■強力ライバルだけじゃない、新型フィットで気になるグレード構成
アクアの設計は古くなったが、ほぼ同時期にヴィッツがヤリスにフルモデルチェンジを行う。N-BOXは依然として好調で、国内販売の1位を独走する。ライバル関係に大差はない。
そうなると、商品力の勝負になる。まず次期フィットの外観は賛否両論だ。フロントグリルを小さく見せるデザインは、マイナーチェンジを受けたフリードに似ている。
開発者は「これがホンダの新しい顔になる。ほかの車種もこの顔立ちを採用する。従来とは違う優しい雰囲気を表現した」というが、ユーザーからはどのように評価されるのか。
コンパクトカーは日常的に使うツールだから、デザインは概して控え目なタイプが好まれる。法人需要が多いことも理由のひとつだ。その意味で初代と2代目フィットは、バランスの良い形状だった。現行型はそこからはずれて人気を下げ、次期型も別の見せ方で個性を強める。
インパネも同様だ。次期型は薄型で視界がよく、機能性はとても優れている。ただしN-BOXと比べてもボリューム感が乏しく、2本スポークのステアリングホイールは、往年のN360風ではあるが貧弱に見えてしまう。
グレード構成もわかりにくい。価格の安いベーシック(BASIC)、中心グレードのホーム(HOME)、上質なリュクス(LUXE)、SUV風のクロスター(CROSSTAR)、アクティブな雰囲気のネス(NESS)という5シリーズをそろえるが、ネスの性格はクロスターと重複する。
受注効率を向上するために、シリーズとグレードを増やしてメーカーオプションを減らし、装備の組み合わせを抑える狙いもあるが、種類が多すぎる。低価格/買い得/SUV/豪華指向の4種類があれば充分だ。
コンパクトカーでは、グレードやオプションの選定を手早く済ませたいユーザーもいるから、ウェブサイトやカタログで、グレードの指向性を端的に解説することも必要になる。
■実用性の高さと価格のバランスは申し分なし。必要なのは売り手の熱意
その一方で、メカニズムや装備の進化は歓迎される。ハイブリッドはコンパクトカーのために開発されたi-MMDで(名称はe:HEV)、エンジンは主に発電を担当する。
その電力でモーターを駆動して走るため、エンジン回転数は走行状態に左右されにくく、効率の優れた回転域を重点的に使える。電気自動車と同様のモーター駆動だから、瞬発力もあり、走りのよさと低燃費を両立させやすい。
緊急自動ブレーキなどの安全装備も進化する。また次期型の後席と荷室も、現行型と同様に広いから、実用的な機能は優れている。
見た人を瞬間的に引き付けるスター性のような魅力は、N-BOXにかなわない。従って1カ月に2万台近く売れることはないが、2018年に小型/普通車の登録台数1位を取ったノートの月販平均(1万1360台)はクリアできないと困る。
おそらく、発売直後の2020年には平均1万4000台前後は売れて、その後は次第に下がり、1か月平均で9000~1万台に落ち着くパターンだろう。
フィットは次期型を含めて、実用性が高く価格は割安だ。ツールとして優れているので、好調に売れる素質がある。
それなのに売れ行きが伸び悩むとすれば、N-BOXの売り方まで含めて、メーカーと販売会社のフィットに対する熱意が欠けているからだ。次期フィットは、もっと力を入れて売るのだろうか。
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