エアバッグにスカウター! バイク用ヘルメットの新時代が始まったーッ!

二輪事故で頭部を損傷するケースはやはり多い

 同時にオートリブは、二輪事故における損傷部位のデータも発表した。ドイツ、中国、インドで調査したところ、頭部の損傷はドイツで16%に留まり、脚部が31%と最多だった。一方、中国とインドでは頭部の損傷が最も多く、中国31%、インド34%という結果に。

 中国とインドでは安全性の低いヘルメットやノーヘルによって頭部を損傷したケースも含まれるだろうが、ドイツのようにヘルメットが普及している日本においても二輪死亡事故の主な損傷部位は頭部が43.8%と最も多い。エアバッグ内蔵ヘルメットで、この数字がより減らせるかもしれない。

 エアバッグが搭載されることで重量やバランスが課題になりそうだが、ヘルメットメーカーが参画していることでクリアできることを期待。価格も高価になりそうだが、今後の展開を待ちたい。

2020年、国内の二輪車死亡事故死者数は全526人。最も多かったのが頭部を損傷したライダーで、半数に近い。頭部をより保護できれば死亡事故を減らせる可能性がある ※グラフは警察庁資料を元に筆者作成
2020年、国内の二輪車死亡事故死者数は全526人。最も多かったのが頭部を損傷したライダーで、半数に近い。頭部をより保護できれば死亡事故を減らせる可能性がある ※グラフは警察庁資料を元に筆者作成

戦闘力が視界に浮かぶ? オプティクソンがいよいよ市販開始

 SHOEIが発表したヘッドアップディスプレイ(HUD)搭載ヘルメット「OPTICSON」(オプティクソン)」も大きなトピックだ。

 ヘルメットをスマホとブルートゥース接続することで、シールド内側に装備される「コンバイナ」と呼ばれるディスプレイに、ナビや時計、電話発着信などの情報を表示。2022年のモーターサイクルショーに展示された試作品を当webでも紹介したが、ほぼそのままの形で登場することになった。

 HUDは、まさに某人気漫画の“スカウター”。前方視界に情報が浮かび上がるため、ハンドル手元にスマホをマウントするより視線の移動量が少なく、安全なのが利点だ。

 ヘルメット内部にはあらかじめスピーカーとマイクが内蔵され、スマホを通じて音声入力や音楽鑑賞ができる。電話発信&着信、通話も可能で、ナビ情報は音声でもガイドされる。帽体のチンガード左側に組み込まれたスイッチモジュールのボタンで音量調整や電話の操作も簡単だ。

 価格はヘルメット本体が13万7500円(専用バッテリーは別売で1万1000円)。ナビを使用するには、SHOEIと共同開発したバイク専用ナビアプリ「ツーリングサポーター」の「プレミアムプラス」コースへの加入が別途必要だ(月額800円または年額8000円)。

2019年、2022年のショーモデルを経て、ついに市販化されるオプティクソン。帽体は新設計で、通信モジュールや操作スイッチ、スピーカーが内臓されている
2019年、2022年のショーモデルを経て、ついに市販化されるオプティクソン。帽体は新設計で、通信モジュールや操作スイッチ、スピーカーが内臓されている

多彩な情報を表示、安全に配慮した専用バッテリーも用意

 映像は、チンガードに設置されたHUDモジュールからディスプレイに照射される。表示項目は、交差点名称や矢印、曲がるまでの距離といったナビ情報のほか、目的地までの到着推定時間、経由地到着時刻、時計、電話発着信など多彩だ。

 専用ナビが有料なのは残念だが、ツーリングサポーターのプレミアムプラスは、電波が届かない場合もオフラインでマップとナビに対応。バイクの排気量を考慮し、125cc未満は高速道路への誘導を行わないのも特徴だ。

 専用バッテリーは、衝撃を受けた際、一般的なリチウムイオンバッテリーより発火の危険性が低いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使用。バッテリー本体やコネクタに防水加工を施し、バイク用としての安全性を考慮した。

 電源は充電式ではなく、別体式バッテリーを接続した状態でジャケットのポケットなどに収める必要がある。使い勝手は充電式に軍配が上がるだろうが、別体バッテリーの方が長時間使用できるだろう。なお、稼動時間は現時点では未発表だ。

 フル着脱式内装のサイズ調整やコンバイナの位置調整は、スペシャリストによる内装サービス「SHOEI Personal Fitting System(P.F.S.)」がサポート。HUDの情報が見える位置はピンポイントだが、プロが調整してくれるなら安心だ。

ナビ情報の表示イメージ。次に曲がる方向と距離、時計などが表示され、音声でも案内される。写真は動画のものだが、実際の表示はもっと小さく、運転をジャマしない
ナビ情報の表示イメージ。次に曲がる方向と距離、時計などが表示され、音声でも案内される。写真は動画のものだが、実際の表示はもっと小さく、運転をジャマしない

次ページは : 先進性だけではなく、ヘルメットに重要な被り心地も万全

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