冬は白銀の世界&夏はひまわりが彩る名寄の足を守る名士バスの平成初期

冬は白銀の世界&夏はひまわりが彩る名寄の足を守る名士バスの平成初期

 「日本で最も寒い市」とも言われる北海道名寄市に拠点を置き、長年にわたり同市の公共交通を担っている名士バス。

 昭和末期からは国鉄・JRの鉄道路線廃止代替バスの運行で美深町や、紋別市、遠軽町に至る路線を運行するなどネットワークが拡大したが、現在は再び縮小傾向にある。今回はまだ多くの旧カラー車が活躍していたころの同社の様子を紹介しよう。

(記事の内容は、2024年3月現在のものです)
文・写真/石鎚 翼
※2024年3月発売《バスマガジンvol.124》『平成初期のバスを振り返る』より

■日野製が中心だったが平成初期にはいすゞ製の中古バスも在籍

名寄市内の車庫に並ぶ路線バス車両。この当時の一般路線バス車両は日野製で統一され、モノコック車が並ぶ光景は壮観であった
名寄市内の車庫に並ぶ路線バス車両。この当時の一般路線バス車両は日野製で統一され、モノコック車が並ぶ光景は壮観であった

 上川地方北部にある名寄市は、2月の平均最低気温が氷点下10度を下回るうえ、降雪量も多い。小規模な市であるものの公共交通に対する期待が大きい地域と言えよう。

 市内路線と名寄本線廃止代替バスは名士バスが運行する一方、旭川~士別~名寄間の幹線系統は道北バスが運行する。

 もともと名士バスは戦時統合で道北バス(当時は道北乗合自動車)の一部とされていた時代があり、現在も名寄市には道北バスも営業所を置いている。

 また、札幌線高速バスは北海道中央バスと道北バスが運行にあたっており、名士バスはこれら都市間路線の運行には参画しておらず、もっぱら名寄地区のローカル輸送を担っている。

 車両は日野製が中心に採用され、平成初期にはごく一部いすゞ製の中古バスも在籍した。近年では日産ディーゼル製や三菱製車両も在籍しているが、かつて一般路線車は日野製で統一されていた。

 この当時、路線バスとして一般的な仕様である2扉車は市内循環線で使用される2台のみで、その他の一般路線車はトップドア車とされており、貸切からの転用車も多かった。

 比較的古参級の車両が旧来の路線で活躍する一方、名寄本線の廃止代替バスには、長距離便向けにフルデッカーの観光タイプ車両が、区間便には路線バス用シャーシベースのトップドア車が新車導入されていた。

 現在名士バスの廃止代替バスは興部までの運転であるが、かつては名寄本線の終点であった遠軽まで運行されており、所要時間は3時間を超えた。

 なお、1985(昭和60)年に廃止された美幸線の廃止代替バス用には、専用カラーの中型バスが充当されていた。こちらは現在、ワゴン車を使用したデマンド交通となっている。

 市内循環線には、北海道中央バスで、セミロマンス車として使用されたRC320Pが充てられていたが、1990年代半ばまで活躍し、恐らく道内では最後の現役バス窓仕様車であったと思われる。車内はハイパックシートが並んでいた。

 貸切バスも日野製が中心であったが、2台のみいすゞ製ハイデッカー・後部サロン車が在籍し、異彩を放っていた。

 この時代は美幸線転換バスを除くと、大型車で占められていたものの、廃止転換バスも含めてその後中型バスを中心とした陣容に代わっていった。また、旧カラーのバスも1990年代半ばには見られなくなり、現在はオレンジの帯を巻いたデザインが主力となっている。

【画像ギャラリー】多くの旧カラー車が活躍!! 寒さ厳しい北国の住民の足を担う名士バスの平成初期(10枚)画像ギャラリー

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