■現業職員の威厳の低下
このような時代の流れでは負の連鎖で、言ったもの勝ち、クレーム常習、ひどい場合には実力行使という流れになっていき、被害を被る現業機関の職員は鉄道会社をはじめとする運輸業に対しての職業としての魅力も失わせた。
それは就職先の人気職種からの陥落に見て取れる。2024年の就職情報会社の調査によると、就活を始めた段階での志望業界上位10位に鉄道・航空業界は入っていない。
実際にエントリーした業界でようやく10位に入り、選考を受けた業界ではやはり10位に入らない。最終的な志望業界となると、当然ながら10位以内には入っていない。昔の駅員や車掌は威厳があったし、むしろ怖かった感さえある。運輸業としての誇りからだろうが、とても文句を言おうとは思えない空気があった。
サービス業だと言ってしまえばそれまでかもしれないが、今となっては「誰得?」なのは明らかだろう。勘違いしたサービス業化がもたらした悲劇としか言いようがない。
■お願いしまーす! ありがとうございましたー! の一言が残るバス
それでも文化として残っている「光」もバスにはある。運転士に「お願いしまーす!」や「ありがとうございましたー!」とあいさつする乗客はまだ多い。特に子供に多い気がするが、誰がそんな教育をしたのか。おそらく保護者を見てのことだろう。別にそれを励行することを推奨するつもりはない。
しかし、このようなバス独特の文化がもっと広がれば、鉄道会社やバス事業者がカスハラ事件で厳格な態度を取ると改めて表明しなくても、和やかに気持ちよく乗れるのにと感じる。もっとも鉄道の場合はみどりの窓口閉鎖や自動改札化により駅員と接する機会もないので昔のようになることはないだろう。
しかし今一度、乗客は偉いのではないことを知るべきだ。運賃を払っている「旅客」には違いないが、対価を払って受けることができるサービスは約款により「目的地までの安全で確実な輸送」であり、それ以上でも以下でもないことを認識する必要がありそうだ。
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