偉大な先代を超えられず!? 不遇な時を過ごしたクルマたち

バブル経済の申し子は後継車育成に成功せず。「日産FY32型シーマ」

偉大な先代を超えられず!? 不遇な時を過ごしたクルマたち
先代の魅力でもあった圧倒的な加速性能を自然吸気エンジンで実現するため、4.1リッターの大排気量V8エンジンが搭載された2代目FY32型シーマ

 日産が従来の高級セダンであるセドリック、グロリアの上位機種として1988年にリリースした新型ラグジュアリーセダンが初代FY31型シーマ。当時の日産車ではプレジデントと並ぶ最上位機種にあたるシーマは、“セド・グロ”のプラットフォームをベースに、3ナンバー専用のボディを搭載してパワフルな3リッターV6ターボで武装する。

バブル経済が頂点に達しつつあった時代、スペイン語で「頂点」を意味するシーマの車名を持つこのクルマは、4年間で実に13万台弱を販売。あまりの売れ行きに「シーマ現象」を巻き起こしたとまでいわれている。

 そんな爆発的なヒットモデルとなった初代シーマの後継車FY32型は1991年に販売を開始。FY32型の開発時点ではまだバブル経済は堅調であり、それは車体の内容にも反映されていた。

 ボディはFY31型のセンタピラーレスからピラー付きに変更され、エンジンには4.1リッターV8自然吸気タイプを用意。内装も豪華になるなど、先代に負けない装備が盛り込まれた。だが、先代のようなインパクトはなく、シーマ現象を起こしたFPY31型並みのヒットモデルにはならなかった。

 以降のモデルチェンジでも初代を超えることはできず、4代目F50型をもってシーマの生産はいったん中止される。しかしその約2年後の2012年に、シーマはハイブリッド専用の5代目HGY51型となって復活を遂げることになる。

伝説のハイチューンカーが後継に影を落とす。「日産N15型パルサー」

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3&5ドアハッチバックに、4ドアセダンも用意されるなど、バリエーションが豊富だった5代目パルサーN15型。決して不人気車ではなかったが、先代には勝てず

 今回の記事で日産の車両を紹介するのもこのパルサーで3台目。好意的に考えると、これはかつての同社が成功にあぐらをかかず、果敢なモデルチェンジに挑戦した証でもある。そして今回紹介する最後の日産車は、派手な展開を行った先代に比べて地味なイメージで損をした5代目パルサーのN15型だ。

 先代のN14型パルサーは1990年に登場。このモデルからガソリンエンジン仕様はすべてDOHC化され、パワーと効率アップを達成。従来のFFに加えてシリーズ初の4WD車もラインナップされた。こうした攻めの姿勢の象徴ともいえるのが、WRC(世界ラリー選手権)の参戦を前提に開発されたハイパフォーマンスモデルの「GTI-R」だ。ターボで武装した2リッター直4エンジンは230psを発生し、ボディには空力チューンが施されるなど、それまでのパルサーのイメージを覆す出で立ちは、多くのファンから支持された。

 そして1995年にN15型が登場する。このモデルから欧州での販売名はアルメーラに変更となり、ABSやエアバッグの装備など、安全性能が強化されている。クルマとしての素性はよく、モータースポーツでも活躍。エンジンパワーが大きいことも通好みのユーザーには歓迎された。しかしN15型の印象はやはり地味であり、90年代後半に入ると、パルサーよりもコンパクトなモデルや、RV、ミニバンなどに人気を奪われるかたちで販売数も伸びず。日本国内での販売は2000年9月をもって終了している。

オリジナルモデルがあまりに偉大だった。「フォルクスワーゲン・ニュービートル」

偉大な先代を超えられず!? 不遇な時を過ごしたクルマたち
RR車だった初代のフォルムを継承するためか、エンジンを搭載するフロント回りの設計などに無理があり、使い勝手が良いクルマではなかったニュービートル

 1945年に本格的な販売がスタートしたドイツ・フォルクスワーゲンのタイプ1は、当時としては破格の低価格モデルとして登場し、その利便性の良さとタフな車体、そして何より後に「ビートル」と呼ばれる愛くるしいスタイルで、ドイツはもとより世界中で愛される大衆車となった。

ビートルの生産は2003年まで行われ、累計生産台数はなんと2153万! もちろんこれはいまだ破られない世界記録である。

 その初代ビートルの生産終了に先行する1998年、初代の面影を残しながら現代的に大胆な変更が行われた2代目ニュービートルの販売がスタートする。

 フォルクスワーゲンでは、ニュービートルの開発にあたり自社の4代目ゴルフのプラットフォームを利用した。初代の特徴でもあったリアエンジン・リアドライブのRRはより一般的なFF方式に変更され、全幅も200mm近く拡大。初代が開発された1930年代とは、自動車を取り巻くすべての環境が異なっていたため、これは致し方ない選択でもあった。

 しかし、ニュービートルはルックスこそ初代に似せられているものの、やはりまったく別のクルマであり、初代のようなヒット車にはならず2010年に生産を終了。さらにその後継車たるザ・ビートルも短命なモデルに終わった。

 今回紹介したモデルは、人気面や売り上げでは不調であっても、単体で見ればよくできたクルマたちである。ただし先代が傑作と呼べるモデルばかりであり、登場した時代の空気とマッチしなかったケースもある。そういう意味において不遇な存在に甘んじているが、それがクルマとしての価値を下げることはない。

【画像ギャラリー】偉大なる先代を振り返ろう!

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