ダイムラー・トラックグループのメルセデス・ベンツ・トラックスでは現在、大型バッテリーEV(BEV)トラック「eアクトロス」の量産、およびバリエーションの拡大を進めています。
そんな同社ですが、2022年5月末に開催されたドイツ環境機器見本市「IFAT2022」において、eアクトロスをベースとする「フックローダー(脱着ボディ車の一種)」と「スキップローダー(同)」を初めて公開しました。
どちらの車両も、特装車として分類されており、その電動化は簡単ではないとされていますが、この2台は「ある革新技術」を使って完全電動化を実現しています。それは一体、どんな技術なのでしょうか?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、緒方五郎 写真/メルセデス・ベンツ・トラックス
【画像ギャラリー】スキップローダー車とフックローダー車の違いは? IFAT2022に登場した「eアクトロス」脱着ボディ車をチェック!!(10枚)画像ギャラリートラックの架装物は油圧で動いている!
公開された「eアクトロス」は、利用可能容量114kWh・使用可能容量97kWhの高電圧バッテリー3基を搭載する車両総重量(GVW)26+1t級6×2モデル「eアクトロス300」をベースとする2台で、それぞれ異なった方式のコンテナ脱着装置を架装。IFAT2022では廃棄物輸送用に提案されていました。
「それぞれ異なった方式のコンテナ脱着装置」のなにが違うかについては、ここでは省略しますが、どちらもダンプ、ミキサー、クレーン、塵芥車などと同じように油圧を使って架装物を動かすのが特徴です。
大きな油圧パワーが必要な架装物を搭載するトラックの場合、エンジンの力で架装物専用の油圧ポンプを回して油圧パワーを得ています。そのため、動力伝達システムからエンジン出力をポンプへ引き込むための装置が搭載されます。これをPTO(パワー・テイク・オフ)装置といいます。
ところがBEVの場合、ディーゼル車などとは動力伝達システムが大きく異なるので、いままでのPTO装置を取り付けることができないのです。「エンジンがなければバッテリーで動かせばいいじゃない?」と言われそうですが、結論からいえばその通りです。
しかし、BEVは「走ること」だけに開発・設計されているので、電気、それもBEVの高電圧システムを走り以外の用途で使うためには、そのための新技術と装置が必要になるのです。
10年以上前に、ハイブリッドトラックをべースとした塵芥車(ごみ収集車)の電動化技術が確立されました。これは、BEVごみ収集車にも応用されうるものですが、塵芥車メーカーが個別に開発したものであり、汎用化は難しいと考えられます。
いっぽう、ダンプやクレーン、フックローダー、スキップローダーなどへ幅広く対応できる汎用の電動PTO(ePTO)は、そもそも市販前のBEVトラックが、どのようなスペック・性能で実用化されるのかが不明だったことから、実用化することができなかったとみられます。
ところで「油圧がなければ直接電気モーターで動かせばいいじゃない?」とも言われそうですが、電力を油圧パワーに変換して使ったほうが所要のパワーを効率的に得られることや、高い信頼性が確立されたコンポーネントを流用することができ、コスト上昇も抑えられるため、現時点ではその方向はないものと思われます。
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