三重県松阪市では公共交通への理解と利用促進を狙いに毎年市内を走る路線バスとコミュニティバスが無料で乗れる路線バス運賃無料デーが行われている。昨年の様子はお伝えしたが、今年も開催されるということが発表されたので経緯や利用方法を解説する。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)
■実際の乗車だけではなく関心も低い?
松阪市では地域の公共交通(鉄道、路線バス、タクシー、コミュニティ交通など)について「地域の活性化を支える基盤であるが、自動車への依存の高まりや人口減少、少子高齢化など、また新型コロナウイルス感染症の影響による新しい生活様式の普及などの社会情勢が変化する中で、地域公共交通を取り巻く環境は一層厳しさを増している」と考察している。
また現状把握として地域公共交通に対する市民の関心、重要性に対する理解が低いともしており、この点について令和4年度から路線バス運賃無料デーを実施している。昨年は11月19日(日)に行われ、三重交通路線バスで3,013人、鈴の音バスで855人の利用があった。いずれも通常同曜日と比べて路線バスは約3倍、鈴の音バスは約6.5倍という乗車があったそうだ。
■誰でも市内区間は無料
そして今年は11月17日(日)に実施されるということが発表された。内容としてはこれまでと同じで、松阪市内を走る路線バスとコミュニティバスが無料で乗車できる。また「松阪大石線」については一部多気町内を走行するが全区間無料としている。そして利用できるのは松阪市民はもちろん市外在住の人でも誰でも無料だ。利用回数にも上限はないため、どんどん乗車してもらいたい。
ただし三重交通の路線バスについては松阪市内区間のみ無料となっている。松阪市を越えて走行する路線もあるので、乗車の際は注意が必要だ。運賃が無料であるため、整理券やICカードのタッチは不要である。いつもの癖でタッチしてしまいそうになるが、気をつけていただきたい。そして松阪市が運行しているコミュニティバスの中には土日運休という路線もあるので、事前に乗りたい路線が平日限定となっていないか調べておくことも必要だ。
■目的地になりうる候補地は?
運賃が無料ということで、どう乗車すればお得なのかどうしても気になってしまうが、楽しみ方やスポットを紹介しよう。まず路線として長いのは飯南波瀬線である。起点の松阪駅前から終点のスメールまでは約1時間半で運賃は1500円である。
スメールとは飯高地域にある宿泊施設のことで、売店もあるので買い物を楽しんだり、周辺の景色で紅葉を楽しんだりと観光もできる。そこから徒歩圏内には奥香肌湖や蓮ダムがあり、見晴台に立てば壮大な景色を楽しむこともできる。蓮ダム管理所にはダムカードやダム印が貰える。日曜日でも対応しているということなので、訪れた際はぜひ立ち寄ってもらいたい。
また路線沿線には道の駅「飯高駅」がある。ここには日帰り天然温泉があり露天風呂や蒸し湯、薬草風呂、サウナなど11種類の湯舟が備わっている。タオルなども販売されてるので、手ぶらで利用することが可能だ。館内にはレストランや地元の特産品を買うことができる。4月にはドーナツ専門店「BOUQUET IITAKA」が開店したので、素材にこだわったドーナツをお土産にするのはいかがだろうか。
他には松阪市のB級グルメとして有名な鶏焼肉の店舗がいくつか点在し、立ち寄ることができる。松阪市といえば有名なのが松阪肉だが、最近人気になっているのが鶏焼肉である。普通、焼鳥と聞くと串に刺さったものを想像するが、松阪市において焼鳥は網の上で焼くタイプが一般的だ。
古くから採卵のために鶏を飼っていた農家が多く、その農家が卵を産まなくなった廃鶏を各家で処分し七輪で焼いて食べたのが鶏焼き肉の始まりといわれている。みそダレのいい匂いに誘われて途中下車というのも何度も乗り降りが可能であればこそである。