■技術の進歩とドライバーの役割
技術が進歩することで自動車の価値が変化した。価値の変化に伴い、それを扱う人であるドライバーの役割も変化している。最も顕著なものはドライブレコーダー映像の警察や報道への提供である。位置情報と共に映像を記録でき、携帯電話によりいつでも連絡できる自動車は今や「移動する防犯カメラ」という地域の安全を守る役割を担うようになった。
役割の変化がもたらすドライバー自身の自覚が、安全運転の確行、安全な社会の実現に大いに役立つものと考える。技術の進歩がもたらすドライバーの役割の変化とは図「新しい時代のドライバーの役割」のようになる。
カーナビ(GPS)により現在位置が判る、携帯電話などのINTにより、いつでも連絡ができ、情報を共有できる環境要素の上に、ドライバーは救命、地域の安全、災害救助の役割を担うことができるようになった。
救命の面では2004年7月以降、一般人がAEDを使用した心肺蘇生を行えるようになり、現在までに市街地の500m四方に1台のAEDが設置されているほど普及したことで、日本人の突然死の原因のうち約95%を占める心停止に誰もが対応できるようになった。2005年には救命用止血帯が開発され、海外では写真のように「Stop the Bleed Set」としてAEDに併設されるようになった。
地域の安全では先述のドライブレコーダーの普及が大いに役だっている。小さなペンライトでも強力な光を照射できるようになったことは、犯罪者による攻撃を離れた位置から抑制することを可能にした。強い光は薬物中毒者にも有効に作用するため、高輝度ライトは車内に1本は備えておきたい。
災害救助では、蓄圧式消火器は破裂のおそれが極めて少なく、圧力計により使用可能状態を一目で確認できる上、軽い力でレバーを操作でき、消火剤の噴出も制御可能になった。レスキューツールにより窓ガラスを誰でも破砕できるようになり、新素材によるパラシュートコードは直径約4mmの細さながらも550ポンド(約250kg)の重量に耐える。ペットボトルも溺水者の救助など実に多くの使い道がある。
事故や災害による外傷、外傷ではない心肺停止の救命において救命の鍵となるのは図「救命の尺度」にあるように時間である。人は車と違って生き物だからだ。
東京マラソンでは現在までに発生したランナーの11例の心肺停止において100%の社会復帰を達成している。これは3分以内に治療を開始しているためで、早く救命の手を差し伸べることが傷病者の運命を決定づけるほど重要だ。
「早い」とは「1全員ができる」「2適切な道具を備える」「3制度を整える」ことで実現できる。災害対応においても表『災害対策「自助、共助、公助」SABACA “サバカ”の重要度の割合』のように、自分ができることが最も重要で、これはコロナ禍により顕著になった。新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした変化は、自分の行動により他人を感染させないように心がけるように求める「誰もが他人の命に責任を持つ時代」の到来だ。
■発見した「全ての人」が虐待死を防ぐ「最後の砦」
コロナ禍により史上最悪の大不況と、倒産・廃業・失業者の爆発的増加が懸念されている。失業者は265万人、隠れ失業者は517万人に達し、失業者増加に伴う自殺者は最悪の場合、年間4万人に達し収束に2年を要する。年間自殺者数が2019年度の水準に戻るまで19年~27年かかり、その間に増加した自殺者数は累計14万~27万人になるという試算もある※。
(※藤井聡 京都大学大学院教授らの研究)
失業率の1%の増加に伴い自殺者は2400人増えると言われる。しかも日本の自殺者数の統計は実態を表していないとWHOから幾度も勧告を受けている。不幸は決して単独でやってこないものだ。
激増が避けられない虐待・暴力には早期発見・早期対応が重要だ。全ての人に、早期発見と通報・通告の義務がある。救急隊・病院・学校・養介護施設・児童福祉施設・障害者福祉施設など虐待・暴力を発見しやすい立場にある人には、より積極的な早期発⾒及び通報・通告の義務がある。「傍観者は無責任な当事者」との意識改革が必要だ。
虐待・暴力とは初期段階は目立たなく行われるものであるから、人目もはばからずに行われている状態は命の危険がかなり差し迫った状態である。路上で発見したならば直ちに録画して通報する。通報先は児童虐待防止法、配偶者暴力防止法、高齢者虐待防止法、障害者虐待防止法などそれぞれに定められており、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」などの制度もあるが、わからなければまず警察に通報だ。
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