えてきた。

上位3チームのライダーコメント


優勝 #30 ホンダHRC

高橋 巧:とにかく無事にレースを終えられてよかった。急遽2人体制でのレースとなり、このコンディションでは相当辛い、不安しかない状態でしたが、まずはチームのみんなとパートナーのザルコに感謝したい。ただただ疲れました。最後はザルコも厳しそうだったけど本当に頑張ってくれた。応援してくれた皆さんの声援も力になりました。

ヨハン・ザルコ:レースコントロールはうまくいったけど、休憩時間でリカバリーが難しく、思ったように回復できなかったね。最後にセーフティカーが入ったことで、タクミが走行時間を延ばしてくれて、僕も回復ができてよかった。夜の走行では2位との差を図りながら、素晴らしい景色の中を走れた。タクミは暑さに強い選手で辛い表情も見せずにチームを引っ張ってくれた。タクミも僕もすごく疲れている。来年は2人体制では走りたくないね(笑)」


2位 #21 ヤマハレーシングチーム

中須賀克行:2
位という結果はライダーもチームスタッフも、みんな自分の仕事を全うできた結果です。やれるだけやって、それでライバルに敗れたという事実をしっかり受け止めなきゃいけないですね。とはいえ6年ぶりの8耐でここまでやれた。ライバルとの差、自分たちの強み、改善点もはっきりしたのは収穫でした。自分がもう少しペースを作れたらまた違う結果だったかも。今回はペアのふたりに表彰台に連れてきてもらった感じです。

ジャック・ミラー:もちろん勝ちたかったけど、ホンダは強かった。でも2位は悪くない結果だし、ナカスガさん、ロカテッリにとってもいい日だったんじゃないか。めちゃくちゃ暑くて難しいコンディションだったけど、僕たちはミスなくレースを戦えた。それでも2位だったから、もっと強くならないとね。ヤマハの一員として鈴鹿8耐に参加できたのは、
本当に素晴らしい経験になった。8耐は2回目だけれど、表彰台に立つことができた。あの景色はナカスガさんに聞いていたとおり、素晴らしいね! 本当はもっとデカいトロフィーが欲しかったんだけどね。

アンドレア・ロカテッリ:とにかく暑くて大変なレースだったけど、僕もジャックもナカスガさんもベストを尽くしたよ。ヤマハファミリーの一員として表彰台に立てたことは本当に誇りに思う。2位になれたしコースレコードも更新できたから、少なくとも1年間は僕の名前は残るってことだね(笑)。鈴鹿8耐はすべてが最高だった。たくさんのスタッフのサポートがあって、日本のファンのみんなも素晴らしいし、コースだって素晴らしい。うまく言葉で表現できないほど、人生のベストメモリーになったね。また鈴鹿8耐に参加したいね。この2位から学んだことを生かしてステップアップして、優勝したい」


3
位 #1ヨシムラSERT MOTUL

渥美 心:ホンダとヤマハの2チームに、おめでとうございます。この2つのワークスチームに勝つために、地元の僕がチームを引っ張っていかなきゃ、と思ってたんだけど、なかなか難しくて宿題の残るレースだったと思います。序盤に転倒はあったけど、挽回できると思っていた。僕の2回目の走行で体に痛みが出てしまったので、最後の走行を僕が行く可能性もあったんだけど、ダンに任せてしまったのが悔しかったですね。世界選手権レギュラーでトップでゴールできたのは本当に重要なこと。最終戦ボルドールで勝って、連覇を目指したいです。

グレッグ・ブラック:長いレースだったね。僕らは3位だったけれど、優勝したに等しい気分だ。今シーズンはル・マン、スパと厳しかったけど、鈴鹿で表彰台に乗れたのは本当に良かった。スタートライダーだったんだけど、僕の1回目の走行は本当に厳しかったね。ダンの転倒はあったけど、大きなタイムロスもなかったし、さすがダン、そしてチームも慌てずにペースも取り戻せた。#73(ハルクプロ)との争いは大変だったけど、楽しかったよ。うちのマシンは燃費もいいし、スピードもある。MotoGPもWSBKのライダーとも一緒に走ったけど、これは8時間耐久、ボルドールは24時間だから、次はそっちにも来てほしいね。

ダン・リンフット:
辛かったけど素晴らしいレースだった。MotoGP、WSBKライダーと走れて、ほんとうにいい経験だった。僕のスティントで転倒してしまったけど、すぐに再スタートする練習はいつもやってるからね。僕はイギリスの北のほうが地元で、こんなに暑いのは経験がないよ。去年から2回連続の3位だけれど、来年もまたみんなで走りたい。最後は4位でマシンを受け取って3位になれたのはよかったね。

2025年鈴鹿8時間耐久レース(EWCクラス)最終結果

順位 ゼッケン チーム名 ライダー 周回数
1 #30 ホンダHRC 高橋巧/ヨハン・ザルコ 217
2 #21 ヤマハレーシングチーム 中須賀克行/J.ミラー/A.ロカテッリ 217
3 #1 ヨシムラSERT MOTUL 渥美心/G.ブラック/D.リンフット 216
4 #73 SDGチームハルクプロホンダ 名越哲平/國井勇輝/阿部恵斗 216
5 #37 BMWモトラッド ワールドエンデュランスチーム M.ライターバーガー/M.ファン デル マーク/S.オデンダール 215
6 #76 オートレース宇部レーシングチーム 浦本修充/L.バズ/D.トッド 214
7 #40 チームATJ withドコモビジネス 岩田悟/鈴木光来/國峰啄磨 214
8 #11 カワサキWebikeトリックスター R.ラモス/M.ディ メリオ/G.ルブラン 213
9 #99 Elf マークVDS レーシングチーム/KM99 R.ド プニエ/F.マリノ/J.グアルノーニ 213
10 #88 ホンダアジアドリームレーシングwith Astemo N.アティラットプワパット/M.ザクワン ザイディ/A.ハキーム アヌア 213

SSTクラスはチームエトワールが優勝



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