【その踏み間違い事故は他人事じゃない!!】データから見えた、高齢者事故の深層

■DATA2/ペダル踏み間違い事故の割合は、駐車場等がワースト

 高齢者に踏み間違い事故が多いことを理解してもらったところで見てもらいたいのが、踏み間違い事故の実態に関するデータだ。

 下の表3は、踏み間違い事故の『事故発生場所の特徴(事故件数)』をまとめたものだが、四輪車(特殊車とミニカー除く)が第1当事者になったペダル踏み間違い事故の発生件数を、年齢別(64歳以下、65〜74歳、75歳以上の3つ)にし、10年前の傾向(平成14〜18年)と現在(平成24〜28年)を比較している。

表3 第1当事者が四輪車の年齢層別、道路形状別のペダル踏み間違い事故件数(過去:平成14~18年、平成24~28年)(ITARDA公表データ)

 それによると事故発生件数は、どの年齢も単路が最も多いことがわかる。また、高齢者では、一般交通の場所(駐車場等)においての事故発生件数の増加率が高いこともわかる。

 次に下表4だ。こちらは、前述の事故件数をもとにした事故割合となる。

表4 第1当事者が四輪車の年齢層別、道路形状別のペダル踏み間違い事故割合(過去:平成14~18年、平成24~28年)(ITARDA公表データ)

 道路形状別で事故割合を見ると、全年齢層で一般交通の場所(駐車場等)の割合がほかの道路形状に比べて高い。これは10年前も同じ傾向であったこと、非高齢者での割合も大きい傾向となってはいる。しかし、高齢ドライバーは特にこの道路形状での割合が高くなっているといえる。

 走行距離も免許保有者数もほかの年齢層よりも少ない高齢層が、群を抜いて高いことから、ここが高齢者がより注意して運転するべき危険ポイントであることも指し示している。

■DATA3/踏み間違い事故は、意外にも直進時が最多、次いで発進時

 駐車場等でどのような運転行動を行った際に事故が起きやすいのか? 下表5で四輪車が第1当事者になったペダル踏み間違い事故割合を平成24〜28年まででまとめているが、各年齢層に共通して、発進時と直進時の割合が高いことがわかる。特に高齢になるにつれその割合が高くなり、事故を起こす危険性は加齢に伴って高くなる。

表5 第1当事者が四輪車の年齢層別、駐車場等における行動類型別のペダル踏み間違い事故割合(平成24~28年)(ITARDA公表データ)

 ではなぜ踏み間違い事故は起きるのか? その要因も分析されている。割合の高い発進時(前向き駐車時、駐車位置の調整、駐車場からの発進)においては、「踏みかえ回数の増加(切り返しの増加)」。

 直進時(駐車場所まで向かう途中、駐車場で入り口まで向かう途中)では、「速度調整機会の増加」「不注意な運転(わき見)」。後退時(駐車するために後退中、後退発進する時)は「体をひねる」「踏みかえ回数の増加」「急な後退」が挙げられる。

 高齢化による身体能力、集中力の低下、体の柔軟性の低下によって、頻繁にペダルを踏みかえる動作でミスをしやすくなるのだ。

■DATA4/加齢による関節の老朽化が、事故を発生させる要因に

 駐車場等での踏み間違い事故は、加齢で衰えた高齢者がペダルの踏みかえを頻繁に行うことが要因で発生するのだが、実は体の柔軟性も影響を及ぼすことが明らかになった。

 前進や発進時に比べれば割合は少ないが、後退時にも踏み間違いが起きる。この点に着目し、福山大学工学部とITARDAが共同研究を行った結果、着座姿勢とペダルの踏みかえ挙動がその要因であることをつかんだ。

 高齢ドライバーが運転中に上半身を右方向にひねるような姿勢をとった状態でブレーキペダルを踏もうとすると、無意識のうちに足先が右方向へ移動し、ブレーキペダルを踏むつもりでアクセルペダルを踏んでしまうのだ。

運転姿勢を変える挙動。右後方を向く動きでは、高齢者は股関節が硬くなってきているため、足先が無意識に右方向へ移動しやすく、ブレーキと勘違いしアクセルを踏みやすい(ITARDA公表データ)
上半身を右方向にひねり、後方を目視する後退運転の姿勢の状態を想定。上半身をひねると足も一緒についてきてしまうので、そこに注意してもらいたい(ITARDA公表データ)

 実際に調査をした結果、高齢ドライバーは男女問わず、上半身を右方向にひねった状態で後方を目視する姿勢をとると、体(特に大腿部)の柔軟性が低下していることにより、下半身が上半身に引っ張られるようになる。

 そうすると、ブレーキを踏んでいるつもりでも、足先はアクセルも踏むことになる。本人はブレーキを踏んだつもりでも、実は無意識にアクセルを踏んでいるということになるのだ。

何度も切り返しを行ううちに、ペダルを踏み間違う恐れがある。狭い駐車場などは特に注意が必要

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