■ラジオ用アンテナを組み込んだウィンドウもある
最近では中間膜にアンテナを組み込んだガラスもあります。しかし、受信感度では、より広範囲で捉えるルーフに装着したシャークフィンアンテナよりも若干劣ります。
しかも最近はFMやAM電波だけではなく、5G通信用の電波も受ける必要があります。ガラスアンテナだと、受信する電波の方向や角度は、ルーフ上に設置されるシャークフィンタイプほどの自由度は得られません。
この補充としてリアウィンドウやサイドウィンドウなどにもアンテナを追加していますが、受信能力を補うために電波増幅器も必要となり、コストは数万円以上大幅にアップします。このため現在は限られた高級車での採用になっています。
しかし、異質な突起物がルーフにないためルーフのデザインはスムーズで上質にできます。BMWやアウディのように受信感度とコストを優先するか、或いはベンツのようにデザインと上質感を選ぶか、です。
【画像ギャラリー】飛散防止、断熱、調光、加熱、アンテナ、軽量化……超ハイテクを取り入れた自動車ガラス(16枚)画像ギャラリー■軽量化ガラスはスポーツカー向け
通常5mm厚程度のガラスを4mm程度に薄くしながらも強度を保つ「軽量化ガラス」も最近はブームです。
ただし、ガラスの強度を保ちながら薄く、軽くするためには熱処理の工程などに高い技術が求められるため、コストアップします。
わずか1mmと思われるかもしれませんが、自動車用ガラスの1mmはもの凄い「厚み」なのです。この1mmを削るために材料を厳選し、技術力を要する製造工程が必要なのです。
さらに、ガラスが薄くなるため遮音性も低下します。コストがアップして遮音性も低下するのであれば、1グラムでも軽くしたいスポーツカー以外ではあまり使われない結果となります。
コンフォート性を重視するプレミアムカーであれば、あえて軽量化ガラスを使うメリットはあまりありません。コストを重視するコンパクトカーや軽自動車では、高価な軽量化ガラスの採用は厳しい状況です。
ちなみに、R35GT-Rの開発時にガラスメーカーから軽量化ガラスを薦められたのですが、サーキットで前走車が飛び出したり、アウトバーンの超高速走行で飛んでくる跳ね石を考慮して、軽量化用薄板ガラスの採用は見送りました。
その一方で、R35GT-Rのガラス周りの設計には、400km/hで走ったグループCマシンの開発で得たさまざまな技術ノウハウを折り込みました。
このように現在の自動車用ガラスにはさまざまに進化した技術が折り込まれています。そして現在も新たな開発は続いています。
●今回のポイント!
・合わせガラスの中間膜にさまざまな機能を盛り込ませることで自動車用ガラスは急速に進化を遂げてきた
・中間膜に液晶層を挟み込むことで調光ガラスなども開発されている
・軽量化ガラスは遮音性が低下するため、プレミアムカーへの使用は少なく、スポーツカーへの使用が多い
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