「クルマの不正改造」ときくと、消音器(マフラー)の切断や取り外し、また窓ガラスへのフィルム貼り付けなどをイメージするかと思います。ただ実は、意外と身近なところでやってしまいがちな不正改造もあります。前席のヘッドレストの取り外しが、そのひとつです。
文:エムスリープロダクション/アイキャッチ画像:Adobe Stock_Natallia/写真:Adobe Stock、写真AC、内閣府、エムスリープロダクション
【画像ギャラリー】絶対やっちゃダメ!! ヘッドレストを外して走るのは犯罪です!!(6枚)画像ギャラリーヘッドレストは保安基準で装備が義務とされている
クルマのシートバック上部に取り付けられているヘッドレスト。取り外すことができるタイプも多いことから、「後席にいる子供の様子が見づらい」「(ヘッドレストが前傾していて)首がきつい」「(女性で)後ろでまとめた髪(を留めるクリップ等)があたって邪魔」などの理由で、外してしまう人もいるようです。
しかしながら、ヘッドレストを取り外してしまうことは、「運転席及びこれと並列の座席には、(略)頭部後傾抑止装置(ヘッドレストのこと)を備えなければならない」とする、道路運送車両の保安基準第22条4に適合しなくなる行為であり、保安基準に適合しない状態であることは、道路運送車両法第99条の2における「(略)装置の取付け又は取り外し(略)行為であって、当該自動車が保安基準に適合しないこととなるものを行ってはならない。」とする規定に違反することになり、違反したとされれば、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。
保安基準を満たさない状態で走行することは、万が一の事故の際、任意保険が適用されないという事態も引き起こします。(外れるタイプのものは)簡単に外すことができてしまうヘッドレストですが、ヘッドレストを外した状態で走行することは、重大な不正改造。不正改造は犯罪であり、たとえお子さんが「外して」とぐずっても、絶対に外して走行してはならない装備なのです。
ヘッドレストは、シートベルトと同じ役割をもつ拘束具
なぜヘッドレストを外すことが保安基準に適合しないことになるのか。それは、前述した道路運送車両の保安基準第22条4にもあるとおり、ヘッドレストは「頭部後傾抑止装置」であり、安全装備だからです。
「ヘッドレスト」とは、英語の「ヘッドレストレイント(head restraint)」を略したもの。「restraint」とは「拘束」という意味であり、直訳すると頭の拘束、つまり身体を拘束するシートベルトと同じような役割をもつ装備です。「レスト」という言葉から「休憩」を連想し、「頭をもたれかけさせる、枕のようなもの」と理解している人も多いようですが、それは大きな勘違いです(勘違いを招く、このネーミングはよくないと思います)。
クルマに乗っていて後ろから追突されると、乗員の体はいったん前方へと投げ出され、その後シートベルトによって身体は後方へと戻されます。このとき、頭部が後ろへ投げ出されて首がむちのようにしなることで、頸椎や首が捻挫してしまう(むち打ち)ことを最小限に食い止めてくれるのがヘッドレストなのです。
追突事故は、交通事故の類型別でもっとも多い事故。内閣府によると、令和3年(2021年)に発生した交通事故のうち、約30%は追突事故だったそうです。また、財団法人交通事故総合分析センターのデータによると、追突事故に遭った方がケガを負う部位は、9割が首の部分。つまり、交通事故において、もっともケガを負う確率が高いのが、首なのです。
筋肉と神経が複雑に絡み合う首は、人間にとってとても重要な部位。だからこそ、ヘッドレストは、保安基準で装備が必須とされているのです。
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