バス車両のシャーシとボディを、それぞれ別のメーカーが作って合体させる……そんな手法も今ではすっかり懐かしくなった。ただしそれは日本での話で、遠い海外に目をやれば未だにこの製造方が健在な国がある。英国だ。
文・写真(特記以外):橋爪智之
構成:中山修一
(ロンドンのディープな2階建てバスの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■バス車両が上下別々だった頃
昭和~平成の時代の日本のバスメーカーは、いわゆるディーゼル4社(三菱ふそう、いすゞ、日野、日産デ)がエンジンとシャーシを供給していて、それに車体を載せていたわけだが、車体はメーカー純正とは別に、車体だけを製造する専門のメーカーもあった。
有名な所では、西日本車体工業(西工)があり、九州を中心とした西日本を中心に車体を製造していたし、新潟の北村製作所も1995年にバスボディ製造事業を手放すまで、多くのバスボディを製造してきた。
富士重工は、日産ディーゼル製のバスの半数以上に車体を供給し、同社のメーカー純正ボディのような位置付けであったが、事業者の要望に応じて他3メーカーの車体も架装していた。中には「ボディだけは同じメーカーで統一」という、特定車体メーカー製だけを好む事業者もあった。
■細か〜く眺める楽しみ
どこのエンジン・シャーシメーカーであっても、車体専門メーカーが製造するボディのデザインは、ボディのモデル名が同じなら基本的に共通であるため、車両の完成状態をパッ見ても、素人目には見分けが付かない。
しかし、ホイールベースやエンジンの搭載位置など、シャーシのメーカーごとに細かい差があるため、それに付随してボディの外見上にも細かい差が生じる。バスマニアの視点では、こうした細かい違いでメーカーを見分けるというのが楽しみの一つであった。
しかし近年は、メーカーの統廃合や集約が進み、バスボディの製造に特化したメーカーは消滅。メーカー純正ボディだけとなり、各事業者の好みに応じてシャーシとボディを選ぶことは出来なくなった。
メーカー側からすれば、全てレディメイドにすれば合理化できるなどメリットは多いが、事業者側は自社の好みに合わせてカスタマイズすることが難しくなってしまった。
趣味的に見ても、画一化された車両ばかりとなってしまい、昔のように「ごちゃまぜ」な面白みは少々減ってしまった感は拭えない。
■ほぼ絶滅した日本の一方で……
これは世界的に見ても同じ傾向で、ボディだけを供給していたメーカーは減少傾向にあるようだが、それでもまだエンジン/シャーシとボディを別メーカーで組み合わせるという形を多く見かける。
ロンドンの2階建てバスを例に見てみよう。ロンドンバスは、現在も複数のメーカー製車両を導入しているが、中でも採用数が多いのがボルボ製シャーシだ。
ボルボB5LHと称する、電気・ディーゼルハイブリッド仕様は特に高い人気を誇り、多くのバス事業者で採用された。最初に誕生した試作車6台には、ライトバス社の「エクリプス・ジェミニ」というボディを架装していた。
正式に量産が決まるとマイナーチェンジ版のボディ「エクリプス・ジェミニ2」が採用された。当初はライトバスが単独のボディサプライヤーになっていた。さらにその後「エクリプス・ジェミニ3」が登場している。
また、ライトバスは2011年から製造されたハイブリッド車の新しいロンドンバス「ニュールートマスター」のボディ製造も手がけていた。
しかしこの車両は製造コストが高いうえに、バッテリーの不具合で充電のためにエンジンが回りっぱなしになり、通常のバスと変わらないほど排出ガスが増えるなどトラブルが多く、1000台が製造された後の追加注文はなかった。