【トヨタとホンダの20年戦争】インサイトはなぜプリウスに勝てないのか!?

絶対王者となったプリウスに大敗を期したインサイト

 その3カ月後、累計販売台数100万台の偉業を達成したプリウスの3代目が、ベールを脱いだ。ファンの期待は大きく、正式発表を前に、なんと8万台ものオーダーが舞い込んだのである。

 技術的なハイライトは、エンジンを1.8Lに拡大し、モーターの力を増幅するリダクション機構を採用したことだ。10・15モード燃費は38km/Lを達成し、ホンダを驚かせた。

エコカーとして、大きな支持層を獲得したプリウス。2009年の3代目登場では、8万台の予約注文を抱えるほどに。

 2009年、プリウスはエコカー補助金やグリーン税制の援護もあり、20万8876台を販売して、ベストセラーカーに輝いている。インサイトも、9万3283台を売ったが、2010年は3万8000台ほどに減少。これ以降はジリ貧となり、販売を大きく落ち込ませた。結果、2014年春に生産を終了した。

 インサイトが不発に終わったのは、プリウスより街中の燃費が悪いことに加え、窮屈なパッケージングと安全装備の煮詰めが甘かったからである。挙動安定制御システムの非装着車があるなど、プリウスより割高に感じた。

 これに対しプリウスは、モデル末期まで好調をキープして、カローラに代わる国民車へと成長を遂げている。2009年6月から2010年12月まで、19カ月連続して新車販売台数トップに君臨し、2010年は販売台数を31万5000台以上に伸ばした。2011年と12年も販売は年間トップだ。2013年は、同じトヨタの安価なハイブリッドカー「アクア」に僅差で首位の座を奪われたが、その差は1万台もなかった。

新たなライバル登場も見事な巻き返したプリウス

 リーマンショックの後に落ち着きを見せたガソリン価格が、再び高騰に転じ、ユーザーが燃費にこだわったことも、プリウスの好調な販売を後押ししたと言えるだろう。燃費のいいクルマに乗り、環境負荷を減らしているという美意識と優越感が得られる。これは、プリウスの魅力のひとつだ。だからその後も、アクアに続く販売2位の座を守り続けた。

 続いてプリウスがフルモデルチェンジするのは、2015年12月だった。4代目は3代目のキープコンセプトだが、大幅に商品性を高めて登場、アクアから販売台数首位を奪還する狙いがあった。

 新世代のTNGAプラットフォームの採用によって走りの実力は大幅に高められ、乗り心地もよくなっている。自慢の燃費性能にも磨きをかけ、厳しくなったJC08モードで40km/Lを超える燃費を叩き出した。

 2016年にはベストセラーカーに返り咲き、前年の2倍近い販売台数を記録している。2017年もトップの座を守った。2018年はe-POWERを投入した日産のノートとアクアに負け、3番手となっている。

 3代目ほど販売台数が伸びず、飽きられるのも早かったのは、斬新すぎるデザインが一因だったようだ。そこで2018年の末に内外装のデザインを変更した。この軌道修正が功を奏し、2019年には販売台数トップの座を奪い返すことに成功するのである。

2015年登場の4代目トヨタ プリウスは、新たなクルマ作りとなるTNGAが話題を呼ぶ一方で、個性的なスタイルが賛否を呼んだ

インサイトの復活で反撃を狙うも……

 プリウスがマイチェンした2018年12月、インサイトは復活を遂げ、反撃に転じた。3代目は4ドアセダンになり、ボディも3ナンバーサイズ化。ハイブリッドシステムは、i-MMDと呼ぶ2モーター式のスポーツハイブリッドに進化させている。これは、熱効率40%を超える1.5Lの直列4気筒DOHC・i-VTECエンジンに、駆動用と発電用の2つのモーターを組み合わせたシリーズハイブリッドだ。

 素直な乗り味の大人のハイブリッド車に仕立てられているが、販売は低迷している。2020年2月の新車販売台数は、プリウスが6240台であるのに対し、インサイトは、わずかに361台と大差をつけられた。デザインは凡庸だし、全幅も1820㎜だから駐車などで持て余す。四方の視界は今一歩だし、後席もそれほど広くない。価格も332万円からと、先代と比べると割高な印象だ。ファンの多くは、高価で大柄なインサイドを望んでいなかったのである。

 3代ともインサイトはプリウスに完敗した。「つまずき」の理由は、いくつか考えられる。ひとつは、パッケージングのまずさと分かりにくいデザインだ。もうひとつは、ハイブリッドシステムの燃費で、2代目からはプリウスに引き離された。装備や燃費などを加味すると、買い得感の薄い価格設定も、足を引っ張っている。

 とくに最新のインサイトは、日本の熱狂的なホンダファンが欲しがるエコカーではない。海外より厳しい目を持つ日本のユーザーが欲しくなる、魅力的なデザインとサイズのハイブリッド車を生み出さないと、ホンダに愛想をつかす人が増えていくはずだ。これが中途半端だと、多くの人は「神話」を持っているプリウスを選ぶし、ホンダ好きはフィットを選ぶ。Cセグメントのハイブリッド正統派モデルに、ヒット作が出ない限り、ホンダの春は遠い。

再び復活を果たし、2018年に登場した3代目ホンダ インサイト。上級ハイブリッドカー路線を目指し、プリウスに挑むも、大敗を期している
再び復活を果たし、2018年に登場した3代目ホンダ インサイト。上級ハイブリッドカー路線を目指し、プリウスに挑むも、大敗を期している

【画像ギャラリー】プリウスVSインサイトの歴史を振り返る

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