欧州で48Vバッテリーを使った「マイルドハイブリッド」が急増している。
日本仕様の欧州車も、2021年モデルからマイルドハイブリッドメインになっていく傾向。日本であればハイブリッドと言えばトヨタの「THS II」に代表されるフルハイブリッドだ。日産「e-POWER」やホンダの2モーター式(e:HEV)もフルハイブリッド。
マイルドハイブリッドは、トヨタなどのハイブリッドに対して、モーターの出力は低く、あくまでエンジンが主体となる、いわば簡易型のハイブリッドシステム。それにも関わらず、なぜ今、欧州を中心とする世界で急増しているのか。国沢光宏氏が解説する。
文:国沢光宏/写真:BMW、SUZUKI、Daimler AG、TOYOTA
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■なぜマイルドハイブリッドは急増している?
なぜマイルドハイブリッドなのか? 理由は簡単。2021年から欧州のCAFE(企業平均燃費)が厳しくなるからです。販売している全ての乗用車の平均燃費をWLTCモードで17.6km/Lにしなければならない。
規制値未達となったら罰則金を支払わないのだけれど、けっこう金額になってしまう。大雑把に言って、17.6km/Lを10%下回る15.8km/Lだとすれば16万円!
逆に考えると、15.8km/Lのクルマを17.6km/Lまで引き上げたら16万円払わなくて済む。皆さんが自動車メーカーならどうするだろう?
一番簡単なのは、16万円以下の投資で燃費を10%改善させることだと思う。マイルドハイブリッドを見ると、正しく最低減の投資で燃費を改善しようというシステムなのだった。
48Vのマイクロハイブリッドは非常にシンプルな構成になっている。日産やスズキのマイルドハイブリッドなどと同じく、オルタネーターをモーターとしても使う。
減速時は発電機として回生エネルギーを取り、加速時に電気を流しモーターにします。14馬力くらいのモーターであれば、10~15%くらい燃費を改善させる効果を持つ。
リチウムイオン電池を使うことにより、ハイブリッド用バッテリーも小型化できる。欧州車が採用しているシステムを見ると、普通の12Vバッテリーくらいのサイズしかない。
また、配線に代表される電装関係のパーツは、高価な高電圧用じゃなくて通常規格で済む。つまり大がかりなアイドルストップ装置といったイメージ。
オルタネーターを大型化し、小さいリチウムイオン電池と組み合わせることで燃費改善が出来てしまうのだった。10%改善で16万円の罰則金を払わなくて済むワケ。
■マイルドHV化はユーザーのコスト負担増も「なし」
さらにユーザーからすれば燃費が10%良くなることで燃料コストも下がる。欧州なら20万km走ることだって珍しくないため、燃費良くなったぶんで回収可能。
何と! ユーザーは16万円高くなったとしても、燃料コストの差でカバーできてしまう。環境にやさしく、総合コストで有利という理にかなったシステムだと思う。この状況、燃費悪いクルマでも同じ。
10%燃費良くなれば、罰則金も車両価格の増加分より確実に少なくなります。ベンツSクラスや、車重1700kgある燃費悪いSUVだって採用する。
ということで欧州車はCAFEが厳しくなる2021年仕様から軒並み48Vのマイルドハイブリッド車を増やし始めたのだった。
日本勢も欧州仕様のマツダやスズキは大量生産によってコストダウンされたボッシュやコンチネンタルなどが開発&供給するヨーロッパ製のマイルドハイブリッドシステムを導入している。
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