北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。第16回は、エゾタヌキの子育てです。
初夏に出産するエゾタヌキは、夫婦共同で子育てをするのが特徴です。しかも、オスはお手伝いレベルではなく、がっつり育児を担います。
クマの子のように真っ黒で生まれてきて、徐々に成長していく姿を、とくとご覧ください。
写真・文/佐藤圭
画像ギャラリー……お腹がポンポコしてない! これがリアルタヌキ!!
ヒグマのうんこかと思ったら……
エゾタヌキの子供は、夏の初め、6月末頃に巣穴から出てきます。キタキツネの子供が4月末くらいから巣穴から出てくるのに比べるとずいぶん遅いです。
キタキツネとのエサの取り合いを避けるためでしょうか? タヌキに聞いてみたいところです。
エゾタヌキの毛色は、灰色がかった茶で、目の周りから頬にかけて黒いのが特徴ですが、巣穴から出たばかりの子ダヌキは、全身真っ黒けっけで、子グマのミニチュアのようです。
巣穴では、お父さんタヌキが巣の見張りをして、お母さんは一日中、エサを探すため出かけていきます。栄養を蓄えて授乳するためだと思います。
食べ物は、カエルやヘビ、ミミズ、ザリガニ、昆虫類、植物の果実、種子などなんでも食べる雑食性です。ネズミ等の小動物も食べますが、俊敏な動物を捕まえるのはあまり得意ではないようです。
エゾタヌキには、「溜め糞(ふん)」という面白い習性があります。タヌキは、集団で同じところに糞をするんです。共同トイレみたいなものでしょうか。
道路脇にドカンと大きな糞のかたまりがあり、「ヒグマのうんこかな?」と観察してみると、古い糞と新しい糞が層になっています。それで、これは「タヌキの溜め糞」だとわかります。
基本的に夜行性ですが、ポカポカ暖かい日は、みんなで巣穴から出てきて昼寝をしているのを見たことがあります。日中の巣の中は暑いのかもしれません。
子ダヌキたちは、毎日、ケンカをしています。それが、狩りの仕方を学ぶ練習になっているのでしょうね。
ある程度子ダヌキが大きくなると、巣が小さくなるため、引っ越しをします。夏から秋にかけて何度か引っ越しを繰り返し、冬になるころには、子ダヌキたちは成人します。
冬は、他の家族も集まり集団で生活します。寄り添って眠ると温かいとわかっているのでしょうね。
佐藤 圭 Kei Satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。フランスのアウトドアブランド「MILLET」アドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
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