空母化で注目の護衛艦「いずも型」。そもそも空母とはどんな船?

■様々な空母の分類法

 空母にも様々な分類法がある。単純に艦の大きさ、満載排水量で分類すれば大型空母(満載排水量が5万トン以上の空母)、軽空母(満載排水量が2万トン以下の空母)となる。また役割で分類するなら、攻撃空母(攻撃機を主力として搭載する空母)、護衛空母(味方の商船などを護衛し敵潜水艦や水上艦艇の攻撃から守るための空母)、対潜空母(対潜水艦戦闘用の航空機を搭載、運用するための空母)、ヘリ空母(多数のヘリコプターを搭載、運用するための設備を持つ空母)などである。

 また艦載機の発着艦の方式で分類することもできる。CTOL機を運用するために発艦装置にカタパルト、着艦装置にアレスティング・ギアを使用するCATOBAR(Catapult Assisted Take Off But Arrested Recovery)方式の艦。発艦装置にスキージャンプ甲板、着艦装置にアレスティング・ギアを使うSTOBAR(Short Take Off But Arrested Recovery)方式の艦。STOBAR方式ではCTOL機を運用できるが、発艦のための滑走距離が長くなり、最大離陸重量も制約されてしまう。艦載機の発着艦のために特別な艤装を備えるCATOBAR方式やSTOBAR方式の空母は全長が300m以上、満載排水量も6万トン以上の大型艦になる。

 一方、垂直離着陸が可能なVTOL(Vertical Take-Off and Landing Aircraft)機や短距離離陸と垂直着陸を行うSTOVL(Short Take-Off/Vertical Landing)機を運用する空母は全長が200m前後、満載排水量が2万トン前後で軽空母と呼ばれる。発着装置としてスキージャンプ台を装備する艦もあるが、ほとんどの艦で発着艦のための特別な偽装は持っていない。ちなみにイギリス海軍の最新鋭空母クイーン・エリザベス級は満載排水量が6万トン以上と大型艦だが、STOVL機を運用している。CTOL機とSTOVL機の発着艦の方法はイラストで解説しているので参照されたい。

STOVL機を採用するいずも型
STOVL機を採用するいずも型

■空母を発達させた3つの発明

 今日の原子力空母のように、空母の存在を巨大で強力な戦力を持つ水上艦に発展させた要因となった発明は、蒸気カタパルト、アングルド・デッキ、ミラー・ランディング・システムの3つといわれる。

 これらは第2次世界大戦当時のように、レシプロ機が艦載機だった時代にはそれほど重要視されなかった。

 離陸最大重量ギリギリまで武装を施したとしても、空母を風上へ向け、風速と艦載機の滑空速度を合成すれば、何とか機体を空中に浮かせられるだけの必要最小速度(失速速度の1.2倍程度)が得られたからだ。また、着陸に関しても着艦速度がそれほど速くなかったので、着艦信号士官の振るパドル信号だけで済んだわけだ。

 しかし、艦載機がジェット化してくるとそうはいかなくなった。機体は大型化し、武装や燃料などの搭載量も、レシプロ機時代とはくらべものにならないほど増加したからだ。重量が増せば空母を大型化したとしても追いつかない。重量増加に加え、ジェット化により、艦載機のほうも飛行性能向上のため機体形態が大きく変化し、発艦に必要な最小速度がずっと大きくなってしまったのである。

 こうした問題点を解決したのが、先に挙げた3つの発明だった。

 カタパルトは、初期の頃は油圧式や火薬式であったが、蒸気式に改良されている。今日の原子力空母に装備されている蒸気カタパルトは、長さ約90mあり、重量35.4tの機体を約255㎞/hまで一気に加速して発射することが可能だ。

 ミラー・ランディング・システムというのは、着艦の誘導装置のことだ。ジェット機の運用で着艦速度が速くなり、艦載機は、着艦信号士官のパドルが識別できないほど離れた距離から着艦パターンをとらねばならなくなった。そこで鏡と複数のライトを組み合わせ、適正なグライド・スロープ上に乗って降下しているかどうかを認識させ、安全に着艦を誘導する。現在ではより進化した、改良型フレンネル・レンズ光学着艦システムが用いられている。

 またアングルド・デッキは、着艦速度が大きくなり着艦距離が延びたために考え出されたもの。いずれも今日の空母では必要不可欠な装備となっている。

CTOL機を運用するアメリカのジェラルド・R・フォード
CTOL機を運用するアメリカのジェラルド・R・フォード

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