先日、筆者のところへ、自動車保険を契約している保険会社からお詫びの文書が届いた。その内容は、お客様情報が、外部に漏洩したというものだ。今回の大手4社で250万件を超える情報漏洩事案が発生した理由は、これまでの当たり前だった古い商習慣にあった。問題事案の背景を探る。
文:佐々木 亘/画像:ベストカーweb編集部、AdobeStock(トップ写真=Sansern@Adobestock)
【画像ギャラリー】自動車保険で個人情報流出ってマジか! 乗合代理店よりもネットを使うと防げるの?(3枚)画像ギャラリー平等ではなかった乗合代理店の対応
まず、乗合代理店というのは、複数の保険会社の保険商品を取り扱う代理店のことを指す。一般に自動車ディーラーでは、2~4社ほどの自動車保険商品を取り扱うため、ディーラーも乗合代理店の一つだ。
ディーラーの営業マンがおススメする自動車保険は、取り扱いのある保険会社のいずれかの商品である。ここには縛りが無いことが自然で、お客様に合った保険商品を選ぶことが、保険代理店の仕事のはずだが、実態は少し違っていた。
ディーラー本部では、各店舗に対して「推奨保険会社」を定め、その保険会社の自動車保険をより多く取り扱うように求めていたのだ。また、多くの自動車ディーラーは、大手損害保険会社からの出向社員を受け入れており、保険という金融商品を扱うにあたっては、少し特定の保険会社との関係が深くなりすぎていたのだろう。
【画像ギャラリー】自動車保険で個人情報流出ってマジか! 乗合代理店よりもネットを使うと防げるの?(3枚)画像ギャラリー当たり前に行われすぎた情報共有
今回の問題、筆者が仮にディーラーの中にいたとしたら「これはダメなことだったんだ」と、改めて知らされていた立場だったと思う。それほどまでに、自動車ディーラーの中では当たり前の中に情報漏洩が発生していたということだ。
まず、基本的にディーラーの営業マンは、クルマを売ることには長けていても、保険を売ることには慣れていない。ただ、ディーラー自体の収益構造は、ここ10年で大きく変わり、自動車保険獲得に伴う手数料収入は、無視できない存在になってきている。
営業マンは、苦手でもクルマを売るタイミングで保険のセールスを行わなければならないし、ディーラー本部は保険獲得がスムーズに進むよう策を練る。
策の一つが、損保担当者の支援だ。先に挙げた各店舗の推奨保険会社の社員が、ディーラー店舗に出入りし、保険契約獲得までのサポートを行っていたのだ。このサポート、実にディーラー営業マンにとってはありがたいものだった。
応酬話法や獲得スキームを得られるほか、乗換え提案に使う見積書まで作成してくれることも。ただ、これが情報漏洩の原点なのである。
例えば、推奨保険会社Aの出入りする店舗に、B社の保険を他代理店で契約しているお客様が新車を購入しにやってきたとしよう。自動車保険の乗り換えについても前向きに検討してくれており、現契約の証券写しも取得済みだ。
この状況になれば、ディーラー営業マンはお客様(B社)の保険証券写しを、サポートをしてくれるA社の社員に見せる。場合によってはメールに添付して見積もり作成依頼を出すということもあっただろう。
ディーラー営業マンはお客様に良い提案をするため、サポートしている損保社員はディーラー営業マンのために動き、誰も悪いことをしている感覚はない。ただ、これが個人情報保護法の規律に抵触する事態となっていた。
この問題は、過剰な支援や、自動車ディーラーの業界における特殊な商慣行が起こしたものとも言えるだろう。
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