500㎞/hで疾走する超電導リニアに運転席はない!!
超電導リニアの車両はL0系と呼ばれる。5両編成の東京方2両は2020年に登場した「改良型」と呼ばれる仕様で、営業運転時の仕様に向けて進化したものだ。先頭車両の全長は28mで流線型のノーズ部は15mの長さ。初期型に対し先頭部の空気抵抗を13%低減する新形状としたことで消費電力を低減するとともに走行時の風切り音を低減した。
客室部は中央の通路を挟み、2人掛け座席が左右に並ぶ配列。新幹線普通車の2列+3列の座席配置とは異なり在来線特急のような配列だ。先頭車は6列で定員24名、中間車は最大15列で60名の定員となる。座ると前後間隔は広く快適。リクライニングは最新のN700S系のグリーン車のように背もたれに連動して座面も沈み込むタイプでゆったり座れる。
広さ感としてはN700系列の普通車以上だが、グリーン車ほどではない、といった印象。それでも座面幅は477mmあり、N700Sのグリーン車の座席幅480mmに近い広さ。ただ、背もたれの重厚感や座面のクッション厚などはグリーン車には及ばない。
先頭部には運転席らしき窓が見えるが、実はこれ、前方を映すカメラと前照灯が格納された「窓」で、ここに運転士は乗車することはない。車両に運転士は乗務しないが、超電導リニアは指令室からの遠隔制御で走行する。前方視認はカメラにより指令室でモニタリングされるのだ。走行は自動運行システムによって管理され、高い安全性が担保されるのだ。
急勾配もものとせず、2分30秒で500km/hに達する!!
加速は力強く、グイグイ速度を上げていく。
山梨リニア実験線は総延長42.8kmで、試乗会の基地となる山梨リニア実験センターは名古屋方、山梨県笛吹市の実験線起点から27.6kmの地点にある。まずは東京方面に向かって最高速250km/hで走行。35.4km地点に到着して折り返す。
走り出すとグイグイ速度を上げ、あっという間に150km/hを超えタイヤが格納される。この区間は下り坂ということもあるのだろう。スマホのストップウオッチで確認すると、わずか80秒程度で東海道新幹線の最高速度285km/hに達し、1分56秒で400km/hを超えた。まったく加速感に衰えは感じることなくモニターに表示されるデジタル速度計の数字は上がっていく。振動はほとんど感じない。音も小さくシャーと聞こえる程度だ。速度計の表示が500km/hを示した! トップスピードに達するまでの時間は2分30秒だった。
笛吹市の実験線起点に到着すると、今度は東京方に向かって折り返す。ここからがまた見どころなのだ!!
実はこの区間、40パーミルの急こう配なのだ。これ、1000m走って40m高度を上げる勾配のことなのだが、一般的な鉄道では25パーミルと言えばかなりの急こう配。東海道、山陽新幹線の最大勾配は20パーミルに抑えられている。博多から鹿児島中央を目指す九州新幹線には、博多駅を出ると最大勾配35パーミルの筑紫トンネルがあるのだが、そのため博多以南には8両編成全車電動車の専用編成しか入ることができないのだ。これよりもきつい勾配を、超電導リニアはグイグイ加速しながら駆け上っていく。鉄のレールと車輪の摩擦力に依存しない、超電導リニアならではの利点のひとつだ。
さらに勾配区間には8000R(半径8km)の曲線も存在する。設計上、8000Rカーブは500㎞/hのトップスピードのまま巡航できるということで、急な勾配を大きなカーブを描きながら超電導リニアは速度を高め、発進から3分かからず500km/hに達した!!
感覚的には東海道新幹線の285km/hのほうが速く感じる。レール上を車輪で走っているわけではないので、床下からはほぼ無音。パンタグラフもないので風切り音も大幅に抑えられている。車内にいると振動はほぼ感じない。文字通り空を飛ぶように、滑るように走っている。一瞬トンネルを抜けて外の風景が見えたのだが、500km/hの感覚はない。というか、わからない。窓のすぐ横に壁があるのだが、壁の流れる速度では300km/hでも500km/hでもその差がわからないくらい速いのだ。
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