ディスプレイや通信システムを内蔵し、ナビなどの情報を視界に投影する「スマートヘルメット」。SHOEIが「OPTICSON(オプティクソン)」をモーターサイクルショーに参考出品し、大いに話題を呼んだ。
会場の体験ブースで使い心地をチェックし、気になる価格や発売時期も探ってきた!
文/沼尾宏明、写真/沼尾宏明
【画像ギャラリー】SHOEIのスマートヘルメット「オプティクソン」を全方位チェック(18枚)画像ギャラリー過去のIT-HLから3年分の進化、より製品版に近い
HUD(ヘッドアップディスプレイ)にナビなどの情報を表示できる「スマートヘルメット」。HUDの形状やシステムによって違いはあるものの、運転中の視線移動が最小限のため、安全性を向上できるのがメリットだ。ベンチャー企業から発売に至ったケースもあるが、大手ヘルメットメーカーからは今だ市販化されていないのが現状。公には、日本のSHOEIが唯一開発を進めている。
SHOEIは、2019年1月に米国の家電見本市で「IT-HL」を初公開した。マツダやダイハツなどの車載メーター&HUDメーカーである「NSウエスト」との共同開発によるもので、同年の東京MCショーにも展示。筆者も体験済みだ。
そして3年の開発期間を経て、2022年の大阪&東京MCショーに、IT-HLの発展版であるオプティクソンが初披露された。NSウエストとの共同開発は継続中で、より市販版に近いバージョンと言える。
IT-HLはヘルメットを着用してのデモ体験が可能だったが、今回はコロナ禍でもあり、残念ながら着用は不可。機器部分をそのまま外に出した体験コーナーが用意された。
右目の視界にナビの情報が浮かび上がる!
オプティクソンはご覧のとおり、右目に某漫画の「スカウター」風HUD、帽体左側にインカムのような操作デバイスがある。アゴ(チンガード)にブルートゥースモジュールや投影装置などの電子システムを収納。帽体にスピーカーとマイクも内蔵される。
仕組みとしては、チンガード上部から右目のスクリーンに向けて、プロジェクターのように映像を照射。ライダーの目には前方に虚像として情報が浮かんで見える。ヘルメットとスマホはブルートゥースで接続し、スマホのナビアプリなどの情報を投影。アプリは、ナビタイムジャパンの技術協力で開発された専用品だ。
帽体は従来のIT-HLから変更され、ソフトも修正。重量は未公表だが、同社製ネオテックIIなどのシステムヘルメットとそれほど変わらない程度という。なお、チンガードにユニットを内蔵するため、既存のヘルメットに後付けで装着はできない。
映像は小さくてもクッキリ、しかも視界のジャマにならない
体験してみると、映像が見えるのはかなりピンポイント。顔を上下左右に動かして見える位置を探したが、一度位置が決まれば、ずっと見えていた。今回はHUDに手を触れられなかったが、実際はHUDの位置を調整することになる。
映像を言葉で表すのは難しいが、主観では50cmほど先に約2cmの表示が浮かんでいる感じ。表示はデモ画面より小さい印象ながら、輝度が高く、ハッキリ見える。
交通の流れに視線を置いたまま、矢印と曲がるまでの距離を示すターンバイターン式のナビが表示され、スピーカーからの音声案内もある。表示内容はシンプルながら、ナビとしてはしっかり使えそうだ。何よりハンドルマウントのスマホのように視線を下に動かさずに済むため運転に集中でき、長時間走行もラクだろう。
筆者は他社のスマートヘルメットをテストした経験がある。その際は周囲が明るいとHUDが外の光を透してしまい、映像が見づらい現象が起きていた。オプティクソンでは、チンガードのセンサーが周囲の明るさを検知し、輝度を自動調整するため、見やすさをキープしてくれるという。
また、HUDの明るさはスモーク、クリアシールドでも自動調光され、スマホで任意に調整できるよう開発中とのことだ。
12~15万円程度で年内には発売なるか?
オプティクソンのコンセプトは、「アクティブセーフティ」の考えに基づく。帽体で万一の際の安全性を確保しながら、ヨソ見を防止して事故自体が起きる確率を減らすことを狙う。
価格や発売時期に関しては未定だが、「12~15万円程度を意識しながら」開発中。高額に思えるが、ツーリング系ヘルメットのGT-エアーIIと専用インカムのセナSRL2を合計すると、約9万円になる。これにHUDが追加されると考えれば決して高すぎるわけではないだろう 今回展示されたオプティクソンは製品版に近い仕上がりと思われ、当webとしては「年内」の発売を予想したい。未来が現実になる日は近いハズだ。
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