2026年7月16日、日産自動車は4代目となる新型エルグランドを発表し、同日発売を開始した。先代型の登場は2010年で、実に16年ぶりとなるフルモデルチェンジとなる。新型エルグランドは第3世代のe-POWERと「e-4ORCE」を全車に搭載し、走りも快適性も大きく刷新。2026年5月から開始した受注は、発表前からすでに6000台を超えたという。長らく苦戦を強いられてきた高級ミニバン界の雄が、満を持して帰ってきた。
文:ベストカー編集局長T、画像:日産自動車、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】新型エルグランドの豪華さが一発で分かる画像一覧(32枚)画像ギャラリー王者の記憶、市場を切り拓いた初代の勢い
「新型エルグランド」という名前を聞いて、「王者の帰還」というイメージを持つ読者も多いのではないか。初代E50型が誕生したのは1997年5月のこと。当時、日産は月間5000台という販売目標を掲げていたが、フタを開けてみれば実績は月1万5000台超という驚異的な数字を記録した。FRレイアウトを採用した堂々たるボディに、押しの強いフロントマスクをまとった「ハイウェイスター」が人気を博し、それまで存在しなかった「高級ミニバン」というジャンルそのものを、エルグランドは自らの手で創り出したのである。
まさに王者の風格だった。ライバルらしいライバルもいない中、エルグランドは高級ミニバン市場に君臨し続けた。2002年5月21日には2代目E51型が発表され、さらなる進化を遂げたはずだった。
しかし、その翌日、運命を変える出来事が起きる。トヨタが初代アルファードを発表したのだ。まさにエルグランドを討つべく送り込まれた刺客のような登場だった。以後、アルファードは月6000〜7000台という圧倒的なペースで販売を伸ばし、対するエルグランドは月2000〜3000台程度と、いつしか形勢は完全に逆転してしまった。この構図は、実に20年以上にわたって続くことになる。市場を切り拓いた先駆者が、後発のライバルに主役の座を奪われていくという、なんとも歯がゆい展開だった。

長い沈黙、16年間続いた苦戦の日々
2010年8月、3代目E52型が登場する。この世代ではFF化に踏み切り、低床・低重心化を図ることで乗り心地と居住性の向上を目指した。しかし、この3代目こそが、実に16年もの長きにわたってフルモデルチェンジをしないまま販売され続けたモデルとなる。
近年の販売実績を見ると、2024年の年間販売台数は1421台。2025年初頭には月間150台前後まで落ち込んでいた時期もあった。一方、ライバルのアルファード/ヴェルファイアは合計で月9000台規模という牙城を築き上げる。かつて市場を創出した王者が、いつしか脇役へと追いやられていたのである。
それだけに、今回の16年ぶりのフルモデルチェンジには、ファンならずとも並々ならぬ期待が集まっていた。
もっとも、この16年という歳月を「停滞」と片付けてしまうのは早計だろう。市場環境は大きく変わり、電動化や運転支援技術の進歩、そしてミニバンユーザーがクルマに求める価値観も様変わりした。次にどんなエルグランドを送り出すべきか、日産の開発陣にとってはじっくりと構想を練るための時間でもあったはずだ。長い沈黙の末に飛び出してきた新型がその答え合わせをする機会が、ついに来たのである。
第3世代e-POWERとe-4ORCE、走りの真価
新型エルグランドの心臓部に搭載されるのが、第3世代のe-POWERだ。発電専用エンジンには新開発の「ZR15DDTe」型1.5L直列3気筒ユニットを採用し、最高出力103kW(140PS)を発生する。これに5-in-1電動ユニットを組み合わせ、フロントモーターは151kW(205PS)/330Nm、リヤモーターは100kW(136PS)/195Nmを発生。前後モーターを合わせたシステムとしての力強さは、発表会のスライドでも大きくアピールされていたポイントだった。
そして新型エルグランドの最大の特徴といえるのが、全車に「e-4ORCE」4WDシステムを標準搭載したことだ。さらに日産として初となる「インテリジェント ダイナミックサスペンション」を採用し、走行状況に応じて選択できる6つのドライブモードを用意する。
