え、ほとんど引退してんの!? 古いチンクェチェント本国の今が衝撃

え、ほとんど引退してんの!? 古いチンクェチェント本国の今が衝撃

 愛らしいルックスで今も人気が高い2代目のチンクェチェントことFIAT 500。しかし、日本では街中を走る姿はめっきり見かけず、中古車屋では高値で取引されることが多い。この状況は本国イタリアではどうなのだろうか? 日本とイタリアを頻繁に行き来する事情通に尋ねてみた。

文・写真:越湖信一

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■いわゆる旧チンクは2代目のFIAT 500

2007年に3代目が登場して以降、旧チンクと呼ばれることになった2代目のFIAT 500。全幅はなんと僅か1320mm。
2007年に3代目が登場して以降、旧チンクと呼ばれることになった2代目のFIAT 500。全幅はなんと僅か1320mm。

 最初に蛇足ながらお話しておくと、今日皆が”チンクェチェント”と呼ぶモデルは”ヌオーヴァ(=新)・チンクェチェント”と呼ばれる2代目チンクェチェントである。

 初代チンクェチェントは1936年に発表された2人乗りモデルで、コンパクトで可愛いスタイリングから、トポリーノ(=ハツカネズミ)というニックネームを持っていた。

 この初代モデルは569 ccの排気量を持ちFIAT500A(B,C)と命名されたことから、イタリア語で500=チンクェチェントと呼ばれた。

 この初代モデルは高額なクルマしか存在しなかった1930年代に画期的な低価格を実現したこともあり、大ヒット作となった。

 続いて1955年に”ヌオーヴァ500”が発表される。実は初代とヌォーヴァの間にはFIAT600というヌォーヴァ500の直接の後継モデルが存在しておりこちらも、かなりのヒット作となったのだが、より手頃なモデルをというマーケットからの声に応えて開発されたのが、このヌォーヴァ500であった。

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■2代目チンクを見かけることができたのは90年代まで

さて、本題に戻ろう。今回のお題は、古いチンクェチェントは今もイタリアに棲息するのか!?である。(以降、チンクェチェント=ヌオーヴァ500とする)

 結果的にチンクェチェントは大ヒット作となり、何と1975年まで18年間もの間生産が続いた。時を経て、旧態依然とした構造や狭いキャビンは逆に現代のクルマに見ることのできないユニークな魅力を醸し出すこととなった。

 ライフサイクル末期には、新車でありながらもクラシックカーのような捉えられ方をされる不思議なクルマでもあったのだ。1990年くらいまでなら、イタリアの風景の一部として、チンクェチェントをどこでも見ることが出来た。

 筆者がひなびた個体を眺めていると、そのオーナーらしき人が「日本でコイツが人気なんだってな。欲しかったら持っていっていいぞ」なんて言われたことも一度や二度のことではなかった。

 だから、この時期までは今回のお題は“Si=(Yes)”であった。しかし1990年代後半になると、準国営企業とも言えるFIATの苦境救済の為に、政府は新車への買い換え奨励制度を頻発した。

 この政策により街中のチンクェチェントは、あっという間に消えてしまったのだ。

 さらに、イタリア政府は中古車取引にかなり高額な課税を行った。そして、その課税対象を低価格車まで広げたから、チンクェチェントにとっては壊滅的であった。

 ずっと所有し続けていた人々にとっては問題なかったが、イタリアですら、チンクェチェントは高額なコレクターズモデルとなってしまい、クラシックカーイベントでもない限り、街中で見ることはほとんどなくなってしまった。

 つまり現代において、お題に対しての答えはNoとなる。

かつてはこのような光景が見られたイタリアだが…。日本同様、現在は人目を集める希少車になりつつある。
かつてはこのような光景が見られたイタリアだが…。日本同様、現在は人目を集める希少車になりつつある。

次ページは : ■本国でもすでに趣味性の高いクラシックカーの領域に…

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