猛暑酷暑でオーバーヒートが発生。その原因は、サーモスタットにある?

猛暑酷暑でオーバーヒートが発生。その原因は、サーモスタットにある?

水冷エンジンは「水温管理」が何よりも重要だ。夏場はしっかり冷やして、冬場は冷やし過ぎないように注意しなくてはいけない。そんな水温管理を行ううえで重要な部品といえるのが、ラジエターと水温センサーと冷却ファン、そして、冷却水路回路内に組み込まれる「サーモスタット」である。ここでは、通称サーモと呼ばれる部品の作動状況を、目視で確認してみよう。

文/たぐちかつみ

沸騰したお湯で開閉状況を目視確認できる  



鍋に入れた水をガスコンロで沸かしてサーモスタットを沈めることで、サーモ弁の開閉を目視確認することができる。常温水のときにはスプリングの張力で作動弁は閉じているが、設定温度に達すると内部媒体(ワックス)の収縮で弁が開閉し、冷却水が行き来する。



水温計で確認しながら鍋の水を加熱していくと、設定温度前後で弁が開き始める様子を確認することができた。開閉弁の作動と同時に、開放量(弁のリフト量)も重要なので、しっかり確認しよう。



スプリング内部の軸内にワックスが密封されていて、温度変化によってボリュームが増減する。常温時にはスプリングの張力が勝り弁が閉じているため、冷却水がサーモスタット弁を通過できない。

手元にある道具だけでも確認は可能。目の前で目視点検してみよう 



サーモスタット本体内には水温の変化によって収縮するワックスが密閉されている。メーカーや機種によって設定温度は異なるが、温度域に達すると弁が開き冷却水が通過する。一般的に開弁温度は80~85℃で、ここでテストしているヤマハV-MAX用は95℃で全開になり、リフト量は8mm以上だとサービスマニュアルに記載されている。



水温上昇を確認しながらお湯を沸かしていき、85℃を超えて90℃になろうとしてもサーモ弁が開かない時には、サーモスタット本体の故障と考え新品部品と交換しよう。夏場にオーバーヒートが顕著なときは、サーモを冷却経路から取り外して状況確認しても良い。

分解手順を考慮して、効率良く作業進行していこう 



この場で開閉テストしているヤマハV-MAXのサーモスタットハウジングは、クランクケースにセットされている。まずはハウジングAssyとして取り外してから分解することで、サーモスタットは簡単に取り外せる。



クランクケースに組み込まれていたサーモハウジングを見る限り、目立った凸凹腐食は無かった。過去にしっかりロングライフクーラント(LLC)が利用されてきた証拠ともいえるだろう。



長期利用によってアタリ痕が付いているガスケットは新品部品へ必ず交換しよう。外周フランジの一箇所にリベットのような可動栓があるが、これは冷却通路内のエアーが通過する弁である。



作動確認後のサーモスタットやサーモハウジングは、ガスケット部やホースジョイント部など、汚れが堆積していた。洗剤を混ぜたバケツの水に部品を沈め、真鍮ブラシなどで擦って、堆積汚れを除去した。

新品ガスケットへ交換する際には形状を再確認しよう 



組み込み前のガスケットは、フランジ面の当たりや寸法、エアー通過弁の位置などが一致していることを必ず確認しよう。サーモスタットが傾いて取り付けられるモデルの場合は、エアー弁が上に向くように復元しよう。



ハウジングカバーへOリングをセットする際には、リング溝やフタの座面付近に溜まったスラッジを徹底除去してからOリングをセットしよう。ラバーグリスを併用しよう。

POINT
 

 

  • ポイント1・夏場の水温がオーバーヒート気味の時には、サーモスタットの作動状況を疑おう 
  • ポイント2・鍋に水道水を温めて温度計で確認することで、サーモスタットの開閉状況を目視できる 
  • ポイント3・サーモスタットを取り外したときには、ハウジング内部やキャップ周辺の汚れをしっかり除去しよう 

 

 冷却水管理が重要な水冷エンジンモデル。冷却経路の途中に組み込まれるサーモスタットは、その機能を理解し、分解したタイミングでは、作動確認を実施するように心掛けよう。特に、オーバーヒートのような症状が出る時には、尚更注目したい。冷却水の温度を適正に保つ働きをするのがサーモスタットで、エンジン始動直後は、シリンダーヘッドやシリンダー周辺の冷却水温度の高まりが、当然ながら早い。ある一定温度に達するとサーモスタットが徐々に開き始め(設定温度によって異なるが80~85℃前後で開き始める部品が多く、95℃あたりで全開になる設定仕様が多い)、ラジエター内の冷却水も含めて、冷却水温が暖機とともに徐々に高まっていく。さらに高温になると、今度はラジエターの冷却ファンが回り、強制的にラジエターコアへ空気を導き冷やす働きをする。

 レーシングマシンの場合は、渋滞など無く走り続けるため、走行風によってラジエターコアが常に冷やされ、冷却水温度がバランスする設定でラジエター容量が設計されている。冬場のオーバークールを防ぐ策としては、ラジエターコアにガムテープを貼って、冷却面積を減らすように調整するが、そんな様子を見たことがある者もいるはずだ。

 一方で、サーモスタットの機能が低下して、バルブが開閉しなかったり、バルブが開いたとしても「全開にならないケース」も時にはある。それが原因で、オーバーヒートを起こしてしまうことがあるので要注意だ。水温センサーが反応し、水温計の指針が高く振れればオーバーヒートに気が付くが、水温センサーが故障していると、オーバーヒートのまま走行してしまい、結果的にはヘッドガスケットが吹き抜けてしまうケースもある。いずれにしても水冷エンジンは「冷却水管理が極めて重要」なので、定期的な冷却水交換は必須だと考えるべきである。

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/482752/

猛暑酷暑でオーバーヒートが発生。その原因は、サーモスタットにある?【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/482752/482754/

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