発表会に登壇した日産自動車のチーフビークルエンジニア一野健人氏は、この四輪駆動制御について、「この3つの技術を組み合わせるのは日産初です。そしてエルグランドにしか採用していません。特に高い旋回性と安定性を両立する四輪駆動制御システムは、GT-Rで培った全輪駆動のノウハウを生かしています」と語る。あのスーパースポーツで磨かれた技術が、ミニバンの走りに投入されているというのだから、これは見逃せない話だ。
開発の過程では、日産テクニカルセンターから徳島まで、長距離にわたる実走テストも重ねられたという。一野氏は「徳島まで実走長距離走った結果、疲労がないどころか、もっと遠くに行きたい、もっと運転したい、乗っていたいと試乗したメンバーみんなで強く感じました」と振り返った。燃費性能はWLTCモードで16.8km/Lを実現しており、環境性能と快適性を両立させた仕上がりだ。
ブレーキフィールにも注目したい。日産ブランドアンバサダーを務める俳優の鈴木亮平氏は、試乗ムービーの中でブレーキの効き方について「おおー!カックンってしないですね。ちょっとした革命じゃないですか」と驚きを口にしていた。停止直前のガクッとした揺れを抑える「スムースストップ」の効果を、率直な言葉で評価したコメントである。
さらに新型エルグランドには、世界初となる技術も投入されている。エンジン音とロードノイズの両方に対応するアクティブ・ノイズ・コントロールがそれで、走行中の車内静粛性を高めるための工夫だ。ミニバンは家族での長距離移動や、送迎など静かな車内環境が求められる場面が多い。そうした使われ方を踏まえた、地に足のついた技術投入といえるだろう。ちなみに鈴木亮平氏、試乗ムービーで新型を初めて目にした瞬間には「うわー、来た!ついに、これか。堂々としてますね。フロントグリルすごいですね。勢いがあってかっこいいけど、すごく上品」と、第一印象から素直な驚きを口にしていた。
組子グリルとプライベートラウンジな内装
新型エルグランドのデザインテーマは「タイムレスジャパニーズフューチャリズム」。フロントフェイスを飾るのは、日本の伝統工芸である組子細工をモチーフにしたグリルだ。一野氏はこのドットパターンについて「このグリルのドットパターン、車体色のひとつひとつのドットですね、これ、ひとつとして同じ大きさのものがないんです。途方もなく泥臭い作業でしたが、これによってクルマ全体の輪郭がしっかりと見えて美しく見えます」と説明する。ひとつひとつ異なる大きさのドットを丁寧に配置するという、気の遠くなるような作業の末に生まれた、日産らしい美意識の塊なのだ。
ボディサイズは全長4995×全幅1895×全高1975mmという堂々たる体躯。このサイズを活かして、内装にも新しい試みが盛り込まれた。国内モデルとしては初採用となる14.3インチの統合ディスプレイをダッシュボード中央に配置し、64色に調光可能な間接照明が室内を上質な雰囲気で包み込む。シートには乗員の体格に応じてフィットする「テーラーフィットシート」を採用し、音響にはBOSEの22スピーカーサウンドシステムを搭載。後席では3席同時にオットマンを展開できるという贅沢な仕様も用意されている。
鈴木亮平氏は後席に座った際の印象について、「おお、快適。しかも僕186cmあるんですけど、全然余裕ありますよ。……後ろも揺れないですね。静か。ラウンジにいるみたいな感じありますよ」と語った。186cmという長身の彼が「全然余裕」と言うのだから、後席の広さは折り紙付きと言えそうだ。まさに移動する「プライベートラウンジ」を目指した内装づくりが、こうした試乗コメントからもうかがえる。
689.7万円から、勝算はあるのか
価格は、エントリーグレードの「X e-4ORCE」が689万7000円、上級の「G e-4ORCE」が757万9000円。さらにAUTECHブランドのカスタムカーが824万7800円、上質さを追求した「VIP」が869万8800円という価格設定で、幅広いニーズに応えるラインナップとなっている。






































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