■BMWの勢いは? そしてドイツの自動車産業は?
ドイツ勢で唯一、電動化の波に乗っているように見えるのはBMW。BEVとFCEV(燃料電池車)の両取り戦法で多様性を維持しているほか、PHEV(プラグインハイブリッド)のラインナップ拡充でもライバルをリードしている。
が、そのBMWも内情は厳しい。BEVの販売台数は確かに多いように見えるが、それはBEVのモデル数自体が多いことによるところが大きく、1モデルあたりの平均販売台数の少なさが遠からずボディブローのように効いてくる可能性が高い。
BEVの価格の高さや長距離走行における利便性の低さ、信頼性の欠如がネガティブに作用しているのは他ブランドと同じである。
果たしてドイツメーカーが再び販売台数と技術トレンドの両面で世界の自動車業界を引っ張る時代はやってくるのか。基礎的な技術力が昔より落ちたということはない。顧客中心主義のクルマ作りに回帰すれば短期的にはすぐに存在感を取り戻せるだろう。
問題は自動車メーカーの技術力ではなく政治との交渉力のほうにある。エンジン廃止を強硬に主張する欧州政府の環境政策は机上の計算では理想的だが実現性を無視した空想的なものだ。それに対して実現性の高い政策を進めていくべきとしっかり主張し、それを相手に呑ませることができるかどうか。
今、ドイツメーカーがBEV推進の自縄自縛に陥っているのは欧州政府やドイツ政府の主張に反対意見を言いながらも、結局ハイハイと多くの無茶を受け入れてしまったという権力への盲従、意志薄弱ぶりのなせるワザという側面がある。
この権威主義は欧州の文化と深く関わっているため修正は容易ではないが、そこを正さなければドイツ勢の混乱はこれからも当面収まらないだろう。
(TEXT/井元康一郎)
【画像ギャラリー】完全EVシフトを撤回のメルセデスベンツ!! 最新ラインナップEQE SUV&GLC クーペ(28枚)画像ギャラリー■ドイツ車の技術は今も世界一か?
ドイツ車の技術は、部分的には今でも世界トップにあると言えるだろう。プラットフォームやボディ・足回りの設計、パワートレーン周りのメカトロニクス、ダイナミクス性能の調律、そして生産技術まで、従来のクルマ作りで積み上げてきた経験値は健在だ。
ただ、電動化やSDVといった領域の要素技術では、中国が先行している部分はある。BEVの性能を決めるバッテリーやパワエレ、SDVに必要な全体のシステムを繋ぐE/Eアーキテクチャなど。中国ではこれらを実装したクルマがすでに市場で揉まれているのだ。
(TEXT/佐藤耕一)
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