【へっぽこバスガイドの珍道中】訓練中に神罰級のやらかしだと!? 社内で語り草になった出来事とは?

■「本読み」の小さな伝説

日本武尊銅像(三峯神社・編集者撮影)
日本武尊銅像(三峯神社・編集者撮影)

 実地研修では、バスで現場に出る前に事前に「本読み」を行う、あるいは帰庫して後日に「本読み」の時間が設けられる。本とはガイドの教本のことで、これを読み上げて観光地の基礎知識や発声、読み方等を確認する重要な訓練だ。その本読みの場でへっぽこ伝説が生まれてしまった。「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」とは記紀に登場する第12代景行天皇の皇子で、火防や災厄除け、特にピンチを乗り切る御神徳で今も昔も崇敬を集めるのは皆様ご存じのはずだ。

  その日本武尊を、堂々とこともあろうか「にほんぶそん」と読み上げてしまったのである。バスガイドしかいない部屋が一瞬の静寂、そして大爆笑に変わったのはご想像の通りである。同期たちは笑いで次の本読みに進めなかったというオチまでついた。

 やがてこのエピソードは世代を越えて語り継がれ、本読みでその名が出るたびに「ほら!先輩、出ましたよ!ぶそん!」と後輩から茶化される「へっぽこ伝説」となってしまった。神罰が下らないかとヒヤヒヤものだったが、この無礼な「読み間違い」により絶対に忘れない神様になり、御縁が結ばれたと今でも信じている果報者である。

■私を育ててくれた3名の指導ガイドの先生たち

台数口(複数台建ての貸切バス)は各車との連携も大事な仕事
台数口(複数台建ての貸切バス)は各車との連携も大事な仕事

 覚えも悪く、要領も悪かった私を支えてくれた3人の指導ガイドの先生たちの存在なしに今の私は語れない。1人目の先生は東京での生活と仕事の基礎を支え、時に叱り、時に抱きしめてくれる「東京のおっかさん」的存在だった。2人目の先生は、パワフルで、時に伝説級のパワーワードを生み出すおちゃめな恩師的存在だった。3人目の先輩は、学年も年齢もちょうど10年離れていて「あなたの思うようにやりなさい」と見守ってくれる、まさに「聖母」のような方だった。

 三者三様の教えが、私のガイドとしての土台を築いてくれたのだろうと思うと、ガイドになるのもなってからも人間関係がいかに大切なものかを痛感させられる。ついに訓練も終わり、現場でデビュー戦に挑む。緊張に包まれたバス車内において、震える声で発した最初の挨拶「改めまして、おはようございます!」新人ガイドが踏み出す確かな一歩だった。そのスタートラインを踏む模様を次回はお届けしたい。

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