鈴鹿8耐でスズキが発表した新型GSX-R1000/R。8年ぶりのモデルチェンジとなった2026モデルの概要はすでにレポート済みだが、ここでは会場で見聞きした情報なども含め、より細かく解説していきたい。まずはモデルチェンジの狙いと外観関連、そしてエンジン関係について。
黄色はハーベー、白赤はラッキーストライク?!
まずは外観について。大きな特徴はフロントカウルに装着されたウイングレットだろう。これは中空ドライカーボン材で成形された日本製で、2024年の8耐に参戦したチームスズキCNチャレンジのGSX-Rと基本設計を共有するもの。ハンドリングを重くせずダウンフォースを発生させる効果があるという。ちなみにアクセサリー扱いとなっており、8耐のスズキブースに展示された欧州仕様には装着/非装着の両仕様が存在していた。
それ以外は基本的に従来型を踏襲するが、マフラーの変更(後述)に伴ってアンダーカウルは形状を変更。細かい点ではナンバープレート灯がやや丸みを帯びた形状となり、左右のエンジンカバーはブラック→グレーとなり、クラッチ側はメンテナンスホールをブラックとしたツートーン仕上げとなった。また、タンデムステップも変更されているという。
縦二眼のヘッドライトやラムエアダクト上のLEDポジション灯は不変だ。
注目は3色が用意されたカラバリで、資料によれば「過去の有名なGSX-Rのカラーリングのスピリットを捉え、ファンの心を揺さぶることを目指した」とのこと。白×青はスズキワークスカラーとして、金の差し色を使った白×赤はラッキーストライク、同じく差し色に青を用いるイエローはハーベーか?! あくまでも編集部の見解だが、そうとしか考えられない心揺さぶるカラーだ(笑)。
ちなみに3色ともカウルサイドにGSX-R生誕40周年を記念した「40th ANNIVERSARY」のロゴが入る。ということは…このカラーは2026モデルだけの1年限定。2027モデルでカラバリが変更されるのは早くも決定事項?!

このカラーにしか見えないッ!2サイクルレーサーのイメージが強いが(写真も1994年式のRGV250ガンマ)、1990年代前半にはスズキファクトリーのGSX-R750がラッキーストライクカラーで8耐や全日本を走っていたので、モチーフとして全然アリ!

ハーベー(HB)しかないでしょ! 写真は1984年式のRG250ガンマだが、そもそもハーベーは初代GSX-R750の元ネタである耐久レーサー・GS1000Rなどを彩ったスポンサーカラーなので、新型GSX-Rとの繋がりもオッケー!
ユーロ5を飛ばして「+」に適合
順番が前後したものの、今回のモデルチェンジの主目的はレースチューンに耐えられるエンジンスペックの見直しと、世界各国で再び販売するためのユーロ5+排ガス規制への適合にある。加えて「GSX-R」というブランド生誕40周年の記念車(※海外では1985年のGSX-R750が初出)という役割も担っている。
ちなみに従来型GSX-R1000はユーロ4仕様で、2021年(欧州での継続生産車の場合)から課せられたユーロ5規制には適合しておらず、これを理由に欧州や日本では販売を終了している(規制が異なる北米は継続)。つまり新型はユーロ5をスキップしてユーロ5+に適合したわけで、このようなパターンはちょっと珍しい。
適合のポイントは刷新された排気系で、細く、長くなったチタンサイレンサーは性能をキープしつつ容量を8.3L→5.5Lへと削減。加えてユーロ5+では触媒の劣化検知機能がマストとなるため、新型では触媒の前と後ろにO2センサーが追加されている。1-4番、2-3番エキパイ間に設けられていた可変バルブ「SET-A(スズキエキゾーストチューニング-アルファ)」は消滅した。
ちなみに従来型では、このSET-Aと可変バルタイのSR-VVT、フィンガーフォロワーを持つバルブトレイン、トップフィードインジェクターのS-TFIを束ねて「スズキブロードパワーシステム」と称していたが、この名称は新型では使われなくなった(SET-A以外の3つは継続採用)。
規制対応では2本あるインジェクターのうち、スロットルボディ側インジェクターの噴霧穴を10→8個へと変更(エアクリーナーボックス側はそのまま)し、噴霧パターンを改良することでも規制対応に貢献しているという。また、スロットルはボア径を46→48mmへと拡大されている。

