2024年12月23日、日産とホンダが経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結したと発表した。対等な関係を築ける協業には大いに期待をしていたが、(ホンダは「日産救済のためではない」としているものの)まさかこうしたかたちになるとは、かつて日産開発部にいた筆者としては、非常に残念に感じている。
だが、ホンダ社長が会見の中で幾度も発言していたとおり、経営統合には日産がターンアラウンドとよぶ計画を実行することが必須条件。結局は、自らブランドを再建するほかに道はない。時期尚早かもしれないが、なぜ日産がピンチに陥ったのかとともに、日産が復活するうえで必要な打ち手を考えてみようと思う。
文:吉川賢一/写真:NISSAN、HONDA、MITSUBISHI
【画像ギャラリー】がんばれ日産!! 国内日産の売れ筋モデルたち(26枚)画像ギャラリーCEOの報酬半額程度で済まされる話ではない
ホンダと日産の協業が発表となったのは、2024年の3月のこと。8月には、三菱も協業に加わることが発表となった。車両の相互補完も行われるとのことで、3社の間でいますぐ相互補完ができるのはよいことだと、だれもが期待していただろう。
ただ、そのわずか3か月後である2024年11月に行われた2024年度の中間決算において、日産は連結営業利益で約90%もの大幅な減少を発表、業績回復に向け、CEOは報酬を50%カットし(それでも3億円は確保)、北米やアジアでの大規模な減産計画、そして9,000人規模の人員削減計画も発表した。
コロナ禍においては、半導体不足などによって生産が思うようにできなかったこともあり、販売不振の状況は表に出てこなかったのだろう。他社よりも多いインセンティブ(販売奨励金)をかけているにもかかわらず、販売が上向かなかったのは、商品魅力の欠落に他ならない。
実力に見合わない販売目標を立て、多額のインセンティブをかけて売りまくる「悪しき文化」をつくったゴーン氏を悪者にする流れをみるが、ゴーン氏が去ったのは2019年、もう5年も前のこと。日産役員はこの「悪しき文化」を是正する時間はあったはずだ。いまさら文句を言っても仕方がないが、現在の役員の責任は重く、CEOの報酬半減程度で済まされる話ではないと思う。
役員承認がおりないことで、いくつものプロジェクトが途中でお蔵入りに
筆者が日産にいたころ、「役員承認がおりない」という理由で、動き始めた新型車プロジェクトが一時的に停止となったり、そのままお蔵入りになることがしょっちゅうあった。企画段階ならまだしも、かなりプロジェクトが進行してから中止になるのだ。
新型車開発は、部長以下の多くの担当者が一丸となって、販売地域から多くの声を拾い、車両企画を立案し、デザインモックや試作車の作成など、多大な準備を行っていく。しかしながら、世に出せるクルマは、一部の役員から好評を得たとしても、全ての役員が納得のいくクルマである必要があり、コスト未達ならばもう一度、デザインが気に入らなければもう一度など、いくらやってもプロジェクトが先に進まず、そうしてさんざんやり直しをしたあとに、お蔵入りになることも1度や2度ではなかった。
もちろん経営判断として、そうした判断をせざるを得ない、ということはあるのだろうが、当初の狙った企画から徐々にコンセプトがずれていくクルマは、筆者には、市場の動向や顧客の意見、ディーラーの悲鳴などが考慮されているようには思えなかったし、実際に営業利益が9割減少するまで下がってしまったことを考えれば、日産の経営判断には問題があったことは確かだ。
ユーザーが喜ぶためのクルマつくりが目的のはずなのに、上層部やその上の役員に認められなければクルマをつくらせてもらえないことは、非常にもどかしかしく、そうした強烈な縦社会文化が、日産を窮地に陥れたのではないかと、筆者は感じている。途中まで開発していたプロジェクトが全て成就していれば、今の2倍はラインアップが多かったはずだ。
コメント
コメントの使い方今回日産の利益減の最大原因は米国での販売不振から、販売促進奨励金を乱発したことにある。にも拘らず最高責任者を更迭もせず、中国に配転しただけの経営方針に在りじゃないのか?トヨタでも2009年米国内の在庫調整失敗で大赤字に陥った。当時の渡辺捷昭社長を即座に更迭した。たくさんの報酬貰う立場の人に厳しさが無いような企業は、この先存続は無いでしょう。