路線バスに乗っていて、わざわざ降車ボタンを凝視する機会はあまりない気がする。とはいえ、よくよく見てみれば、ボタン本体にもよく見ると情報があれこれ記されていて興味深い。
文・写真:中山修一
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■昔は“無地”だった押しボタン
1980年代頃までに作られた、路線バス車両に取り付けられていた降車ボタンの多くは、銀メッキされた降車ボタンユニットのケースに、押しボタンと発光部分を収める構成だった。
ボタンを押すと、紫系の透明カバーが付いた発光部分がONになり、OFFの時には見えない「とまります」と書かれた文字が、赤色で光って現れるようになっていた。
押しボタンのほうは白い丸型をしていて、直径もそれほど大きくなかったため、ボタンの部分に文字情報の類は特に書かれていないかった。
しかし、どのタイミングで降車ボタンを使うのか、文字での説明を添える必要は欠かせなかったようで、降車ボタンの近くに「お降りの方は、このボタンを押してください」のように書かれた、樹脂製のプレートが貼り付けてあった。
■ボタン自体が主張し始めた日
降車ボタンの全体的な形が変わり始めたのは1990年代以降。より使いやすいデザインを採り入れ、押しボタンのサイズが大きくなった。
ボタン表面の面積が広くなった分、それまで樹脂製プレートを別途貼り付けていた説明文を、ボタンに直接表記できるようになった。
樹脂製プレートにかかるコストを減らせるメリットも多少はあったようで、1990年代のバスからプレートが廃止され、その代わり押しボタンの部分に「お降りの方はこのボタンを押してください」と書かれているタイプがかなり増えた。
■バリエーション豊富な最近の降車ボタン案内表示
2000年代以降にバスのバリアフリー関連への対応が本格化すると、国が定めたガイドラインに則り、銀色から、より目立つ黄色い本体ケースに収めた降車ボタンが広く普及した。
通常、押しボタンの部分はオレンジ色をしている。そこを観察してみると、今も変わらず何かしらの文字情報が記されている。
特に興味を誘うのは、降車ボタンを製造しているメーカーやバス事業者によって、記されている内容にバリエーションが見られる点だ。
■伝統を受け継ぐ説明書き
全国レベルで見ると相当なバリエーションが出てきそうだが、代表的な例に挙げられるのが、降車ボタンが銀色だった時代からの伝統を受け継ぐ「お降りの方はこのボタンを押してください」の表示だ。
次に、従来の降車ボタンの説明書きは、ボタン本体の役割を表す内容となっている。しかし最近は、利用者側が起こす行動を表現した「おります」と書かれているタイプが存在する。
また、降車ボタンなんて本体を見れば分かるでしょ? といったメッセージが込められているか定かではないものの、文字情報は「STOP」とだけ記され、他の説明を一切カットしているパターンも見られる。
上記の「おります」と「STOP」は、組み合わせて表記させる場合がある。さらに指でボタンを押している様子のピクトグラムが添えられるデザインもバリエーションの一つだ。