1990年台に巻き起こったアメリカンバイクブームは、ネイキッドブームと並行して当時のバイク業界を大きく盛り上げた。国産で初めて横置きのV型エンジンモデルを発売したヤマハは、本格的なアメリカンモデル「ドラッグスター400」を1996年に発売。その派生モデルとなるのが今回紹介する「ドラッグスター クラシック400」だ。
横置きエンジンで進化した国産アメリカン
国産のいわゆる「アメリカン」と呼ばれるカテゴリーのバイクは、現在「ジャメリカン」などと呼ばれている既存のエンジンとフレームを流用したモデルから始まった。そんな中、アメリカのメーカー製という意味において、本物のアメリカンバイクであるハーレー・ダビッドソンと同じ横置きのVツインエンジン搭載モデルを日本のメーカーとして初めて発売したのはヤマハであった。
1981年に発売された「XV750スペシャル」は本格的な日本メーカー製アメリカンバイクの始祖と言え、75°空冷Vツインエンジンをモノコック構造のスチール製プレスバックボーンフレームに搭載。メンテナンスフリーの手軽さを求めるアメリカ人ユーザーを意識し、シャフトドライブを採用していたのも特徴的だ。1983年には400ccクラスに横置き70°空冷Vツインエンジンを搭載し、よりアメリカンテイストを強めた「XV400スペシャル」を発売。翌1984年にはティアドロップタンクや段付きシートなどを採用し、より本格的なアメリカンスタイルを持つ「XV750ビラーゴ」が発売された。ホンダも750ccの45°V型2気筒エンジンを搭載した「NV750カスタム」を1982年に発売、1986年にはよりアメリカンテイストを強めた「シャドウ」を発売した。
400ccクラスには1987年に、XV400スペシャル系のエンジンを使いつつ、よりアメリカンテイストを強めた「XV400ビラーゴ」を投入した。XV400ビラーゴはXV400スペシャルのモノクロスサスからツインショックへと変更した新しいフレームデザインを採用、ホイールもスポークタイプとされ、スリムでスポーティなヤマハらしいアメリカンデザインを誕生させた。
1988年、それまでアメリカンというジャンルではヤマハに一歩先を行かれていた感のあるホンダから400ccと600ccの2本立てとなる「スティード」が発売される。リアサスペンションを外から見えない位置に配置し、ハーレーのソフテイルと同様にリジッドフレーム風に見えるフレームに新開発の水冷Vツインエンジンを搭載。発売当初はレーサーレプリカブームだったこともあり大きく注目されることは無かったのだが、1990年代にアメリカンバイクブームを巻き起こすことになった。国産アメリカンの先駆者たるビラーゴであったが、ここでスティードに主役の座を奪われることとなった。ちなみにカワサキは1990年に並列2気筒エンジンを搭載した「バルカン400」を、スズキは1994年に「イントルーダー400」を発売している。
スティードの販売は好調を続け、1995年にはカワサキのバルカン400がVツインエンジン+リジッド風フレームに、スズキのイントルーダー400はフロントに倒立フォークを備えた「デスペラード400」と各社本格的なアメリカンバイクの投入を開始。ライバルがニューモデルを投入してくる中、ビラーゴのマイナーチェンジで凌いでいたヤマハは1996年に「ドラッグスター400」を市場に投入する。ドラッグスター400はビラーゴのエンジンをベースとしつつ大幅に改良したパワーユニットを、リジッド風のフレームに搭載。ボリューム感のあるデザインのフューエルタンクやハーレーで言うところのボブフェンダー、低く抑えられたシート高などでロー&ロングな本格的なアメリカンスタイルに仕立てられていた。また、ヤマハ製アメリカンの伝統とも言えるシャフトドライブが継続して採用されていたのも、このバイクのポイントと言えるだろう。
各社で揃ったと思われた400ccクラスのアメリカンラインナップだが、1996年にカワサキが前後16インチ+ディープフェンダーを装備し、クラシカルなアメリカンスタイルを再現した「バルカン クラシック」を投入。1997年にはホンダもリアにツインショックを採用し、フロントのホイール径を17インチにダウンした「シャドウ400」を発売した。対するヤマハもフロントに16インチサイズのホイールを採用し、ディープフェンダーや大径のヘッドライトなどを装備した「ドラッグスター クラシック400」を投入し、アメリカンバイクブームはますます加熱していった。
迫力のあるクラシックテイストが「ドラッグスター クラシック400」の魅力
「ドラッグスター クラシック400」は、フロントに130/90-16というファットなタイヤを履き、前後にタイヤを大きく覆うディープフェンダーを備えることでクラシカルなアメリカンスタイルを再現している。ワイドなハンドルバーやタンクオンメーター、2001年以降にはフットボードも装備され、より本格的な仕上がりとすることで、それまでのチョッパー系のデザインとは一線を画している。オリジナルのアメリカンスタイルとすることでより幅広いユーザーに訴求し、新たなカスタムスタイルのベースとなった。
パワーユニットは空冷SOHC70°V型2気筒399ccで、ボア×ストロークが68.0×55.0mmとXV400ビラーゴと同じだが、各部は大幅にリファインされている。燃料供給は当初キャブレターを採用していたが、排出ガス規制に対応するために2010年モデルからフューエルインジェクションに改められている。キャブレター仕様の初期モデルのスペックは、最高出力33PS/7500rpm、最大トルク3.3kgm/6000rpmとなる。駆動方式もXV400スペシャル時代から続くシャフトドライブ方式で、ライバルモデルに差をつけるポイントになっている。
























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