■メーカーの本拠地でよく売れる? 車の「地産地消」は資本主義緩入前の名残りか
ここで統計数値による中国の新車販売市場を見ていくことにする。
いずれも中国自動車販売業者協会の統計となるが、2020年1月から7月までの累計新車販売台数は931万1000台。そのなかで日本車は229万2800台となる。トップは中国車となり、2位がドイツ車(239万1100台)、そして日本車は3位となっている。以下アメリカ、韓国、フランスの順番となっている。
カローラやCR-V、RAV4がよく売れており、工場の多い広東省・広州市とその周辺で比較的多く見かけることができる。
2020年7月の統計による、中国民族系メーカーでの販売トップ3は1位吉利(ジーリー/10万7224台)、2位長安(8万2722台)、3位長城(4万4258台)となっている。
SUVでは外資との販売競争で健闘しているものの、セダンなどほかのカテゴリーでは外資ブランド車に押され気味となっている。また販売台数が多くても必ずしも“全中国”での人気車に直結はしていない。
上海汽車、広州汽車、北京汽車と、その名の通り広州、上海、北京を本拠地にしているほか、BYDは広東省深圳市、長安汽車は重慶市(四川省)、吉利は杭州市(浙江省)に本拠地を構えており、それぞれの都市とその周辺では、地元メーカー車を多く見かける。
つまり、名古屋や豊田市でとくにトヨタ車を多く見かけるといったことが、さらに大げさになっていると考えてもらえばいい。
国土が広いだけでなく、バリバリの共産主義の時代には都市間移動が厳しく制限されていた、その名残りがいまも色濃く残っていることなどもあり、新車でも“地産地消”のような需要構造が目立っているのが現状。
そのような地域の差がなくよく売れているのは外資系となる、VW(フォルクスワーゲン)グループ(アウディなど含む)やGM(シボレー&ビュイック)となっている。
中国での販売トップ3は、一汽大衆、上海大衆、上海通用(大衆はフォルクスワーゲンの、通用はGMの意味)の順番となっている。
フォルクスワーゲンといっても、華北地域の天津市にある一汽大衆と、華中地域の上海にある上海大衆のふたつの現地合弁会社がある。
北京の役所や企業の幹部は一汽アウディ製のA6を運転手付きで移動車にしているが、上海では上海大衆製のパサートとなっていたりする。
外資も含め“全中国で人気の高いモデルはこれだ”と言いきれないのが、広大で世界一のマーケットである中国市場の特徴でもあるのだ。
■統計上はよく売れているはずの日本車はどこに? 多様な販売手段が中国車を後押しか?
日本車は統計上よく売れているのだが、筆者が訪れた都市で筆者が感じた限りでは、それほど日本車がよく売れているといったイメージがないので、どこで売れているか不思議に思っている。
2010年を待たないぐらいで、すぐにテレビ通販で新車が販売されるようになり、いまではスマホなどを活用したオンライン商談や、キャッシュレス決済は当たり前となり、大手通販サイトで直接新車を購入することも可能となっている。
中古車(中国語では二手車)販売では、かつては“二手車公益市場”のようなものが設けられ、そこに業者が軒を連ねて中古車を販売していた。
しかし、強面の業者も多く、とても家族連れでワイワイと中古車選びなどができる環境でもなかったのだが、最近では専用サイト上での売却や購入がメインとなっている。
流通促進の意味もあり、かつては例えば北京で黒竜江省ナンバーの中古車を購入すると、黒竜江省までクルマを持って行かないとナンバー変更できなかったのだが、それはなくなっているとのことである。
新車の販売促進をはかる意味でも、中古車の流通促進策も強化しており、海外への中古車輸出も積極的に行われており、ロシア国内などでは数多く見かけることができる。
自動車生産拠点、販売市場ともに短期間で世界一となった中国では、新車販売現場も急速に“先進国化”している。
もはや、0%金利ローンや、キャッシュバックなどのインセンティブは当たり前で、新車販売の利益だけではとてもではないがディーラーはやっていけない状況となっている(値引き競争もハンパではないようだ)。
そのためディーラーを経営するオーナーの一部からは、「日本車はなかなか壊れないので旨味(修理入庫などが少ない)が少ないので困る」といった声もあるとのこと。
急速に販売環境の変化する中国でどのように新車ディーラーが生き延びていくのか(販売は通販メインにし、サービスステーションに特化するなど)が、数年後(数十年後?)の日本の新車ディーラーの姿を物語ることになるだろうと考えている。
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