BMW「R 1300 R」「R 1300 RS」最速試乗! スポーツに特化した2台の新世代ボクサーを体感してきた【元バイク販売店営業インプレ】

BMW「R 1300 R」「R 1300 RS」最速試乗! スポーツに特化した2台の新世代ボクサーを体感してきた【元バイク販売店営業インプレ】

 9月6日(土)~9月7日(日)の二日間に渡って長野県白馬で行われた「BMW MOTORRAD DAYS JAPAN 2025」。20周年という記念すべきイヤーとなった同イベントは大盛況の中で幕を閉じたが、その開催前日にメディア向けとして一足先にBMWの最新モデル「R 1300 R」「R 1300 RS」の試乗会が行われていた。この2台を乗り比べてみたので、その感想をお伝えしていこう。

 
文/瀧村 和也
 

ユーロ5+をクリアし、50ccアップで馬力とトルクが向上した新たなる2台の“R”シリーズ



「R1300GS」譲りの空水冷ボクサーを採用し、フレームは完全新設計となった2台の「R」シリーズ

 今回発表された「R 1300 R」「R 1300 RS」は、“R”の名からも分かるように「R 1250 R」「R 1250 RS」の後継機となる。エンジンは「R 1300 GS」譲りの空水冷ボクサーエンジンを搭載し、最高出力145ps、最大トルクは6500rpmで149N・mを発揮する。

 これは1250時代で最大出力が約9ps、最大トルク6250rpmで143N・mだったことから分かるように、明確にハイパワー化を果たしたということに。もちろん2025年以降に販売されるモデルに義務付けられているEuro5+(ユーロプラスファイブ)にも対応した。



R 1300 R



R 1300 R



R 1300 R



R 1300 RS



R 1300 RS



R 1300 RS

 新設計のスチール製メインフレームとアルミ製フレームを併せ持ち、フロントサスペンションにはSHOWA製倒立フォークを、リアサスペンションにはBMW Motorrad EVO-パラレバー、アルミキャストシングルスイングアームを採用。駆動方式は従来通りカルダンシャフトを携え、フロントブレーキキャリパーは4ピストンラジアルキャリパーとなる。



「R 1300 R」のフロントキャリパー。軽量化されたラジアルマウント4ポッドで、「RS」にも同様の装備が採用される



「RS」のカルダンシャフト。「R」も同様の仕様だ



「R」「RS」双方に採用されたデュアル仕様のサイレンサー



1300cc空水冷2気筒4ストロークボクサーエンジンを搭載。7750rpmで145psを発揮する

 ダイナミックブレーキコントロール、DTC(ダイナミックトラクションコントロール)やDCC(ダイナミッククルーズコントロール)などを標準装備。またツーリング仕様のオプションではDSA(ダイナミックサスペンションアジャストメント)やASA(オートメイテッドシフトアシスタント)が選択できる。特にこのDSAは世界初となる“可変スプリングレートサスペンション”で、疑似的にではあるが電子的にバネレートを変更できる機能だ。ライディングアシストにはアクティブクルーズコントロール、前方衝突警告、および車線変更警告機能を搭載。安全性にも抜かりはない。

 2台とも本格的なスポーツ走行を可能とするモデルながら、ツーリングユースも抜け目なく網羅。しかしエンジンや電子制御といった基本的な仕様がほとんど同様となるこの2台だが、その乗り味は全く異なる。1台ごとにその乗り味の感想をお伝えしよう。



「R」のLEDヘッドライトはよりシャープなデザインに。独特なデザインのデイタイムライディングライトが目を引く



「R」のリアにはキャリの装着が想定されていない。スポーティな走りに特化していることが分かる



「R」のハンドルはテーパー状で剛性感が強い



「R」のASAモデルはクラッチレバーレスとなっている。「RS」も同様だ



左側スイッチボックスには各スイッチが所狭しと並ぶ



「R」のステップ周辺はシンプルなデザインでまとめた



「RS」は2灯式のLEDとなっており、前モデルよりも精悍さが増している



「RS」のツーリング仕様車には標準でキャリアが装備。さらにクルーズコントロール用のセンサーが中心部に設置されていた



「RS」のセパレートハンドル。かなり上側に設置されていることから分かるように、ライポジは緩やかだ



電気式解錠ボタン付きのナビゲーションブラケットを装備

 
 
 

ボクサーが生むエキサイティングな乗り味が官能的なロードスター「R 1300 R」



爆発的な加速でエキサイティングな乗り味が魅力の「R」。トルクで走る感覚はボクサーツインらしさも十分感じ取れる

 まずその外観だが、前モデルの「R1250R」に比べてよりシャープになった印象。特に正面から見た時のインパクトは絶大で、左右に飛び出したボクサーエンジンが車体のマッシブ感を強調している。例えるならば非常に筋肉質な“熊”というべきか、とにかく“迫力”や“凄み”といったワードが浮かぶのだ。またこれは「RS」とも共通だが、ラジエーターコアが左右に2分割された点や、サイレンサー形状が中抜きされたかのような分割構造に変更となった点も大きな変化である。

