名称に「岬」が付くバス停の数は全国に少なくとも120カ所、地形的な岬と深く関係している停留所に絞ると57カ所程度。その中に、北海道の景勝地・神威岬を停留所名に頂戴した「神威岬」行きの路線バスが運行中だ。景勝地へのアクセス便なら簡単に利用できるイメージを抱くが……果たしてその実態は?!
文・写真:中山修一
■スタート地点には鉄道代替バスで
アイヌ語で神様に相当する言葉・カムイを冠した神威岬(かむいみさき)は、北海道を地図で見たときの札幌に対して左上の、日本海に向けて極端に突き出た部分に位置する。
北海道で訪れたい場所の上位にランクインする人気観光地と言われているが、主要都市から遠く離れているため、現地へ赴くには自家用車もしくは路線バスが必須だ。
札幌駅前から発着する「高速しゃこたん号」、小樽発着の一般路線バス20/21系統積丹線、岩内が発着ポイントとなる神恵内線の3路線があり、いずれも北海道中央バスが運行している。
今回注目するのは3番目の神恵内線。神威を「かむい」なら神恵内はカムエナイなのか、と思いきや、こちらは「かもえない」と読む。
神恵内線に乗りバスするためには、まず岩内へ向かわないと話が始まらない。岩内は日本海側の港町で、昔は鉄道の国鉄岩内線が通っていたものの、1985年に廃止されている。
岩内への行き方は何通りかあるが、2021年の訪問当時はJR函館本線の倶知安(くっちゃん)駅から発着している、ニセコバスの小沢(こざわ)線を利用した。
小沢線は旧国鉄岩内線の代替バスの役割を担っている。行き先は岩内ながらもバスの路線名は岩内線ではなく小沢線なので、慣れていないとちょっと戸惑う。
倶知安駅を10:20頃出発する便があり、それに乗ると11:04に岩内ターミナルに着く。距離にすると26kmくらいだ。
■出発時刻はちょうど良さそうだけど……
神恵内線の岩内側の始発は岩内ターミナルだ。15年ほど前に「ローカル路線バス乗り継ぎ旅」で通り道に選ばれた経路でもあるが、系統廃止や減便によって今はだいぶ様変わりしたようだ。
2023年現在のダイヤでは平日1日5本が設定されている。観光地行きにしてはちょっと少ないかな? と考えたくなるが、まだ続きがある。
この5本のうち、神威岬まで行くのは12:40発の1本だけなのだ。時間的には丁度良い感じがするとはいえ、1日1回しかチャンスがないということは、観光目的の路線というようりも、ついでに観光地まで行く生活路線、なのかも。
さらに、冬場は神威岬から14km手前の「川白(かわしら)」止まりとなる。神威岬へ行くのに神威岬線と呼ばないのは、あくまで神威岬はオプションであり、川白や更に手前にある神恵内地域への交通手段がメイン、ということなのだろう。
神威岬行きの便は毎年大体4月中旬〜10月中旬頃までの約半年が運行期間となっており、2023年のシーズンは4月18日からとのこと。前述の「高速しゃこたん号」と20/21系統積丹線も似た要領だ。