函館市の路線バスを一手に担う函館バスは、函館を中心に道南地方一円に路線を展開する。長らく東急グループに属していたことから、東急の路線バス標準塗装である銀色に赤い帯の塗装で親しまれている。
平成年間には、函館市交通局との路線バス事業の統合、貸切バス事業の分社化など大きく事業環境が変わったが、平成初期のころの同社の様子を紹介しよう。
(記事の内容は、2023年5月現在のものです)
執筆・写真/石鎚 翼
※2023年5月発売《バスマガジンvol.119》『平成初期のバスを振り返る』より
■平成15年以前の2社局体制時代
道南地方最大の都市である函館市は、国際的な観光地としても知られ、多くの観光客が訪れる。市の中心部は海上に突き出た砂州上にあり、概ね平坦である。そのため、路面電車を軸にバス交通が発達し、長らく主に函館バスと函館市交通局がバス事業を展開してきた。
函館市交通局は、公営事業の高コスト体質解消を目的に、路線バス事業を函館バスに移管することとし、2003(平成15)年に移管を完了した。これによって、函館市周辺の路線バス事業は基本的に函館バスに一本化された形となった。
本稿で紹介する時代はまだ函館市内のバスが市交通局と函館バスの2社局体制であった頃だ。
当時は函館市内の他、江差、松前、鹿部、知内、北桧山、森に拠点を配し、道南地方に広く路線バスを展開するとともに、これら拠点と函館を結ぶ長距離一般路線も運行した。また、瀬棚線や松前線と言った国鉄の廃止転換バスも運行する。
高速バス事業への参入は遅く、初の都市間高速バスは2020(平成30)年に運行に加わった札幌線で、平成初期の高速バス路線開設ブームには乗らず、専ら道南地域の路線バス運行に徹した。なお、札幌線も北都交通、北海道中央バス、道南バスによる既存路線の運行に加わった形である。
車両は当時いすゞを除く国内3メーカーを採用しており、東急電鉄(現・東急バス)からの転入車両が多く使用された。自社導入車は長尺車がメインであったものの、東急電鉄からの転入車は短尺車が中心で、車両サイズは大きく異なっていた。
郊外路線には、トップドア車両や貸切バスからの転用車が使用され、塗装も東急グループ共通の貸切カラーが施された。貸切車両や長距離路線用車両には、東急グループ外からの転入も散見された。
平成年間では、2003年に東急グループの再編に伴い、同グループから離脱した。一方で前述の函館市とのバス事業統合に伴い、同市からの出資を受け入れるなど、地域企業としての性格が一層強まったと言える。
また、旧市営バス路線との系統の整理統合や、新たな系統番号の導入なども進められた。函館バス・函館市電共通の1日・2日乗車券の導入や、ICカードの相互利用など、利便性も改善された。
函館バスの路線バス車両は、現在も伝統とも言える銀色に赤帯の塗装を踏襲するが、平成時代は大きな変化が続いた時代であった。
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