■不思議な終点
相模湾の広がる車窓がしばらく続いた後、JR線の根府川駅前へと向かう。このあたりからバスは海から離れて山を攻め始める。起伏に富んだ経路……これは掘り出し物なオイシイ路線だわ。
山に入って狭隘さの目立つ県道740号線の曲がりくねった坂道を登りつつ、小田原から35分ほどで終点の石名坂に着いた。距離にすると12kmほどで、運賃は670円。全区間通し乗車をした人は他に誰もいなかった。
石名坂バス停は、坂道の途中にある未舗装のバス転回場の中にポツンと置かれていた。周囲を緑に囲まれていて、やや人里離れた静けさ。
バスの未舗装転回場というのも、最近はだいぶ珍しくなった印象を抱く。主要駅でも街中でもない、なんとも不思議な場所が終点になっているものだ。
■ここで乗り換えできるの?
さて、石名坂で先へ行くバスに乗り換えできるかが、次に現れるトピックだ。JR線の真鶴駅が近く、歩いてもアクセスできそうだったので、ここでの乗り換えに関してはあまり考えなかった。
石名坂の転回場を見回すと、もう1本のバス停標識が立っていた。真鶴町のコミュニティバスの通り道になっていて、本数は平日6本と少ないながらも、幸いにも3分待てばバスが来るタイミングだった。
暫くすると、明るめのグリーンに塗られた、コミュニティバスらしい佇まいの日野ポンチョがやってきた。運賃は200円均一で、真鶴駅までの所要時間は約12分。
後日確認したところ、伊豆箱根バスと真鶴町コミュニティバスがキレイに繋がるのが、小田原13:48発しかないのに気付いた。たまたまベストタイミングなバスを選んでいたらしい。
■行けなさそうで行けた!!
真鶴駅に降り立ってバス停標識を見ると、ここから先は湯河原駅まで、経路が海回りと山回りの2通りからバスが選べるようだ。
どちらも箱根登山バスが運行を担当(山回りは湯河原町コミュニティバスの位置付け)しており、海回りが2時間に1本、山回りは1時間に1本くらい。
ほか、伊豆箱根バスも真鶴駅〜湯河原駅を結ぶ路線を運行しているが、こちらは朝6時台に1本しかないので、遊びに使うのはだいぶ難しそう。
あとは拘らなければ先に来るほうのバスに乗ればチャレンジ完了。目的地の湯河原駅までは、海回り15分270円、山回り23分210円だ。
平日限定という注釈が付くものの、こうして小田原駅→湯河原駅まで路線バスだけを使って、一応行ける結果が出た。
総所要時間は1時間45分ほど。電車の22分に比べれば寛容な心が試されるものの、かと言ってそう極端なロングライドでもないので、たまには違う刺激が欲しいと思った時に、試せばきっと楽しい行き方になる。
ちなみに、湯河原駅から先は、県境を越えて静岡県の熱海駅まで行く、東海バスの「A51系統」がある。
これはすなわち、過去に別記事で紹介した、神奈川県内を走る路線バス各系統を組み合わせると、東京都県境〜静岡県境まで、バスだけで神奈川県の横断が可能、ということになる。
「理屈の上では」ですけどね……。
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