 ちなみに「R 1300 RS」との違いとしては、ノーマル状態でシート高が810mmと「RS」より5mm低くなっている点。(スポーツサスペンション装備では「R」「RS」共に+10mm)さらに「R」ではリアキャリアを装備することが構造上不可能であり、その点にスポーツ走行に振り切っていることがよく分かる。



171cm、体重65kgのライダーが跨った状態。両足の踵が少し浮く程度で恐怖心はない



片足ではほんの少し踵が浮く程度。ポジションは緩やかな前傾で疲れにくい

 跨ってみるとやや前傾姿勢であり、単なるロードスターというよりはストリートファイター然としたスポーティさを実感。決して車重は軽くないのだが、跨ってしまえばそこまで重さを感じることはない。そしてエンジンをかけると、ボクサーエンジン特有の左右に振られるような振動がほどよく伝わってくる。とはいえさして振動が大きいわけでもなく、振動を意識してしまうレベルでもないことがポイント。長時間のライディングでも疲れにくいだろうと予想できる。

 そして実際に走り始めてまず感じたのは空水冷ボクサー特有の大トルク。回転数で進む特性ではなく、トルクで地面を蹴って進む感覚ながら、スムーズに回転数が上がっていくので体感速度よりも実速度が出ている印象だ。走行モードは標準で「Rain」「Road」「Eco」の3種類を装備。オプションで「Dynamic」「Dynamic Pro」といったよりスポーティなモードが選択可能になり、試しに「Dynamic」モードで走行してみることに。

 するとこれまでのモードとは比にならないほどの加速感が得られ、想像以上のスポーツ性に驚愕する。0から100km/hへの加速がわずか3.25秒というその加速は間違いなく“スプリンター”と呼ぶにふさわしく、自身の感覚の2段階上ほどのスピード感を感じられた。



ライダーの体感以上にスピードが出る。しかし優れた電子制御により、不安なくマシンを操る楽しさを感じられる

 そしてその走りをアシストするトラクションコントロールやスポーツサスなどが絶妙に作用することで不安を感じることが一切ない。なかなか言葉では上手く表現できないが、少し走っただけでも「これは凄いマシンだ・・・」と瞬時に分かる。

 またデュアル仕様のサイレンサーから奏でられる力強いエキゾーストノートが官能的であり、走りと相まってまさに“エキサイティング”なライディングを楽しむことができた。

 
 

スポーツ&ツーリングを高次元で融合させた“いいとこどり”の「R 1300 RS」



スポーツ性能とツーリング性能が高次元で同居する「RS」。峠では鋭い走りを見せ、ライダーを全く飽きさせない

 スプリンター的な側面が強い「R」に比べ、「R 1300 RS」は純粋なるスポーツツアラーという立ち位置。「R」との大きな違いはハーフカウルやロングスクリーンの装備、セパレートハンドルによるライディングポジションの違いなどが挙げられる。またツーリングパッケージではトップケースホルダーやパニアケースホルダー、センタースタンドやナビゲーションホルダーが装備される点も特徴だ。

 跨ると程よい位置にハンドルがあるイメージで、低すぎるといった印象は持たない。ポジションだけで言えば純粋なツアラーであり、「R」に比べると重量感も感じることから、そこまでスポーツ走行に特化しているとは思えなかった。



171cm、65kgのライダーが跨った状態。両足の踵が浮くが、許容範囲といえる



片足の踵が少し浮く程度。ライポジは「R」同様前傾だが、かなり楽な姿勢で長時間でも疲れない

 しかし実際に走り始めるとその印象がガラッと変わる。さすがエンジン特性は「R」と同様なだけあり、走り自体は非常にスポーティ。跨った際に感じた重量感は全く感じることなく、まるでリッターSSにでも乗っているかのような軽やかさすら感じ取れる。特にコーナリングでのトラクション性能の高さが実感できる点が魅力となっており、スプリングレート自動調整機構が効果を発揮していることも感じ取れた。エンジンからの振動も「R」同様マイルドで、ロングツーリング時の疲労も大きくなさそうだ。

 また「R」の際には使用しなかったASA(オートメイテッドシフトアシスタント)を使ってみた。そもそもASAモデルではクラッチレバーがついておらず、もちろんシフトチェンジの際にレバーを操作する必要もない。モードは“M”シフトモードと“D”シフトモードで分かれており、“M”シフトモードでは、ライダーは従来のようにシフトペダルを使用して変速を行う。感覚で言えばクイックシフターに近いが、1速で停止してもエンストすることがない。

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