クルマを売るの「も」仕事です! トヨタ営業マンの関係づくりは、やっぱり世界一だった

■他社への流出話も「いいじゃん!ぜひぜひ」

流出話こそ営業の腕の見せ所かもしれない  adobe stock:hedgehog94
流出話こそ営業の腕の見せ所かもしれない  adobe stock:hedgehog94

 異動をした筆者が次に働くことになったお店にも、すごい営業マンがいた。十ほど年の離れた先輩だ。

 当時、私が担当していたお客さんから、他社のクルマに乗り換えるという話をされ、先輩に対応を相談したことがある。私はお客さんを引き留めるために、自社の商品をどう売ればいいのか聞きたかったのだが、先輩から出てきたのは驚きの言葉だった。

「俺なら、そのクルマ(新しく買った他社のクルマ)が納車されたら見せてください!って言うかな。だってその人は、今そのクルマに乗りたいんでしょ?だったら今はいいじゃん。あとさ、単純に〇〇社の新型を見てみたくない?」

 私の想定の真裏を行く回答に驚愕したが、妙に納得したのでアドバイス通りに話を進めることに。そのお客さんは、他メーカーのピカピカの新車に乗ってお店に来てくれたので、お茶を飲みながら新車談議に花を咲かせた。

 この一件から、お客さんとは用事が無くても話が出来る間柄になり「あのクルマどうですか?やっぱりいいですよね!」という感じで、定期的に連絡を交わすようになる。

 すると1年後には「息子に中古車探してほしい」と連絡が入り購入へ、さらに他社の新車が初回車検を迎えるころには「やっぱり戻るわ、新型よろしく!」と、私のところに舞い戻ってきた。

 乗り換えるといわれた時、必死に引き留めたらこの結果は生まれなかったと思う。売りたい一心の営業マンは絶対にしないことを、トヨタのトップ営業マンは軽くやってのける。そして他社に行こうとも、友人のように関係を続けるところが凄いのだ。

 誕生日にカーディーラーから電話が来るのも、トヨタでしか経験したことが無い。トヨタ・レクサス販売店の事務室では、「今日〇〇さんの誕生日だった!もう夕方じゃん、電話するの忘れてたわ。」という会話が普通に出てくる。

 そのお客さんがトヨタに乗っていようがいまいが、誕生日の連絡をするという流れは変わらない。

 トヨタの営業マンは、クルマ以外の楽しさも生み出してくれる。これが世界一とも言われる、トヨタの販売力に直結しているのだろう。

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