従来型は1/4番スロットルにファンネルを2つ、隙間を空けて重ねたデュアルステージインテーク(S-DSI)を採用し、可変ファンネル同等の効果を得ていたが、新型はこれをシングル化。代わりにファンネルの形状変更で高回転域の出力向上に貢献させている。

クラッチのスリッパー機構と軽い操作力を両立させたスズキクラッチアシストシステム(SCAS。左)や、12個の鋼球に働く遠心力でカムスプロケットを回転させる可変バルブタイミング機構・SR-VVT(右)は継続採用される。
エンジン内部を徹底見直し。圧縮比は国産最高!
新型GSX-R1000Rでは、999.8ccの排気量や76mm×55.1mmのボア×ストロークといった基本設計は引き継ぎつつ、エンジンパーツを全面的に刷新している。これはハヤブサやDR-Z4系でも用いられた、近代スズキ車における定番的なエンジン改良方法だ。
変更点を大物から挙げると、まずシリンダーヘッドはウォータージャケットや吸排気ポート形状が見直された新作。さらにクランクシャフトはジャーナルの厚みを35→37mmへと増やすことで、より高負荷に対応できるよう再設計されており、これに対応してクランクケースも設計を改めている。
鍛造ピストンはトップ形状やその下部のリブ形状などを変更し、3gを軽量化。ピストンピンサークリップは耐久性を高めた新素材となった。浸炭コンロッドもレースベース車としての信頼性を高めるため、製造時の公差を厳格に管理している。
さらにカムシャフトは出力を維持しながら規制に適合させるため、リフト量はキープしつつオーバーラップを縮小。併せてフィンガーフォロワー形状も最適化され、排気バルブ径も24→25mmへと1mm拡大されている。カムチェーンは幅広化され、レースで低粘度オイルを使用した際のフリクションを低減しているという。
これらの変更の結果、最高出力/トルクは従来型の202ps/13200rpm・12.0kg-m/10800rpmから、新型では195ps/13200rpm・11.2kg-m/11000rpmへとややダウン(共に欧州仕様のスペック)。規制に適合しつつ、ロスは最小限に抑えたと捉えるべきだろう。
注目はシリンダーヘッドとピストンの変更で、従来型では13.2だった圧縮比を13.8まで高めていることだ。特にライバル車と比較すると、新型GSX-Rがかなりのハイコンプなことが分かる。レースフィールドではこの高圧縮比が効いてくるのかもしれない。
現行1000ccスーパースポーツの圧縮比一覧
| 新型スズキ GSX-R1000/R | 13.8 |
| ホンダ CBR1000RR-R | 13.6 |
| ヤマハ YZF-R1 | 13.0 |
| カワサキ ZX-10R | 13.0 |
| BMW S1000RR | 13.3(M1000RRは14.5) |
| ドゥカティ パニガーレV4/S | 14.0 |
GSX-R1000/R・新旧諸元比較(欧州仕様)
| 新型GSX-R1000R | 従来型GSX-R1000R | |
| 全長 | 2075mm | 2075mm |
| 全幅 | 705mm | 705mm |
| 全高 | 1145mm | 1145mm |
| 軸距 | 1420mm | 1420mm |
| シート高 | 825mm | 825mm |
| 装備重量 | 203kg | 203kg |
| エンジン形式 | 水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ | 水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ |
| 内径×行程 | 76.0mm×55.1mm | 76.0mm×55.1mm |
| 排気量 | 999.8cc | 999.8cc |
| 圧縮比 | 13.8:1 | 13.2:1 |
| 最高出力 | 195ps/13200rpm | 202ps/13200rpm |
| 最大トルク | 11.2kg-m/11000rpm | 12.0kg-m/10800rpm |
| 変速機 | 6段リターン | 6段リターン |
| キャスター | 23°20′ | 23°20′ |
| トレール | 95mm | 95mm |
| ブレーキ前・後 | Wディスク・ディスク | Wディスク・ディスク |
| タイヤ前・後 | 120/70ZR17・190/55ZR17 | 120/70ZR17・190/55ZR17 |
| タンク容量 | 16L | 16L |
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/480970/




















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