バス最後部のシートは車内で最もワイドな場所だ。では、いつからそうなっていて、そもそも横長でないとダメな事情でもあるのだろうか……ということで探ってみた。
文・写真(特記以外):中山修一
■「ワルは後ろ!!」という暗黙の代名詞!?
一般路線バスに使われる路線車でも、高速バスや貸切バスのハイデッカー車両でも、大抵の最後部は車内の幅いっぱいまで使ってシートが配置されている。路線車はロングシートタイプ、高速・貸切車なら座席が5つ(大型車)並ぶ。
殊に学校行事でバスを貸し切ると、普段から目をつけられている大変良い子たち(?)が自然に集まる“巣窟”の誉れ高い、サブカル要素をひときわ持ち合わせた車内設備であるが、横長にするそもそもの理由はあまり聞いたことがない。
最近のバス車両はリアエンジンが多く、ちょうど最後部シートの下にエンジンが積まれている。横長にすることでエンジンの熱をシートによって断熱することで車内温度云々……
……のような、真っ当なロジックが隠されているなら納得だ。ところがどこを探してもそんな話は見つからないばかりか、横長が当たり前すぎて誰も気に留めたことがないのが実情かもしれない。
■始まりはリアエンジンバス…でいいの?
もし横長配置がリアエンジンバスでしか見られないなら、前述のような技術的な理屈がボンヤリ見えそうだ。
それなら昔のフロントエンジン式のバスを確認して、ぜんぜん別のシート配列しかなければ、その理屈がウソか誠かの判断材料になる。
さっそく1950年代初めに製造された、箱型(キャブオーバー)車体でフロント式ガソリンエンジンのツーマン路線車の最後部に注目すると、しっかり横幅いっぱいのロングシートだった。これでエンジン云々の話はウソで片付けて良さそうだ。
さらに時代を遡り、全国的に路線バスが普及し始めた昭和初期の車両はどうなっているのか、古い文献から当時のバスの図面を見つけて車内の様子を窺う。
結果、やはり最後部のシートは4〜5人がけの横長配列になっていた。どうやらバスの車体が、トラックや普通乗用車の改造から脱皮した、いわゆるバスの形に落ち着いた最初の頃から、後ろを横長にする習慣があったようだ。