燃焼トルクを効率よく引き出す「クロスプレーン・コンセプト」に基づいた直列2気筒688ccエンジン「CP2」を搭載したスポーツモデル「ヤマハMT-07」。新設計フレーム&スイングアーム、倒立フロントサスペンションなどを採用して2025年2月にモデルチェンジ。同時に、クラッチレバーとシフトペダル操作が不要の自動変速トランスミッション「Y-AMT」を搭載した「MT-07 Y-AMT」も新たにタイプ設定された。その「MT-07 Y-AMT」の走りをチェックしてみた。
電子制御装備の充実で、走行性能と利便性を向上
「普段着感覚で走りを楽しめる」大型スポーツモデルとして、2014年に初登場した「MT-07」。日常域でパワフルながら扱いやすいエンジンを軽量スリムでコンパクトな車体に搭載し、コストパフォーマンスのよさも特徴となっていた。2018年に外装デザインを一新し、前後サスペンションのセッティングを変更。2021年には「CP2」を新排ガス規制に適合し、ライディングポジションを改善。外装デザインも変更された。2024年はスマートフォンとの連携機能を搭載し、5インチTFTメーターを装備。ハンドルバーも新形状となった。
そして2025年2月に剛性バランスを最適化した新設計フレームとスイングアームを採用してモデルチェンジ。フロントマスクとテールライトは新デザインとなり、5インチTFTメーターはフルカラー化。フロントサスペンションは倒立式に変更され、ホイールは「MT-07」専用設計の「スピンフォージドホイール」を装備している。
さらに、電子制御スロットル「YCC-T(Yamaha Chip Controlled Throttle)」を新採用し、吸入空気の取り込みの最適化と合わせて、全回転域でスムーズなトルク特性を実現。「YCC-T」の採用に合わせて、ライダーの好みや路面状況に合わせてエンジン特性や電子デバイスの介入度を選択できる「YRC(Yamaha Ride Control)」や、自動変速トランスミッション「Y-AMT(Yamaha Automated Transmission)」の装備も可能となった。そして、エアクリーナーボックス、吸気ダクト、吸気ファンネル、吸気口カバーの形状やレイアウトを調整し、吸気音がライダーの耳に効率的に届くよう燃料タンクカバーに4カ所の穴を設置した「アコースティック・アンプリファイア・テクノロジー」を採用。扱いやすさや利便性を高めつつ、ライダーの感性に響くチューニングを施し、ヤマハらしさを感じるモデルとなっている。
MT-07 Y-AMTの足着き性をチェック
「MT-07」専用セッティングの「Y-AMT」を搭載

1395mmのショートホイールベース、187kgの軽量な車体、新装備の倒立フロントサスにマッチするように、「Y-AMT」は「MT-07」専用セッティングとなっている。ストレスのないシフトフィーリングがスポーティな走りを実現している。
クラッチレバーとシフトペダル操作が不要の「Y-AMT」は、クラッチユニットとシフト機構を電動モーターで制御することでシステムのコンパクト化を実現。システム重量も2.8kgに抑えられ、「MT-07 Y-AMT」の車重は187kgと、「MT-07」からトータルで4kg増となっている。
「Y-AMT」のシフトチェンジは、エンジン制御を司る「ECU」と電動モーターを制御する「MCU」を通信で連携して行なっている。「ECU」はエンジン回転数、車速、ギヤポジション、スロットルポジションなどからライディング状況を判断して、シフトアップ時のエンジン点火と燃料噴射、シフトダウン時の電子制御スロットル「YCC-T」を制御。その「ECU」からの情報を通信で瞬時に「MCU」が連携し、発進時の半クラッチ、高回転時にクラッチを完全に切らないなど電動モーター(アクチュエーター)に指示して、変速ショックを低減した素早いギヤチェンジを実現している。
この「Y-AMT」は、直列3気筒エンジン「CP3」の「MT-09」や「TRACER9 GT」などに搭載されているものと同じシステムだが、パワー・トルクが減少し、ショートホイールベースで車体がコンパクト化された「MT-07」に最適化した専用セッティングとなっている。ATとMTの切り替え、AT時の「D/D+」2モード選択は同一だが、MT時は「RAIN」と「CUSTOM2」が省かれ、「CUSTOM」のセッティング項目もパワーとトラクションコントロールのみに簡略化されている。
ちなみに各モードの「パワー(4段階で1が最大)/トラクションコントロール(2段階で1の介入度が少ない)」の設定値は、D「4/2」、D+「3/1」、STREET「2/2」、SPORT「1/1」となっている。「D」がいちばんパワーが抑えられ、トラクションコントロールの介入度が高いマイルドで安定志向の乗り味、「SPORT」がいちばんパワフルで、トラクションコントロールの介入度が低いシャープでスポーティな乗り味となっている。ATとMTともに停車時には1速まで自動でシフトダウンする機能を搭載し、ゴー&ストップの多い渋滞路で利便性の高さを実感できる仕様だ。
「Y-AMT」がスポーティな走りと安楽な走りを両立。退屈は感じない!
ベースとなる「MT-07」から車重は4kg増の187kgとなっているが、押し引きや取りまわしは軽く行なえた。跨ると上半身が少し前傾し、自然とフロントに荷重がかかるライディングポジションとなる。重心位置が低く感じられ、足着き性のよさもあって車体の安定性も感じられる。




















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